「後半の展開が惜しい」ソングバード おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
後半の展開が惜しい
「君愛」前の時間つぶしぐらいの気持ちで期待せずに鑑賞してきました。このご時世にタイムリーなネタで、ツッコミどころはあれど、そこそこおもしろかったです。
ストーリーは、パンデミックによりロックダウンされ、検温の義務化、発熱の自動通報、隔離施設「Qゾーン」への強制収容が行われている街で、配達員として働くニコが、配達先で知り合って恋に落ちたものの触れ合うこともできない恋人・サラのQゾーン収容を阻止するために奔走する中で、意外な事実が明らかになってくるというもの。
パンデミックによりロックダウンという、現実に起きている状況をモチーフにし、そこで免疫者が権力を振るう、配達員が重要な役割を果たす、感染者が施設に隔離されるというのは、状況によっては起こりうる設定でおもしろかったです。それほど多くない登場人物をそれぞれの立場で描き、それをうまく絡めたストーリーも、なかなかよく考えられていると感じました。
また、ロックダウン下においては立場は違えど誰もが、感染への恐怖、先の見通せない不安、生活制限による閉塞感を抱き、それをどうにかして解消しようともがくことも共感できます。そんな中、ある者は破滅し、ある者は新たな一歩を踏み出すという変容が描かれているのもよかったです。
ただ、物語が大きく動き出す中盤以降のツッコミどころが気になります。まず、リサ宅への衛生局の到着が遅すぎるし、彼女の脱出があんな方法で可能だとは思えません。他にも、ニコは免疫者パスを持っていましたが、そもそも免疫者はどうやってパスを入手しているのでしょうか。自分が免疫者かどうかはどうやって知るのでしょうか。外出者を射殺するほどの街なら配達員ではなくドローンを使うのではないでしょうか。パスを使って逃げたとして他地区は大丈夫なんでしょうか。こんなことが気になりだすと楽しめないので、これらを観客に気にさせないような描写があったり、脚本が練られたりしていれば、もっとよい作品になったように思います。
主演はK・J・アパ、共演はソフィア・カーソンで、どちらも知らない俳優でしたが、ロックダウン下でも愛を育む恋人を好演していました。また、脇を固めるアレクサンドラ・ダダリオとポール・ウォルター・ハウザーがいい仕事をしています。