劇場公開日 2022年8月19日

「サバカンを見て感じたこと」サバカン SABAKAN コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5サバカンを見て感じたこと

2022年9月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1 一人のもの書きが少年時代に過ごした故郷でのひと夏の出来事を回想する。

2 全体を通じ少年役の二人の好演とオリジナル脚本により、懐かしさと切なさを感じる作品にしあがった。
 二人の少年のうち久田は、拾った100円を持ち帰り、その所業に罪悪感を感じる昭和における普通の子であった。他方、竹本は、言動が一匹狼タイプだが、この子の心の中をフォーカスすると愛情
に飢えた寂しい男の子が見えてきて、たまらなく切ない。

3 竹本は、外見だけで差別しない久田と友達になりたいと思い、強引にイルカの見学に誘い出す。
久田は何事も強引な竹本に反感を覚えたが、竹本がトラブルの際に身をもって助けてくれたことや誘った真意を話してくれたことで、反感は消えた。
夕方、イルカ見学から帰ってきた二人。竹本が帰り際、逡巡しながら「久ちやん」と呼びかけ、「またね!」ときびすを返す。今後の関係を占う竹本の勝負手であった。一瞬の間の後、久田も「またね!竹ちゃん」と返す。二人は互いの姿が見えなくなるまで「またね!」とくり返す。二人の心が共鳴しあうシーンとなった。
 このまたねが、終局近く、駅での二人の別れのシ−ンでも出てくる。さようならではなくて、またね。とても切なくて温かい。残された久田は、父の胸で号泣する。見ている方も泣けてきた。

4 あと、気付いたこととしては、1986年の時代背景を斉藤由貴とキン肉マンのガチャガチャで示した所に監督のセンスの良さを感じたこと。サバ缶寿司のエピソードは何で?と唐突に感じたこと、内田のジジイの憎悪に満ちた笑顔は、映画「北国の帝王」のアーネストボーグナインのそれを想起したが、とても良い奴だったこと、竹原ピストルと尾野真千子と弟君の家庭のシーンがとても良かったこと。

コショワイ