「アカデミー作品賞はこっちで良かったんじゃね!!」ベルファスト 星のナターシャnovaさんの映画レビュー(感想・評価)
アカデミー作品賞はこっちで良かったんじゃね!!
1969年、北アイルランドの小さな町「ベルファスト」で
キリスト教の一派であるプロテスタントの住民が、
同じキリスト教の一派であるカトリック教徒の住民に対しての
排斥運動が始まり、主人公少年の一家は
カトリック教徒が多数暮らす地域に住むプロテスタント教徒であったため
どちらの味方にもなれないまま、どうやって生きて行くのか?
難しい選択を迫られる大人たちの姿を9歳の少年の目を通して描かれています。
無邪気な子供同士のふざけ合いから、突然に大人のガチの争いに
巻きこまれる何も知らない少年の戸惑いが伝わってくる。
それでも最初はテーブルの下で震えていた子供もやがて
町の真ん中に設置されたバリケードに慣れて遊びにつなげてゆく姿は
意外に子供の順応力を感じさせて逞しい!!
とんでもない略奪のシーンの後でさえ、
無邪気な子供の一言で思わず爆笑してしまった。
でも、この映画は
「どんな理由があろうとも争いは何も生まない」こと
しっかり伝えてくれる。
ロシアによるウクライナ進攻を目の当たりにして
あの映像の中で、この映画と同じように子供たちや母親たちが
右往左往していると思うと、やはり堪らないです。
で、月に8回ほど映画館で映画を観る中途半端な映画好きとしては
一昨年の名作「ジョジョ・ラビット」の様に
悲惨な争いの内容が少年の言動でかなり見易くなってますが
悲劇の度合いは実は深刻で厳しい話ではあります。
劇中、少年のお母さんが
「町中が知り合いでどこにいても誰かが声をかけてくれる町」と、
「ベルファスト」の良さを語るのですが
争いが激化して、その知り合いが殴りかかって来る町に
変貌している事をなかなか受け入れられないでいる。
実際の諍いに子供が巻き込まれてやっと、事の重大さに気づく。
近しい民族同士で争う事の愚かしさ、悲しさが伝わってくる。
でも、お母さんの戸惑いもよく分かる。
出来る事なら慣れ親しんだ場所で一生平穏に暮らしたい。
世界中のか弱き人々がみんな望んでいる事だから〜〜
今回の米アカデミー賞の作品賞、「コーダ あいのうた」も
多様性を大事にする意味では悪くないのですが
私はやはり商業映画として「ベルファスト」の洗練度の高さ、
作品としてのブラッシュアップの出来栄えを思うと
こっちが相応しいように思うのです。