「『母性』は愛の性質ではなく、特質に入る?!」母性 シネマスターさんの映画レビュー(感想・評価)
『母性』は愛の性質ではなく、特質に入る?!
戸田恵梨香さん演じる『母』はお嬢様育ちでお母さんへの愛情が強く物事の判断が全てお母さんの感性で決めていた。結婚相手に関しても、趣味の絵画教室でたまたま一緒の男性の絵をお母さんの意見をもとに気に入り、結婚を決めるほど。いわばお母さん依存症。
永野芽郁さんはそんな『母』の『娘』を演じる。娘は上記の特質を持った母が育てるため、祖母が喜ぶことを母が望むみ、それをなす生物共生の関係である幼少期を迎える。
ある日嵐が原因で家の周りにある樹木が家を襲う。たまたま家に泊まっていた祖母と一緒に寝ていた娘の部屋に樹木が入ってきてしまい、箪笥の下敷きに。別室の母は家が引火している中、半開きで固定された扉から祖母を助けようとするも、娘より祖母を助けたい母に対し、母に娘を助けるよう指示する祖母の入れ違いが生じ……
物語は大きく3構成に分かれており、母親のサイド、娘サイド、母娘混合となっている。各サイドでは基本同じ構成の回想シーンであるが母、娘互いの見え方がズレており、見どころである。最終章では家が焼けた後の、夫の実家へ義母と未婚の妹との生活の内容になる。
やっぱ湊かなえさんの作品描写は、なんというか日常生活を送る私たちの痛いところを突いてくる。人間の他者への愛は備わったものとは限らず、むしろ親や友人など他社からの刷り込みが原因で成り立っている。愛という言葉はある意味何にでも姿を変えられる曖昧な性質であると思いました。そして今作の中核『母性』はその性質の中でも特に異質な感情なのかと思いました。
俳優陣の演じもさることながら特に文句のつけようがないです。戸田恵梨香さんはじめ、義母の高畑さんもかなりいいお芝居でした。
邦画ならではの小さいフィードに対して、かなり濃く深い、根が太い物語です。あと個人的ですが、もう少し母娘の入り違い幅があったら、又はそれにちなんだエピソードが増えると見ごたえあると思いました。