「ダイナーでのアンジェラ・バセットの“あの”表情は、『ティナ』でシャウトして以来だったので懐かしくて嬉しくて笑ってしまった。」ガンパウダー・ミルクシェイク もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
ダイナーでのアンジェラ・バセットの“あの”表情は、『ティナ』でシャウトして以来だったので懐かしくて嬉しくて笑ってしまった。
①前知識全く無しだったけれど、アンジェラ・バセットとミッシェル・ヨーが出ているんなら観に行かなくちゃ、と。映画は女優で観に行くものだもんね。②犯罪者専用のダイナー(でしょ?)だけど、入店するときに銃を預けないといけない(あと、犯罪者専用のクリニックも)のが先ずふざけていて面白い。③本の中に銃や武器を隠すというのはもう使い古されている手だが、蔵書全ての中に何かを隠してある図書館というアイデアは初めてではないか。古いクリシェを使いながらそれを図書館まるごとにするというスケールアップがナイス。④最新式銃等が入っている本がシャーロット・ブロンテだったりヴァージニア・ウルフだったりジェーン・オースティンだったりと女流作家の本ばかりなのも「女の映画」というノリをいやが上にも盛り上げる。逆に「犯罪の女王」アガサ・クリスティの本は読書用というオチも楽しい。⑤サムがタダでは起きないタフな殺し屋役だが昔なら完全に男の役だよね。でもそれを女性がやっても全然おかしくない時代になったんだねぇ。絶対に死なないだろうなァ(ダイ・ハードだね)という安定感を漂わしながらも、窮地に陥るとエミリーに手伝わせて乗り切るという捻りも利かせて一本調子のアクションにしていないところも良い。また、エミリーも8歳と9カ月ながらメソメソしないでサムを助けるところが頼もしい。いずれは立派な殺し屋になりそう。⑥サムの母親役の女優さん、どこかで見たなと思ったら『ファイティング・ファミリー』のお母さんじゃない。強いわけだ。⑦しかし母娘の殺し屋で且つクライマックスでバディとして大暴れするという設定もこれまた初めてではないだろうか。⑧アクション一辺倒かと思えば母娘の確執とその和解があり、サムとエミリーとの交流あり、友情の復活ありと緩急つけた物語展開も宜し。アンジェラ・ミッシェル両姉御の貫禄と助っ人としての安定感は言うまでもなし。⑨図書館での死闘がクライマックスかと思いきや、マデリンが命を落とし(味方で犠牲者が出たことで女殺し屋側も不死身でないという弱味を見せて物語の単調さを廃すると共に、敵討ちの悲壮感をいやが上にも盛り上げる)エミリーを拐われ最後の一押しがあるというサービスぶり。⑩エミリーを救うためにサムが死地に乗り込むところなんて丸々健さんじゃない。最後はサムとエミリーとを逃した後、姉御達に華を譲っての大立回り、これまたヤクザ映画か時代劇(刀を銃に変えただけで)そのものだね。既視感があるのもそのせいかな。⑪逆に男たちはバカ丸出しだったり数にものを言わせているだけ(まあ時代劇やヤクザ映画の切られ役・やられ役に当たる役どころだから仕方ないか)だったりでいささか頼りない。でもここで灰汁の強いラスボスなんか出てきたら全体のバランスが崩れるのでこれはこれで良かったでしょう。⑫ラスト、「ファーム」もぶっ潰すのかと思ったらここは頭脳戦で手打ち。「ファーム」vs
女殺し屋集団という図柄は、対「男社会」とのメタファーに取れないこともない、と思うがここはあまり難しいことを考えずに素直に楽しめば良いでしょう。前知識全く無しで観ましたが、適度な緊張感と胸のスカッとするアクションとで結構楽しめました。