「爽快ガン・アクション! ジョン・ウーmeetsフェミニズム」ガンパウダー・ミルクシェイク しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)
爽快ガン・アクション! ジョン・ウーmeetsフェミニズム
両手拳銃(リアリズムとしてはあり得ない)のスローモーション。
これはジョン・ウーへのオマージュである。
ジョン・ウーはじめ、従来のアクション映画は男性主体だった。
いや、「チャーリーズ・エンジェル」や「ワンダー・ウーマン」があるじゃないか、という主張は部分的には認める。「部分的には」というのは、それらの映画の主人公のヒロインたちは、必要以上に「女性らしさ」を“盛って”いるからだ。「ワンダー・ウーマン」のコスチュームがセクシー過ぎるという批判がなされたのは記憶に新しい。つまり、これらは、あくまでも男たちに見せるためのヒロインなのである。その点では、こうした映画もまた、男性支配の延長線上にあると言っていいだろう。
だが、本作に登場する女性たちを見よ。
カレン・ギラン演じる主人公サムこそ若いが、ほかのキャラクターは、みな若くはない。
たが、アクション映画としては一級のクオリティを保っている。
これまでのアクション映画は、男性のものか、または、過剰にセクシーに仕立てた女性のものだった。
本作は、こうしたこれまでの“お約束”に対し、異議を唱えているのである(若い女性のサムですら、身体のラインが出ない、だぼっとしたスタジャン姿)。
男性目線の「女性性」を排除しながら、それでも本作は、素晴らしいアクション映画として成立している。
この点こそが本作のメッセージだろう。
ストーリーはまったく飽きさせない。
アクションシーンはよく練られていて、特にサムの手が使えないシチュエーションでのカーアクション、そして3バカとの狭い室内での戦闘シーンが素晴らしい。
後半はサムの母親スカーレット、そしてスカーレットのかつての仲間との再開。
父と息子じゃなくても、男たちの絆じゃなくても、グッとさせる(一方、敵は父と息子であったり、ファームという組織がザ・男社会で対比がわかりやすくなっている)。
そして、この戦いに巻き込まれた少女エミリーも加わって、これまた女性たちの物語として幕を閉じる徹底ぶり。
全編、ユーモアある演出も悪くない。
後半の図書館でのアクションシーンが、前半より見劣りするのがやや残念。図書館の仲間たちのキャラが、いまひとつ立っていないのが惜しい。