彼女のいない部屋のレビュー・感想・評価
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観客に対する信頼をひしひしと感じる
ここで何かをうっかり語ってしまうと、未見の方の楽しみを奪ってしまうどころか、アマルリック監督の創作意図に反することとなる。彼の狙いからすると、観客が事前に知っておくべき「あらすじ」はほんの僅か。すなわち、ある朝、何の前触れもなく、ひとりの女性が家族に何も告げずに家を後にするーーー。ここから始まるヒロインの行動、どこまでも美しく透明感に満ちた情景を、観客一人一人がじっと見つめ、彼女の心理にしっかり添い遂げることになる。物語は決して線形、時系列には進まない。その上、演じるヴィッキー・クリプスのたたずまいは決して説明的でないどころか、一向に意図が読み取れず、ミステリアス。その状況から何かを察し、受け止めなければならない。劇中を彩るピアノ音に導かれるように、私たちはいかなる道程を辿り、どこへ流れ着くのか。そこでどんな想いが胸にこみ上げるのか。アマルリックの観客への信頼をひしひしと感じる作品である。
ストーリーは観客任せ
主人公(ビッキー・クリープス)は夫、息子、娘を家に残して一人、家出する。
家族をウザいと思ったり、愛しいと思ったり、心が彷徨する。
あくまでも私の思ったことで、人の心の移ろいは定かではない。
こんな作り方もあるのか、と思った次第。
【“家出した女の物語、の様である。”仏蘭西の名優マチューアマルリックが散りばめた複雑なパズルが、終盤のあるシーンで突然繋がりロジックが完成する作品。】
■仏蘭西の地方都市を舞台にした家族の物語である。
金曜日の早朝、二児の母クラリス(ビッキー・クリーブス)は、そっと家を出て様々な場所を彷徨う。
彼女は、何故か嘆き悲しみ、怒り、酔いつぶれる姿が映し出される。
一方、残された夫のマルク(アリエ・ワルトアルテ)は妻がいなくなった事に困惑しつつ、日常の生活を送り、パリ音楽院を目指す娘はピアノの練習に余念がない。
マルクは息子にはツリーハウスを贈ってあげる。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作では、冒頭家を出たクラリスは娘が弾くピアノ曲を聞きながら車を走らせる。それと被るように、娘はピアノの練習に精を出している。
・クラリスは、車を走らせ雪山の見える山間の宿で数日を過ごす。女主人からは”景色の良い部屋を用意したわ。”と言われるが、彼女は”大きな部屋にしたい。”と言って二段ベッドが二つある部屋に入る。彼女は一人なのに・・。
<そして、後半、この映画は決定的なシーンを描き出す。雪上を救助隊に運ばれるシートにくるまれた三つの橇。
彼女は、その橇に泣きながら縋りつくのである。
今作は、仏蘭西の名優マチューアマルリックがその作家性を前面に出して制作した作品なのである。>
鑑賞動機:あらすじ9割、ヴィッキー・クリープス1割
彼女のいない部屋と彼女しかいない部屋。
観客のレベルを高く見積りすぎの気がするけど。
制作側の目的は推測できるけど、手法としてよりよい選択肢があったのではと思う。こういうやり方で提示すること自体が目的だとしたら、つべこべ言っても仕方がないが。
なんだこりゃ??というのが正直な感想。 女性が夫と2人の子どもを残...
