ベルファストのレビュー・感想・評価
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「平和」は「当たり前」じゃない
平和な日常が、ある日「凶気」に変わる。
この映画は民族紛争だけど、戦争も同様なのだろうか?
ウクライナの戦争もそうだし、
昔見た「ホテルルワンダ」もある時から2つの民族が殺し合うようになった。
本作品の北アイルランド問題にしても、私の子供の頃は、爆弾テロ事件があったことを覚えている。
そして、ブレグジットの時も、アイルランド問題が再発するのでは?
と懸念された。
(結果、大丈夫だったのかな?)
そう考えると「平和」というのは、決して「当たり前」のモノではなく、微妙なバランスの上に「かろうじて」成り立っているのかもしれない。
日本人には当たり前に思えても…
あとは、予備知識として、歴史的背景を仕入れた上で見た方が良い作品かな。
van morrison と 両祖父母
1969年てどんな年だったのか
ベトナム戦争真っ只中のこの年、僕は数年前に移り住んだ基地の街にある団地のカギっ子でした。バディと違って僕は余所者で、アポロの月面着陸では学校中(?)が大騒ぎでした。バディと同じように家族で「チキチキバンバン」を観に行ってたので映像が出たときは心のなかで拍手してました。ゲーリー・クーパーの「真昼の決闘」は観なかったけど、ジャン・ポール・ベルモントの「勝手にしやがれ」をテレビで観たな。…自分の少年時代を思い出してました。この頃僕の家も含めてみんな貧乏だったし、街にはチンピラもいたけど、あんな暴動は"もちろん"なかったな。宗教って奴は!(…その高々25年前に日本も戦争してたんだっけね)。洋画を観てると必ず宗教が絡んでくる。欧米では深い話にはキリスト教は必須ですね。ところでベトナム戦争って誰のための戦争だったのか。戦争で病んだ米兵がよく事件を起こしてたな。あれっ、もしかして欧米の人って戦うの好きじゃない?気のせいかな。
アイルランドをルーツに持つイギリス人ポール・マッカートニーが"give Ireland back to the Irish"「アイルランドをアイルランド人に返そう」(イギリスでは放送禁止らしいです)って歌ったのがこの数年後。アイルランド人はカトリックなんだよね。そして北アイルランドはイギリス。これはもめるわ。ああ複雑だぁ。
内容の面白さと温かい眼差し
政治的な背景や宗教的な背景が非常に強い作品ながらも、難しさを全く感じさせず、なおかつ複雑な人間ドラマや深い感情を存分にて堪能できる作品だったような気がします。
美しく静かに映し出される街並みは、20世紀の終わりまで争いなんて無かったような雰囲気─。しかし喧噪の中で沸き起こる暴力的な行動が、歴史的事実を呼び覚ます─。
映像的な演出は非常に分かりやすくて、しかも物事を丹念に捉えていて、音楽とか編集とかかなり凝った演出でありながらも、それら全てがごく自然な現実世界を表現しているように感じてしまうこのスゴさ。何度笑い何度泣かされたか忘れてしまうほどに、没頭させられました。
確かに、美化されていると感じるところは多々ありましたが、それをも受け入れてしまうくらいの説得力がありました。いいも悪いも、あの頃のいい思い出が感慨深い様相で華々しく世に放たれることは、すごくいいことだなーなんて思いながらの終幕でした。
この映画は今のウクライナとロシアの争いに似ていると思った
監督はアイルランド系なのか?
