「ジャニーズJr.のプロモーションとして観るべし」東西ジャニーズJr. ぼくらのサバイバルウォーズ 乙ベルさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャニーズJr.のプロモーションとして観るべし
本作は「少年忍者」と「Lilかんさい」という、東西ジャニーズJr.グループのメンバーが初出演を務めた作品。
あらすじを簡単に説明すると、2つ対立するボーイスカウト団が存続をかけて対決することになり、それに巻き込まれ主人公「宙」を中心とした物語である。
本作は「映画」としては観るか「ジャニーズJr.のプロモーション」として観るかで評価が大きく分かれる作品である。
まず本作の良いと感じた点からお話する。
それはなんと言ってもジャニーズJr.達の歌と踊りである。劇中で使われている楽曲は全5曲であり、どの曲もジャニーズらしい魅力的なものとなっている。特にEDはダンスを含めてかなり完成度が高いように感じた。
何故良いと感じた点からお話したか、皆様ならお気づきだろう。そう、以上である。
次に悪いと感じた点について、「演技・演出・シナリオ」に分けてお話する。
まず演技だが、是非予告映像を観て欲しい。
…ご覧いただけただろうか、そう圧倒的に棒読みなのである。無論映画初出演の少年達にベテランの演技を期待するほうが無理なのだが、それでも棒読みと評価せざるを得ない。
主演が演技初挑戦で棒読みという点では、あの伝説の邦画「デビルマン」に匹敵していると言えるだろう。むしろこちらは全員が似たりよったりな棒読みである為、あちら以上に全体の演技のクオリティは低く感じられる。
次に演出だが、こちらも稚拙である。
代表的な例はやはりバトルシーンであろう。
後半にある不良グループとの戦いでは
・パチンコで攻撃する
・挑発してロープで転ばせる
・どんぐりをばら撒き転ばせる
・上からネットをかけて捕獲
といったボーイスカウトの知恵()を遺憾なく発揮した戦闘シーンが繰り広げられる。
これは役者以上に演出担当の問題と言える。もう少し何とかできなかったのか。
こうした子供騙しな演出の結果、映像に全く迫力がない。そりゃジャニーズJr.が本気で殴り合うようなシーンは駄目だろうが、中途半端な演出によって手抜き感が増している。
またこの映画で登場する場面は
①街中②グラウンド③スカウト団の本部④山⑤廃工場の5ヶ所のみである。
加えて全出演者のうちマトモにセリフがあるのは10人程度で、残りの20人弱は一言二言あるかというボリュームの薄さ。
この学芸会レベルの規模と演技の拙さが合わさることで、駄作感が生まれてしまっている。
最後にシナリオについてだが、大筋としては「少年らしいストーリー」でわかりやすい内容である。悪く言えば特別面白くはない。
加えて強引な展開が多くあまりにも細部が拙い、ツッコミどころが満載である。
・冒頭出会って間もない主人公を、こっちを見ていたという理由だけで無理矢理ボーイスカウト団に引き入れる(本人は嫌がっている)
・その翌日、いきなり勝負に巻き込まれ山に連れて行かれる(本人は嫌がっている)
・道中でメンバーに愛想が尽き、帰ると言い出し一人で帰る。(初めての場所にも関わらず自殺行為)
・案の定慣れない山道で転倒、メンバーに救出され彼らの優しさに触れ友情が芽生える。(そもそも無理矢理連れて来たやつを一人で帰らせるな、あとチョロすぎる)
極めつけはゴール地点でのシーンである。
物語の後半、ゴール地点の「魔物のすみか」に到着した一同を追って、元ボーイスカウトの警官、五十嵐がやってくる。
「五十嵐さん、どうしてここに?」
「宙君の両親から今朝捜索願いが出されて…」
…ん?なんだって…?両親から捜索願い…??
そう、この主人公、無理矢理参加させられている上に両親に何も言わずに来ているのである。最早馬鹿を通り越して狂っている。
このクオリティのシナリオが学芸会レベルの演技と演出で常に展開される。映画館で金を払って観る「映画」としてはあまりにも低クオリティであり、個人的にはデビルマンと比べて遜色ない出来である。
ただしシナリオだけで見れば、デビルマンが「原作の良さを引き出さず、ただあらすじをなぞっただけ」だったのに対し、こちらは「少年向けの青春ストーリー」に仕上がっている。ありきたりで拙くはあるが感動できるという点では遥かに良い
またそもそも、この作品は「映画」としてではなく「ジャニーズJr.のプロモーション映像」としての色が強い。そうした観点でこの作品を観れば評価は全く変わってくる。
ジャニーズJr.達の拙くも一生懸命な演技、学芸会レベルのクオリティも身の丈にあった可愛らしいものとして映る。また楽曲のクオリティは非常に高く、歌と踊りは素晴らしい。
この作品は「映画」ではなく「MVの延長」として観るのが正しい鑑賞法であろう。
「映画」として観れば拙い演技や演出がどうしても評価を下げてしまうが、「MV」として観れば彼らの少年らしさ、歌や踊りの素晴らしさを全面に押し出したものとして評価できるはずだ。
劇中で使われている5曲と出演しているジャニーズJr.の為に、お金を払ってまで観る価値があるかどうか。
これは人によるだろう。ジャニーズ好きは楽しめても、別段ジャニーズに興味がない人は単なる駄作と思うかもしれない。友人間でのサバイバルウォーズが起きないよう、友人との視聴の際にはお気をつけを。
このレビューめっちゃ笑いました、その通り!
意外性を狙って五十嵐を犯人にしたのでしょうが登場人物が少ないから彼以外あり得ず、またボーイスカウトで培った心の強さなんて大人になったらクソの役にも立たないんだぜ、というメッセージを今ボーイスカウト頑張っている子供達に突きつける残虐非道さに腹立ちました。