なんだこりゃ??というのが正直な感想。
女性が夫と2人の子どもを残して家出をする。
作品の紹介文には「衝撃の真実が浮かび上がる」と書かれていたが、よく分からない。
おそらく家を出たのは女性ではなく、夫と2人の子どもが雪山の事故で亡くなったということを言いたいのだろうが、あまりにも分かりにくかった。
映画が人を癒すように、自分のために物語をつくる
彼女のいない部屋
Serre Moi Fort/ Hold Me Tight
「未来」とは、これから起こりうる事態を予測すること。想像すること。期待をすること。少しの希望を抱くこと。そういう妄想。
「過去」とは、記憶。トラウマ。あなたの痛みとなるもの。
妄想と記憶、そして現実が同相で(区別なく)描かれる中、絵本のようなキャロット・オレンジが「これは演技です」と告げる。
彼女のつくる物語。
痛みを抱えた心が、持ち主に前進を促す過程で生成された、現実の補完。
それを書いては消し、書いては消し。
心の中のイメージが、人間を支え、癒し、糧となる。
まるで映画が観客に希望を与えるように。
物語が心の中に形成されるありさまをそのまま映像にしたようなー。
胸に抱かれた心象を、妄想のままに見せる手腕。
人間の内面への尊重を感じる。
(3月7日、内容を刷新して公開)
・・・
・現実と妄想を同相で描く点
・時間描写を人間の脳内イメージとして包括的に捉えて「時間描写→妄想、脳内イメージ」とスライドさせる点
・脳内イメージを「人間が心の中でつくる物語、行う演技」として捉えることで映画というもののあり方も作品内に収めるという点
以上の類似点から、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『複製された男』を連想しました。
また、脳内のイメージ(物語)に現実が反映されていく点は『二重螺旋の恋人』を想起しました。
ヴィルヌーヴ監督はフランス系のカナダ人で、『二重螺旋の恋人』もフランス作品ですが、これはフランス系の映画らしさなのか、それともフランス系映画の成熟度の高さを示すものなのか。
「映画は現実を補完しながら、観客に希望を与えたり癒したりする」というような映画の本質を捉えながら物語に昇華している感じがあります。
ドラマのような、ミステリー
画がとても美しい。
どの視点から、誰の映像なのか、時代はいつなのか、これは現実なのか、さまざまな考えがよぎりながら、展開が続く。頭と心を使う映画である。
最後にはつながってくるものの、なにが本当なのかもわからない。
ピアノ、車、物語を彩る様々なアイテムも印象的である。
表現方法と新鮮な作品だった。
2023年劇場鑑賞39本目
彼女のいない部屋を見て感じたこと
1 一人の女性の不可解な行動とその理由、そして深い喪失感を描く人間ドラマ。
2 家を出て車を走らす女性の姿。「お母さんはどこに行った」と混乱気味の夫と二人の子供の姿。観客は、話が繋がらない画面を見せられながら推理を働かす。割と早い段階で「マドモアゼル」と呼びかける声とその後の場面で、筋立てが見えたように思えた。が、しかし・・。それとは矛盾する場面やモノローグがその後も出てきて頭が混乱する。時制も相前後する。
3 中盤からは、子供の成長する姿と傍から見つめる件の女性の姿。とりわけピアノが秀でた『娘』に熱い視線を送る。この世を去った女性が家族を気にかけて気配を残したのか?とも思えてくる。
4 終局近くで事の顛末が明かされる。そのことで、映画はそれまでの不可解なものから一転、喪失感で精神が蝕ばまれ、妄執に囚われた人物のさすらう心が見えてくる。
5 ミスリードを誘うような場面構成は、難解ではないものの明解さや面白みに欠ける。それでも主人公の哀しみが一挙に強調される点ではそれなりの効果はあったと思う。
難しすぎた
家出をした妻クラリスが夫、むすめ、息子を置いて朝早くに家を出る、というところから始まる話。
その後は時間軸が行ったり来たりし、なおかつ、山で夫、娘、息子が遭難、という情報が入ってきてさらに混乱してしまった。
現実なのか、妄想なのか、過去なのか、現在なのか、未来なのか、説明が無いから推理しながら観たが、何を観せられてるのか頭の中が???