そこまで、言及されなければならない話だと思った。僕が記憶する限りでは、IRAと言うテロ(?)組織があった。今ではそれをテロ組織として簡易的に解釈するだろうが、北アイルランドの独立を願った組織であったと思われている。僕もそう思っていた。つまり、イングランドとアイルランドとに挟まれた北アイルランドの解釈の仕方がアイルランド系とイングランド系では、違うと思う。だから、単純にイギリス人としてくくる事は難しく、この監督がアイルランド系なのかイングランド系なのかで、違ってくる。ましてや、カソリックとプロテスタントの宗教感の違いだけでは済まされないと、僕は感じる。
兎も角、この映画は今のウクライナとロシアの争いと似ていると思った。争いは民族や宗教の違いで起こるのではなく、権力者と権力者によって生じ、その中であらゆる民が翻弄されると言う事だと思う。
これぞ映画🎥
襲われたのはカトリック教徒の家。彼らがなにか?ただ宗派が違うだけよ。仲良く暮らしていたわ。
まるで幻想の世界かと、時に見まごうモノクロの世界。険悪な大人たちのいさかいなど無縁のような美しい映像。その美しさは、過去の子供時代の記憶をたどっているからだろう。子供にとって、宗派の違い、という理由は理解しがたいもの。
心打たれるのは、この家族の愛の深さ。母の強い愛、父の献身、ばあちゃんの懐の深さ、じいちゃんのユーモアのセンスと格言のような諭し。そして、葬儀の後のパーティの雰囲気のよさ。それは故人を敬いうからこその皆のはしゃぎぶりに見える。そう、日本でだって、賑やかな精進落しはあるしそれでこそ故人は成仏できるというもの。「亡くなった悲しみよりも、出会えた幸せをかみしめて」とかそんな風なことを牧師さんは言った。たしか。それを確かめるかのような、夫婦のダンスはかっこよかったなあ。かっこよくて、なぜだか涙がこぼれた。
モノクロだけど、色が見えるような
歴史の勉強をもっとやっときゃよかった
北アイルランド紛争があったことは知っていたが、何が原因だったかを本作品で教えてもらい、歴史的背景を理解して観ていれば、もっと入り込めたかなと、自分の知識不足を少し悔やんだ。
モノクロの作品は最近マクベスを鑑賞したが、遠近や陰影がはっきり見えて新鮮な感じで色が無いことへの違和感は感じない自分に感心した。
狭い地域の紛争は、ウエストサイドストーリーもそうだけれど、その地域の経済事情が芳しくないと内向きになり、敵を作り上げてしまうのだろうか、我が国も経済格差が広がり続ければこのような事態を目にするのかも、と恐ろしく感じた。
ラストシーンでバスに乗った子供、孫を見送り自宅のドアを閉めた後、擦りガラス越しに映るジュディ・デンチの嗚咽が圧巻!涙を誘われました。
これは何度か見返したい作品になりました。
子供の目線に救われる
007のMとして散ったジュディー・デンチさんの、次のフェーズともいうべき「おばあちゃん女優」さんのチャーミングさを堪能できる作品。愛すべきおばあちゃんの可愛さと年を重ねて腹が座りまくったアイリッシュの女性のかっこよさに、シビレました。
アイルランドの町の中で起きるカソリックとプロテスタントの対立の激化と暴動を子供の視線で描いていて、この話はどこの国の人でも、共感しやすい作りになっているのが、うまい!と感じました。私は沖縄出身で今年は沖縄本土復帰50年でコザ暴動をテーマにした映画もいくつか製作されていますが、ベルファストは沖縄で起きた話のような気もしてくるし、ウクライナの町の隅で起きた話のような気もしてくるし、この作品を観た世界中の
国の人々が、自分の住む町で起きた話のように感じてしまう、不思議な力を持った作品でした。
登場してくる人物がそれぞれ個性的で、それも良かったです。
これがアカデミー賞獲ってもおかしくない
ケネス・ブラナーの半自伝的映画。
彼は9才にロンドンに引っ越すまで北アイルランドに住んでたそうですが、そんな子供時代のベルファスト市のお話。
北アイルランド問題を描いていましたが、宗教的な対立によって住んでる所の市民同士で窓ガラスを割るなどの暴動があったのはかなり衝撃でした。
主人公の家族はずっと住んでたベルファストから引っ越すか留まるかという選択肢で揉めながら最終的に選択を出す話ですが、暴動シーンの怖さと普段のほのぼのとした日常や学校の女の子との関係等を交互に描いていたために、ベルファストに残りたいと思う気持ちにも理解出来てしまう。
そういった所が素晴らしいです。
もし自分が子供の頃から住んでいる場所が戦場になってしまったらと思うとなかなか考えさせられました。
ただ、今作にモノクロの映像が言うほどハマってるとは思えないのと、思った以上に淡々としていたために少しダレる時もありました。
来週はアカデミー賞があり、最有力はパワー・オブ・ザ・ドッグと言われてますが、今の世界情勢を考えると今作の可能性も無くはないと思えてきました。
とりあえず、数年後くらいに故郷を離れたウクライナ人がこれを観たらどう感じるか、非常に気になります。
ちなみに、劇中にソーのコミックとアガサ・クリスティの小説が出てきた時は腹抱えて笑ったw
去った者、残る者、命を落とした者に…
劇的な面白さはないですけど、命の危機が迫った中で去るか、残るか決断しないと行けない苦しみというのが伝わってくる作品でした。
