「本当に求めているのは水ではない」渇水 カロンさんの映画レビュー(感想・評価)
本当に求めているのは水ではない
刺さる人と刺さらない人で、評価がかなり分かれる作品ではないだろうか。
個人的には、似たような仕事をしているのもあるが、お金、夫婦仲、子どもとの接し方など、まさに「こうならないように」生活してきたので、あまり共感はできなかった。
作品の完成度は高いと思うが、PG12の割にあまり踏み込んだ描写が無かったのが、少し物足りなく感じた。姉妹の普段の生活や、門脇麦、外回りを外してもらった同僚などに、もっとエグいエピソードがあればとも思ったが、作品の趣旨から逸れてしまう気もして、結果、全体的にバランスが良いのかもしれない。
冒頭、水のないプールを前に、帰ろうと言う妹と、泳ごうという姉。
確かにプールを求めて来たのだが、極論、水を求めていた訳ではない。冷たくて気持ち良いと感じられる、心の癒しが得られればそれで良い。
最後まで、「本当に欲しいもの」への姿勢が揺るがない姉。その描写、本人(子役)の演技は見事だと思う。
水道局員にとってできることは、事前に伝えることだけ。
どうするかは、本人が決めること。
生田斗真だって、奥さんから何度も「通知」を受け取っていたはずなのに、無くなってからその重要さに気づく。
姉にとっては、周りの大人が、みんなそんな風に写るのだろう。
(延滞料金を)いくらかでも払って欲しい、というセリフは、そのまま、姉が母親に言う「髪を切ってくれたら」に対比する。
そんな些細な愛情でいいから欲しい。
水やお金が欲しい訳じゃない。
愛情が欲しいだけ。
水のように低きに流れていく人からは、水の匂いが、自らを叩き上げ続ける人からは、火と鉄の匂いがするのだろう。
結果的に、お父さんもお母さんもいなくなって、あの姉妹は、幸せなのか。いや、これから自ら幸せを掴みにいくに違いない。
ただ、どうにも生田斗真だけが救われたようなエンディングが、もやもやしてしまう。