「切実さが無いのだよ」渇水 たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
切実さが無いのだよ
敬愛する白石和彌の初プロデュース作品ということで見に行ったのだが、かなりバイアスがかかってしまい終始制作側目線で見てしまった自分がなさけない。
つまり水道局のシーンは何度か出て来るのだが当然一日でロケ、しかも午前中で撮り切ってるんだろうなとか、生田と磯村がからむ姉妹の家のシーンも続けて撮ってるんだよなとか。
これは白石監督の「止められるか、俺たちを」のパンフに載っていた「撮影日記」を読んだ悪影響である。あの映画の場合は2週間の日程で実質10日くらいで撮っていて「制作」というと香盤のことばかりがちらつく。
髙橋正弥という監督なのだが、まるで学生映画を見せられているかのような印象で芝居を寸断する寄り引きのオーソドックスなカット割りで、「段取り」が脳裏から離れてくれない。
特に驚いたのは、生田が夜の庭で出て行った尾野真千子を回想するシーンで、煙草ふかして二階を見上げて回想にOLしてまた戻って来るという前時代的な手法を恥ずかしげもなく展開していてあきれる。
どうして白石監督が自分で撮らないのか?と疑問に思うが、しかしごつごつしたピュアな良さも多少はあって特にナンバーガール向井秀徳のギターがガンガン鳴って生田が暴走するシーンは「これぞ学生映画」的なまんまの躍動感があって良い。
設定が「誰も知らない」にあまりにも似ていて、なのに家の中が美術的に貧困の匂いが皆無で、切実さが無く虚しい。
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