最後は、もしかしてそういう事?で終わった。
余韻は残ったが、あそこまでぐちゃぐちゃにしなくても良いような気がする。スッキリ感が無かった。
娘リシューの幼い時役のアンヌ=ソフィ・ボーエン=シャテがピアノが上手くて可愛かった。
劇中曲のアクセントたるや。
不運にも愛する家族を失った主人公の記憶や心境の描写に特化した本作品。映画としては珍しいテーマではないし、悲喜交々のバランスとトーンに単調な嫌いはあるものの、どこか新鮮な気分で観ることができた。リゲティの「ムジカ・リチェルカータ 第1番」には引き込まれてしまった。全編を通して音楽の使い方がとても効果的だったように思う。言葉よりも音楽のほうが記憶と相性が良いだろうから、納得感がある。ちなみに、宇宙船のようなAMCペーサーも好きです。
女性特有のことではないような…
皆さんの投稿などを見て、気合いをいれて観ていたが、以外にスーッと入ってきた。
単調な家族生活に疑問を抱きながら、逃避したい衝動にかられることは良くあるし、私も何度か経験している。
メンタルリセットで、精神的均衡を
保とうとするのは、人間としては当然。その間に取り返しのつかない出来事が起こり、リセットするどころか…。と思えた。メンタルをかなり病んだ彼女はどうなっていくのだろう😓
裏返されたポラロイド写真。 絵合わせゲームのように同じようなショッ...
裏返されたポラロイド写真。
絵合わせゲームのように同じようなショットを合わせていく手。
写っているのは家族の写真・・・
妻クラリス(ヴィッキー・クリープス)はある朝早く家を出た。
置手紙をしようとしたが、なにもかも言い訳がましくなると感じて、書くのは止めた。
残されたのは夫マルク(アリエ・ワルトアルテ)と娘ルーシ(アンヌ=ソフィ・ボーエン=シャテ)と息子ポール(サシャ・アルディリ)。
「いつものことさ・・・」と、ここのところ夫婦間が冷めているマルクは思い、子供たちもあまり気にしない。
気になるのは「金曜日」のこと。
「金曜には間に合うかな」とふたりの子どもたちは考えている・・・
といったところからはじまる物語で、なにかが起こった家族の物語だということはすぐに察しがつく。
また、女性の声でのモノローグが入るので、なにかが起こるのは、たぶん家族の方だろうとも思う。
と、少々ぼやかして書いているのは、チラシなどにマチュー・アマルリックの言葉として、
「彼女に何が起きたのか、映画を見る前の方々には明らかにしないでください」
とあるから。
なのだけれど、観終わった直後の感想としては、「そういう話なのか。ならば、はじめからストーリーを知っていた方が、より愉しめたんじゃないか」ということ。
というのも、時制が複雑で、かつ、クラリスの想像の物語も入り混じるので、後半(特に後半)は、出来事の流れとクラリスの心の変化を追うのに相当骨を折るからです。
で、ここからは《ネタバレ》です。
家族は冬のリゾートとして、スペインの雪山に行くことにしていた。
その初日が金曜日だ。
夫婦仲の冷めていたクラリスは家出したままリゾート地に遅れてしまう。
遅れて到着したクラリスが耳にしたのは「親子三人の雪山登山者が行方不明になった」「雪崩に巻き込まれて捜索は困難」というものだった・・・
というのが前半。
家出したクラリス、クラリスのいない中での夫と二人の子どもたち、行方不明になった三人を待つクラリス、喪失感を抱えたクラリスが思い出す家族そろっての様子・・・
そういう映像が、時制を複雑に入れ子細工にして描かれていきます。
夫たち三人が乗ってきた自動車のフロントガラスに厚く積もった雪を掻き分けるシーンまでを前半とすると、この前半は極めて秀逸です。
ひとりのクラリスの動作(ドアを閉めるなど)がほかの三人の動作とシンクロする、
幼い娘が弾いていたピアノの音が現在とシンクロする、