どう行動するのか良かったかなんて後になって振り返らないとわからないでしょうけど、安全圏から当事者たちをあれこれ批判するような人にはならないよう気をつけたいです、とりあえず。
ケネス・ブラナーがインディペンデントみたいな作品を撮った
ケネス・ブラナーは業界の大御所だけど、新たにこれほど瑞々しい感性の作品を撮るなんて驚き。彼の過去作とはかなり趣が異なる作品で、まるで初期のジャームッシュみたい。
まず白黒の撮影が見事。そして時折差しはさまれる懐かし映画のカラー映像が効いている。それに最後の空の青にはやられた。息をのむほど美しかった。
ベルファストという長年キリスト教の宗派対立の激しい土地の物語で、実際かなり過酷な現実があるのだけど、その中で生きる家族の日常が、どこかユーモラスだったり、愛おしかったり、とぼけていたり、その描写が素晴らしい。
そして主人公のジュード・ヒル君の演技の魅力。彼の演技と存在感は、文句なしにこの作品のキーポイントだろう。
脚本も素晴らしいので、これを書き、監督も務めるケネス・プラナーの才能恐るべし。
世界中の故郷を去る子どもたち
ベルファスト、北アイルランドのこと、少しは知っていたけれど…。
昨日まで普通に隣人であった人が、今日は宗教の違いで敵になってしまう。故郷が安全なところでなくなってしまう悲しみ。
60年代終わり頃のベルファストは、どこか日本の下町のようだ。みんな知り合い。子どもたちが道で遊んでいる。
何かとんでもないことが起こっている。それをバディの視点で追っている。お母さんの緊張、必死さ、お父さんの不安、もどかしさ、お祖父さんお祖母さんの愛情。セリフは少ないけれど眼差しと仕草がとても良い。
音楽もとても効果的。
ナチスから逃れたユダヤ人の子どもたち、ウクライナから逃れた子どもたち、のことを考えた。故郷を離れても、次の故郷を見つけられるように。そしてまた故郷に帰る日が来ることを祈りたい。
全体的に薄いケネスブラナー調ではあった
ケネスブラナーは本当に相性が悪いというか、今まで一度も作品を面白いと思ったことがなくて、でも個人のパーソナルな映画で白黒で臨んでいるのならと思ったけどそんなことはなかった(笑)。やっぱりケネスブラナーはケネスブラナーで映画の人ではない気がしている。
もちろん60年代のイギリスの社会問題、宗教的対立などよくわかってない。けれどキュアロン『ROMA』がそんなの関係なく圧倒的に映画だったのに比べると、ケネスブラナー的軽さに止まっている。ジュディデンチの表情一発の強さと、終盤のダンスシークエンスの喧嘩ばかりだった両親の「若き日はきっとこんなだったんだろうな」という踊りの軽さはピタッとはまっていいのだけど、それ以外のエピソードも出てくる映画までもが軽い。薄い。こんなに薄い挿入映画があっただろうかというくらい活かされてない統一された薄さ。
観る前の想像が上回ってしまってたのかもしれない。短い時間に集約させてたのは良かったと思う。フェリーニの『アマルコルド』はじめ、台湾映画のこういった題材に比べても、実際に出来事でなくて、そこから結局個人の映画表現が全開になるかどうかなので過度の期待だったのかも。
実体験を基にしたからこその名言の宝庫
1969年の北アイルランド
人々が家族の様に助け合いながら生きる小さな街を舞台に起きた悲劇と、悩み苦しみながらも明るく前向きに戦い抜いた人々の姿を、ひとつの家族をとおして描く
ポスターや予告編の高揚感や弾けた感じを期待していくと、オープニングから度肝を抜かれること間違いない
貧しくも牧歌的な平和な毎日を過ごしていた街が、ある日突然、宗教の違いを理由に暴徒に襲われる
実際に起きたプロテスタントとカトリックの抗争を、ケネス・ブラナーが自身の実体験を基に、故郷への愛情とコロナ禍で生まれた様々な諍いへのメッセージをこめて作り上げた渾身の一作
映画という媒体が持つ、リアリズムとファンタシズムとエンターテインメント、それらが見事に融合し幸福な化学反応を起こした
結末は決して幸せではないのに、人々が互いを受け入れて生きる術を模索することの希望と、苦境でも生き抜く人間の逞しさを感じさせる
しかもこの映画、明言の宝庫!
ネタバレになるから書かないけど、ぜひあなたに響くセリフを探しに行ってほしい
悲劇的な社会を生きる。
アカデミー賞作品賞にノミネートされていたので、観させていただきました。
感想
映画愛が伝わってくる作品でした。
ほぼ全編モノクロ映画の中で数少ない輝きを見せている場面の演出としてカラー描写の映画鑑賞シーンが描かれていたので、この点については監督の映画愛を感じました。
私は反戦映画と思って見ていたのですが、この作品はケネス・ブラナー監督の半生描くドキュメンタリー風映画だったので物語展開としてはあまり動きがなく、冗長に感じました。
宗教の価値観による争いという時代背景は、現在のロシアvsウクライナ戦の様で悲しい気持ちになりました。
子供が巻き込まれる抗争は起こるべきではないと深く痛感致しました。
総評
人生の豊かさに有り難みを感じる事が出来た作品。
モノクロ描写の中にも感じる色味描写が興味深いと感じた。
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