「目を覚ませ、忖度した評価は作品の質を下げるぞ」グリッドマン ユニバース MP0さんの映画レビュー(感想・評価)
目を覚ませ、忖度した評価は作品の質を下げるぞ
特撮を含むグリッドマンシリーズを好きな人の意見を聴かないと何とも評価が分かれる作品だと思います。
★3.5は『SSSS.GRIDMAN』『SSSS.DYNAZENON』
の集大成、アニメ作品としての忖度なしの総合評価です。
同シリーズのコアなファン限定で評価するなら★5.0でしょう。
<加点理由>
二つの作品の登場人物たちが諸事情があって一斉に登場さてわちゃわちゃする展開は胸アツですし、二作品の劇中からも伏線は十分に描かれた上であの人の登場や2号さんの正体が明らかになった…。
「さぁ皆さんご一緒に」の掛け声(サービスシーン)、これだけで★3.0です。
残り★2.0は蓬と夢芽の関係がぐっと近づいた、高校生らしい微笑ましい距離感のイチャ2が見れた事やその仲が順調そうな点、裕太が六花との関係に踏み出そうとした点は「あれでまだ付き合ってない…」と蓬たちが呆れるのに同意。
特に六花が照れるシーンとか、夢芽が意味が分かって照れるシーンは最高でした。かわいすぎます♡
<減点理由>
一方でこの作品は裕太・六花たちの青春群像劇であり、アカネに創られ、アカネが去った後の世界の物語という最初からメタな設定である点から「ユニバース」(一つの宇宙)と「メタバース」(多層世界)の融合で、劇場作品タイトル『グリッドマン・ユニバース』は六花と内海の書いた脚本であるというメタにメタを重ねる事を作品の多層性と重ねるというハンバーグ定食にフライドチキンと天ぷら・唐揚げ、ついでにピザを添え物にするようなメタメタ感はなんというかチグハグ感というか後付け感なのか、流行りなのかマルチバースものは正直、異世界転生並みに食傷気味で目新しさが何もなく特撮の巨大ロボ勢揃いみたいなシーンは各ロボの彩色で目がチカチカ。これを言ってしまうとアニメ作品としてのグリッドマンという作品やシリーズそのものの批判になってしまうのですが、合体×合体×合体+合体×合体…幼稚園か小学生の玩具遊びの最終決戦のようなしっちゃかめっちゃかさが脚本として大雑把すぎ。
戦闘シーンこそ単調で退屈で眠くなり、途中で退場をしようか割と本気で考えました。
アニメとしての表現力が稚拙。戦闘シーンに迫力がない訳ではなくヌルヌル動くが、よく言えばテンプレートで目新しさもない。
主題歌連発してオーイシマサヨシの歌唱力と声優陣の技巧と物語の展開による勢いで誤魔化された感が強い印象。
また惜しむべきは内海というグリッドマンになれず、傍らで見守り応援する仲間に対する掘り下げがやはり単なる特撮オタクのいい奴として描かれ、ちせがゴルドバーンと共に闘うのと異なりほぼ終始蚊帳の外。(六花はヒロインなので兎も角)
ラスボスにカタルシスもなければ、観ている側に何の思い入れもなく、宇宙が終わる話も何処か現実感のない話。
特撮をやりたかったのか、青春ドラマをやりたかったのか、2作品またはグリッドマンシリーズを通じての集大成を作りたかったのだと思うけど、やりたい事を詰め込みすぎて一番やりたかった事は何なのかがボヤけてしまう特盛トルコライス現象が起きているのではないでしょうか。
EDロール後の蓬の家で蟹を食べるシーンの母親の一言に製作陣の感想が集約されているのではないでしょうか。あそこで「旨いね」くらい言わせられないならそれが全てでしょう。
またこの作品を前作2作品いずれも観ずに観にくる人は皆無と思いますが、では作品を見返してみようと思うだろうかと考えるとよほどコアなファン以外は満足して見返すこともないでしょう。
これらが総じて★2.0減の理由です。
折角、アニメでグリッドマンシリーズを2作品も扱ったのに最後の最後で易きに流された感があります。個人的にはどうせなら六花の恋人疑惑は兄でしたではなく、ボヤボヤしているから内海が六花の恋人になっちゃった(というフリをして裕太を焦らせる)とか、ラスボスは内海が闇堕ちして六花と夢芽を巻き込んで共に怪獣に取り込まれるくらいあって欲しかった。もっと言えば六花が裕太を好きになる動機の描写がシリーズを通して弱い。
(こんなに話したの初めてなくらい、が真である場合)
みんな幸せめでたしめでたしは平和ボケすぎで皆殺しの◯野の容赦なさがあるから◯ンダムは長く続く名作である所以を思い知らされ、同じ円谷作品で言えばウルトラ◯ンにもなれない中途半端さを痛感しました。
内海は本当にただの良い人(どうでも良い人)、冒頭の「フィクションです」が監督らがこの作品へ匙を投げた言い訳のようにさえ思えてきます。