「「皆で力を合わせて」系。だけど…」名探偵コナン ハロウィンの花嫁 alalaさんの映画レビュー(感想・評価)
「皆で力を合わせて」系。だけど…
劇場でやる少し前に前年のを地上波で放送するので、大抵毎年それで見るのですが、今年は見逃してしまい…家族が「今年(2023年)のコナンは黒の組織が出てくるし、本筋の進展がありそうだから見たい!」と言うので、とりあえず去年のこちらをレンタルしてきました。
家族はアニメも毎週見てるみたいですが、自分は見てないので設定などがあやふや…今作はそういう人にはいまいちのめり込めないかも。
よう知らん奴、何か見たことあるけど誰だっけ?程度の奴がチラチラ出てきて、そいつらが一応(心理的な)キーになっているので、知ってる人は感動シーンがあったのかもしれませんが、自分には今一つ刺さりませんでした。
ただ、映像は年々綺麗になってますね。数年前の安室透流行りの時は、話題ものが好きな友人に誘われて見に行ったんですが、その時は作画崩れが気になって仕方なく、友人ともツッコミまくった記憶がありますが、今回はほとんど気になりませんでした。
あらすじ:
警察OBの村中が結婚することになったが、そこへ脅迫状が届き、警察一課総出で警備にあたることに。一方、昔の友人・松田を死なせた爆弾魔が牢屋から脱走したと聞きつけた公安の降谷零は爆弾魔を追い詰めるが、爆弾魔は別の人物から首に爆弾をつけられており、降谷も同じものをつけられてしまう。身動きが取れなくなった降谷はコナンに協力してもらい、真犯人を見つけ出そうとするが…
昔は毎年楽しみに見てたんですが、段々原作の進行と深く絡んだ話が増え、原作もアニメも追っていない自分にはついて行けなくなってしまい、暫く距離を置いてました。安室流行りの時(「ゼロの執行人(2018)」)も、原作の知識がないといまいちのめり込めない話だったのもあり、鑑賞後「そういや昔は楽しんでたなー」と原作を一旦読み返し、映画も見返して、またついていけるか?と期待したものの…やはりキャラに心理的な思い入れがあるまではいかず。
特に安室さん(降谷さん)の学友とかその辺りが全く記憶に残らず、今作も降谷さんがデカデカとパッケージに載っていたうえ、よくよく見たら学友もチラリ。嫌な予感…
案の定、松田がどーとか萩原がどーとか。うーん…知らんわ。という言葉がチラチラと頭をよぎりながら見る始末。降谷さん周辺のキャラに思い入れがないと、映画自体はかなりアッサリとした内容。の割に降谷さんの出番はそんなに多くはない。の割に「ゼロの執行人」の時にも感じた「無駄なカッコつけ」がちょいちょい入ってきて、いちいち何なん?と白けた気分に。
アイドル好きの女性ファンを獲得するためなのか、「ゼロの執行人」以降降谷さんにやたらと格好つけさせるシーンが目立つけど、別にそういうファンじゃない人からしたら、ひたすら失笑もんです。男性からも憧れの男性像として人気らしいけど、ほんとか?少なくとも劇場版の降谷さんは、毎度毎度ただのカッコつけ野郎にしか見えないが。
推理ものとしてよくできた作品だと思うんですが、何でわざわざ原作が最終章に入るようなタイミングで、イケメンキャラ目当てのファンを増やすようなPRをしたんだろうか…
これが作画が綺麗になった理由でもあるんでしょうが、いちいちキャラの「カッコつけるためのシーン」を差し挟むようになった理由でもあると思うので、一応今まで推理ものとして見ていた人、特にイケメンキャラ目当てで見ていたわけではない旧来のファンにとっては違和感あると思います。
それはさておき、今作は出てくるキャラがグローバルだし、人数も多い。もっと規模のデカいストーリーかと思いきや、何かショボい。何でだろうなーと思ってたんですが、「ハロウィンの花嫁」の副題通り渋谷ハロウィンを舞台に据えているため、場所がほぼ東京・渋谷に限定されてるうえ、キャラが多すぎて一人一人の印象が薄くなってる気がします。
上にも書いた通り、降谷さんとその学生時代の友人4人の過去の話、その学友の1人と関わった警察一課の人達の話、降谷さんの現在の話、爆弾魔の話、その被害者達の話…と、爆弾魔を中心に全て繋がっているのはわかりますが、流石にネタが多すぎる。1時間半ちょっとしかない中、話があっちこっちしてた印象しかありません。
