「北アイルランド問題をよく知らなくても大丈夫(たぶん)…普遍性のあるテーマには、歴史的な背景や文化の違いを超えて訴えてくるものがあるからです。」ベルファスト グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
北アイルランド問題をよく知らなくても大丈夫(たぶん)…普遍性のあるテーマには、歴史的な背景や文化の違いを超えて訴えてくるものがあるからです。
アカデミー賞のライバル⁉️
ということで、よし、敵情視察でもしてくるか❗️
みたいな軽いノリで先行上映に行ってきました。
すみません。まずはお詫び申し上げます。
作品本体の持つ訴求力のようなものが、とても深くて強いので、場外のことはどうでもよくなりました。
特に、ウクライナで起きていることを日々リアルタイムで見聞きしている今は、余計にこの映画の世界で起きていることが現実感を伴って沁みてきます。
国家的な戦略(領土拡大とか)であろうが、指導者の個人的野心であろうが、宗教的な確執であろうが、最後に暴力的手段で解決を図ろうとするのはいつも男ども。そして、犠牲になる民間人の多くは、子どもと女性とお年寄りや病人などの社会的弱者。
そして、暴力的手段を主導する勢力が暴力的手段を正当化する過程で奪っていくのは、いつでも自由と人権。
この映画の中でも、直接的表現ではないものの、結局選択肢が狭まっていくことで自由が奪われていきます。
子ども心にも、何か大切なものが失われていることが分かるのです。
だから、月まで行けば自由でいられる‼️
あの宿題がキャサリンと自分の将来の希望であることにはそんな気持ちも込められているのです。
何気ない日常。
コロナ禍以降、盛んに使われる言葉ですが、これこそが自由であることの証でもある、そう思います。
軍事攻勢やインフラ設備の破壊によって生命、生活から安心を奪い、挙句に住処から追い出す。
どこにも正当性のカケラすらありません。
話がウクライナの方に寄ってしまいましたが、この映画は、ベルファストという限定的な場所のことを描きつつ、人間自身が、他者から大切なものを奪ってしまうという人間性の愚かさと、その中でもなんとか回復させようとする市井の人間の尊さを教えてくれます。
『ドライブ・マイ・カー』と『ベルファスト』
日常生活と一種の戦時下、という環境の違いはあるにせよ、何かを奪われたり失っていく心の在り方、そこからの回復、など、人間性の普遍的なテーマを描ききるという点でどちらも素晴らしい作品だと思います。
ケネス・ブラナーも『チキチキバンバン』はじめ数々の映画に救われていたのですね。
あの紛争の中でも、映画館があって良かった、救われた、という人がたくさんいたということにも感動です。