といった時間空間を越えてのシンクロが映画に深みと瑞々しさと謎めいたやさしさのようなものを与えていると感じました。
さて、問題は後半。
彼女に何が起きたのかを知ってしまった観客(わたし)は、少し緊張の糸が切れます。
事件後の彼女の心の変化をストレートに感じたいところですが、映画は前半と同じく時制を複雑に語りつづけます。
結果、彼女の心の変化と行動が捕まえづらくなりました。
三人は還ってくると待ちわびながらも、やはり還ってくることはないと不安になるクラリス。
春の雪解けまでは、どうにか持ちこたえたものの、実際に三人の遺体に遭遇すると、悲しみと絶望は頂点に達し、その後の喪失感は如何ともし難い。
観光案内の通訳の仕事に就いたりして新しい世界に踏み出そうとするもの、仕事場で見かける父子の姿に激怒したりもしてしまう。
そのうち彼女が浸るようになるのは、空想の世界。
三人が死なずに生きていたならば・・・それも死ぬのが彼ら三人でなく私だったならば・・・
こういう家族になるだろう、というもの。
これが日本タイトルの『彼女のいない部屋』の意味ですね。
娘のルーシはピアニストへの道を進み、息子のポールはわんぱくぶりを発揮してスポーツが得意になるだろう。
夫のマルクは、鉄道保線の仕事が嫌になっていたから、結局、仕事は辞めて別の職に就いているだろう、と。
クラリスの思いは想像だけにとどまらず、マルクに似た男性に夫を見出し、思春期の少女の中に成長した娘の姿を見出し、学生アイスホッケー選手の中に成長した息子の姿を見出していき、それが遠くから見るだけでなく、彼らに関わってしまう・・・と展開していきます。
この後半は、ヒッチコック『めまい』、デ・パルマ『愛のメモリー』を彷彿とさせます。
クラリスが執着した三人の中でも、もっとも執着したのはピアニスト志望の思春期の少女で、少女がピアノを弾く場に現れるだけでなく、少女の受験の場(ピアノの実技の場)に現れ、少女を悲劇的な結果へと導いてしまう・・・
執着が引き起こした悲劇を契機に、執着の源であり象徴でもあった家族4人で暮らした旧邸を処分する、というところで物語は終わります。
この後半、ストレートに時系列に沿って描いたのでは締まらない結末と考えたのかどうか、結果としては掴みどころを欠いたことになったような気がしました。
個人的には、後半はストレートに描いた方がよかったと思うのですが。
クラリスに共感するか、反発するかは観る側に委ねるとしても。
というのが、わたしの解釈なのですが、先に観た妻は、「三人の遺体が発見されるまでの物語じゃないの?」と言っていました。
そのへんが曖昧に受け取れてしまうのは、映画としては欠陥なのかもしれません。
なお、映画的記憶の連想では、先に挙げた2作品のほか、濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』『寝ても覚めても』に肌合いが似ていると感じました。
時のパッチワークめくられるメモリー
作り手の充実度、手応え、自信が伝わって来て、小難し好きの生真面目な遊び心満載で随所に美が顔を覗かせる作品。それをどう捉えどこまで向き合い付き合うかは鑑賞する者の嗜好性による。
もう一度観たいが
非常によく出来た構成。
早朝家を出る女性、彼女の生活と残された家族の生活。だが時間が進むにつれ、時間が戻るにつれ、大きくなる違和感。どちらが現実なのか。だんだん分かってくる事情、そして白日の下に晒される真実…
007では小悪党だったマチュー・アマルリックだが、監督としては確かな手腕を感じさせる。
出来ればもう一度観たいが、公開規模が…
悲しすぎる
わけわからないで前半ずっと首を傾げていたのに、途中から内容わかったら、なんて救いようの無い話なんだと、終わってから観たことに後悔しました。
最後まで観られたから星1つ。
今後の自分の人生の役には立ちそう。
家族を大切にしようと思えた。
全32件中、1~20件目を表示