要は爆弾魔に家族や友人を奪われた人達が力を合わせて追い詰める、って展開なんですが、1人1人色んな恨みがあるはずなのに、人数が多すぎるせいでその辺の説明がかなりアッサリ。
いつも出しゃばりまくる迷惑グループ代表の少年探偵団でさえ、ほとんど出番なし。劇場版お決まりの「ラーーーーン!!!」も今回ばかりは駆け足気味。いや、もう無くて良かっただろ。
また、「渋谷ハロウィンを舞台に」と書きましたが、それも人が沢山集まることを利用したに過ぎず、大量爆殺を可能にするには大量に人が集まってる場所=じゃあ海外でも話題になってるから渋谷のハロウィンでいいか、程度だったような気がします。渋谷の地形を一応利用してはいたものの、渋谷のハロウィンの特色を活かしているとまでは言えなかったのでは。別にハロウィンじゃなくても、渋谷じゃなくても、どっかの大規模な祭りでも良かったし、むしろその方が提灯も花火も不自然じゃない。
そして一番致命的だったのが、あんだけ降谷が血眼になって探してたはずの爆弾魔(真犯人)があまりにもチョロすぎないか。世界を股にかけてる大犯罪者の割に、今回だけ突然うっかりさん過ぎる。
あの量の薬液(?)どうやって運び込んだのかとか、婚約中にどうやって用意したのか、誰が取り付けたのかとか、何か色々「???」なことばかり。
視聴者的にも、爆弾魔の説明で「人種、性別等何もわからない」と序盤で言ってしまったら、それはほぼ日本人でも男性でもないと言ってるようなもんだし、犯人がわかりやす過ぎる。謎解きという謎はほぼない。というか全然ない。
ただカッコつけ降谷さんとコナンのありえねえアクション、有象無象が力を合わせて敵を倒す!って話が見たい人向け。
そこらの一般人であろうと、力を合わせれば強大な敵にも勝てる…という日本では使い古されたテーマを、ちょっとキャラを多様化してやってみたのかな、と思うけど、見ていて何となくMCUのドラマ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」(アベンジャーズシリーズの続編)を思い出しました。アメリカでは孤高のヒーローが長く世間を席捲してたんで、こういう「弱者でも力を合わせれば~」みたいなのがここ10年くらい?バズってますが、日本では元々そういうストーリーでずっとやってきたから、今更ちょっとキャラを多様化して同じようなものを作ったところであまり新鮮味はない。
多分本当に「ファルコン&~」に影響受けてると思うんですが、アメリカの作品が日本の作品の影響を受けて「力を合わせて」系を作るようになってきたと言われているのに、今更それをまた真似て逆輸入してもなあと。
「ゼロの執行人」みたいにアナログ人間に学びを提供してくれる内容でもなかったし、今作を見て学んだことは2種混合の爆弾解除する時はガム持っとけってことくらいで、目新しいことは特になし。佐藤刑事が可愛かったくらいのもん。
アクションも中途半端、人間ドラマも中途半端、劇場版コナンなんかこんなもんでしょと言われたらそれまでだけど、昔のシンプルな謎解きメインを望むのはもう高望みになってしまうのか…それならいっそ「純黒の悪夢」みたいにアクションに全振りするか(それでもあれは人間ドラマもちゃんとあったよな)、もうもはや全員劇場版も見ろってことで、劇場版で原作の内容を進めてしまうくらい思い切ってくれ。いや、それも横暴か…
いやしかし、自分の記憶力の悪さを置いておいても全然記憶に残らない作品だった気がする。
今年の「黒鉄の魚影」は原作の内容に結構深く関わってくると言われていて、本筋(忘れた頃に触れてくる黒の組織の件)が漸く進むのでは!?とファンの期待値も高いらしいけど、どうなることやら。
エンドロール後のオマケが相変わらずあるのには安心。地味にあのオマケはユルくて良いですよね。まあ、作品の方向性が変わるのは時代の流れということで、今後も昔にしがみ付こうとせず変化を見守りたいと思います。監督も変わるわけだしね。
ただ、降谷さんの無意味なカッコつけはマジでやめてくれ。降谷さんがカッコつけだすとコナンまで何故かカッコつけ始めるし、そこだけ突出して気になりすぎる。