「自分を越えていく力をくれる」ハケンアニメ! ゆっこさんの映画レビュー(感想・評価)
自分を越えていく力をくれる
物作りの根源の感情を熱く呼び起こされる映画だった
この映画自体がまさに、主人公がやりたかった"自分みたいな人間にも魔法みたいな力を与える作品"になっている
仕事をする上での理想と現実
売れるものを描くこと、0から1を生み出す苦しさ、描くことで生まれる壁は描くことでしか乗り越えられない…
すごくリアルな生み出す苦しさの中、それでも理想を追い求め、こんな未来が掴みとれたらいいって希望をしっかり描いてくれてる
多少のご都合はあったとしても、ちゃんと安易なハッピーエンドじゃない
序盤は少し退屈な展開だと思ってたけど、王子が出てから温度が変わった
対談での王子の言葉はクリエイターとして温度が高く厚みがあって一気に気持ちを惹き付けさせられる
かつ作中アニメがすごくいい!
「君を絶望させられるのは世界で一人、君だけだ」
このセリフ一言が聞けただけで本当によかったと思える
アニメのラストを主人公は、目標にしていた王子のような路線へ変更する
みんなが求める王道ハッピーエンドではなく、マイナーかもしれなくてもそこに主人公の本当にやりたい想いがあって
"安易なハッピーエンドは現実にはやってこないし失ってから新しく得るものもある"
そういう新しい希望を提示していく
一方王子はその先を行く
絶望させるんじゃなく、死をキャッチーなものとして扱うんじゃなく、本当にすごいのは死に物狂いでボロボロになりながら生きることだ、そして「そんな私も愛してよ」とヒロインに言わせる
これはきっと王子の心からの声だ
天才でいなければ、キャッチーで意外性のある結果を出さなければ、自分の評価に自分が雁字搦めになる中で、もがいてたって天才的な意外性じゃなくたってがむしゃらに作品を作っていく強さを得たように見えた
どちらも結局どうありたいか、どんな人にどう届けたいかだ
売れ線を狙うのも一つの戦略だ
でも作り手は本当は理想を追いかけたい
端っこの人間でもいいから誰かの心に強烈に刺さりたい
そう思って渾身のものを絞りださなきゃ、結局誰の心にも刺さらないんだ
こんな熱い作品を作ってもらえてうれしい
理想をこんな風に胸に届く形で届けてくれてうれしい
これを見た中にきっと触発された作り手がまた誰かの心を震わす作品を作るんだろう
そうして物語は生まれていくんだ