「「ワンピースの映画」ではないです」ONE PIECE FILM RED のるさんの映画レビュー(感想・評価)
「ワンピースの映画」ではないです
面白くない映画ではないです。
楽曲は流石Adoさんだな~という感じでとてもよかったですし、作画もすごい。過去キャラがたくさん登場するのも個人的には嬉しかったです。
ではなぜ低めの評価をつけているかというと、「面白くなくはないけど、ワンピースの映画じゃなかった」からです。
これは「ウタの映画」でした。
まず、麦わらの一味の活躍がほとんどありません。ルフィはともかく、ゾロ以下仲間たちはなんかセリフあったっけ?となるほど記憶に残っていないです。一つにまとめたらそれぞれ2分くらいしか映っていないのではないでしょうか?私(ファン歴はそれなりに長い方だと思います)が「ワンピース」で見たいのは「麦わらの一味の活躍や冒険」です。ですがこの映画では、ひたすらウタが歌い、ひたすらウタの強力アピールがされ、ひたすらウタ主軸でストーリーが進みました。
わざと悪い言い方をすればウタは「ぽっと出」の、思い入れのないキャラでしかありません。そんなキャラを「こんなに強いの!ルフィにも勝てちゃう!」「でもこんなかわいそうな過去があるの!」とごり押しされても、感情移入はできませんでした。
また、この映画のキャッチコピーが「赤髪が導くフィナーレ」であるのにも問題があると思います。前述の通りこれは「ウタの映画」で、あんなにシャンクスが活躍しそうな感じで宣伝されていたのに、まともに戦闘したのは最終盤だけ。特に後半のウタの回想ではシャンクスが軽く毒親のようにも見えてしまい、麦わらの一味の不遇っぷりも合わせて、「ワンピース」が好きな人であればあるほど「なんか違うな…」となる確率が高いのではないでしょうか。
せっかく作品のテーマが「音楽」なのに音楽家のブルックが活躍しないのも納得できませんでしたし、ウタがあれだけ強いバルトロメオのバリアまで(ウタの作り出した世界の中とはいえ)破ってしまうなど、ウタを見せたいあまりに他キャラがひたすら割を食っています。
某所である方が言っていましたが、「出来は良いけど興味ない最強オリキャラ夢小説を見せられているよう」という評価がしっくりきました。
少なくとも、ルフィたちのように戦闘訓練はしていない女の子が悪魔の実の能力とはいえあそこまで「無双」するのはやり過ぎです。
Adoさんの歌に不満があるわけではないですが、名塚香織さんの声・キャラクターデザインとは合っていないという意見も若干否めないかな…という感じはありました。また歌唱パート多すぎという意見も、私自身はそうは思いませんでしたがわからなくはないです。
楽曲自体は本当に良かったのですが。
もう一度言いますが、「面白くなかった」わけではありません。エンタメとしては良い出来になっていると思うし、楽曲も素敵でした。映画・作品として新しい境地に挑戦しようという意気込みは素晴らしいと思います。
ですが、それはルフィ・シャンクスら「ワンピース」の根幹のキャラたちをないがしろにしてまですることかな、というのが私の意見です。
しかも今回は25周年記念の作品でもあるわけで、なおさらそこを無視してはいけないはずです。
ここまで読んでくださった方、こんな長文を読んでくださってありがとうございます。この映画をとても楽しまれたという方、皆さんを否定する気は一切ありません。実際私も「面白かった」とは思っています。どうかそのまま楽しんでください。
お目汚し失礼しました。