「「母性」は女性のモノ?」母性 ちえべさんの映画レビュー(感想・評価)
「母性」は女性のモノ?
「私たちの命を未来につなげてくれてありがとう」
ラストで、妊娠を伝える娘・清佳に対して、低くゆっくりと言う母親・ルミ子にちょっと不気味さを感じた。その後、部屋の電気を消し静かに扉を閉めて出ていくルミ子は、いったい何を思って、あの言葉、実母(大地真央)がルミ子に残した言葉を清佳にかけたのだろう。
そして、清佳はひとり「わたしはどっちだろう」とおなかに手を当ててつぶやく。
その「どっち」とは。
物語には、いろいろな「母親像」が描かれている。
理想のようで、実は毒親なのかもしれない実母(大地真央)。
テンプレな義母(高畑淳子)。
そして、その二人のムスメに当たる、ルミ子。
清佳の父親の不倫相手・仁美(中村ゆり)もある意味、母親とみてもいいかもしれない。
とにかく、「母性」というわりには、女と女の関係、母娘の形のみで描いている。
映画の中の男の描き方が、清佳の父と、清佳の祖父と、清佳の友人程度しかない。
とても薄っぺらい。
Amazonプライムはジャンルとしてサスペンスドラマとしていたけど、どちらかというと人間ドラマとして見るべきなのか。
冒頭の事件を紐解くというよりは、先にも書いた、女と女・母娘の人間関係を大きく描いている。そこがサスペンスだという取り方なのかもしれないが。
女性が妊娠に気づくと、喜ばしく思うものなのか、怖いと感じるものなのか。
男には、計り知れないことだけれど、それもルミ子と実母の会話から考えさせられる。
そして、火災現場で、幼い清佳より実母(大地真央)を助けたいと思うルミ子。
清佳自身が、自分を助けるために祖母(太地真央)が自殺したことを知った後の行動と、
それを見た、義母(高畑淳子)とルミ子。
病院に運ばれ清佳の寝るベッドの横で娘・清佳の手を握るルミ子。
そのルミ子のまなざしには複雑さを感じる。
正直、自分では想像しきれない感情が込められている気がする。
廣木隆一監督は、ピンク映画・ポルノ映画を経て、どちらかというと女性に絞った映画を世に出している。だから、より深いところの女性感情=母性、いや原作者・湊かなえから言わせれば必ずしも女性全員が母性を抱くわけではないと言っているので、イコールで結び付けるのは乱暴かもしれないが、そのあたりは強く描かれているのかもしれない。
余談だけれど、レーティングが「G」なのは、どういう判断なんだろうと疑問に思った。