「母役の鬼才・高畑淳子」母性 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
母役の鬼才・高畑淳子
湊かなえの同名小説を映画化。となると、いの一番に頭に浮かぶのは「告白」。本作の予告を見ると、あの映画の衝撃が蘇る。てなワケで、ここ1.2ヶ月で期待値ナンバーワンだったのですが、正直期待ハズレ。もっと、ドロドロとしてグロくて後味悪いのを想像してたんだけどなぁ...。
予告が過剰すぎたんでしょうね、、、
衝撃なラストが待っているみたいな雰囲気醸し出していたんだけど、全然そんなことない。ビックリする〈告白〉はあることにはあるんだけど、なんだか物足りない。原作を読んでいないからどこまで忠実なのか分からないけれど、少なくとも「告白」には何ひとつとして届いていなかった。湊かなえらしさも薄く、個人的にはモヤモヤ。描き不足も目立っていたし、色々と足りない気がしました。
ストーリーもそうだし、演出にもパンチが無かった。予告の方が断然面白かった。意外にもトントン拍子に話が進んでいくのが、気に入らなかったのかなぁ。もし、中島哲也(告白、渇き。の監督)が撮っていたらどうなっていたのだろうか。もっと空気が重くて、気持ち悪くて、ホラー的要素があっただろうか。中島バージョンの「母性」も見てみたいと思いました。(超厳しいとして有名な監督だけど、やはりどの作品も重厚感がほかとは比べ物にならず、面白い。来る以来、一度もメガホンを取っていないから寂しい...。)
しかしながら、戸田恵梨香、永野芽郁、大地真央の演技力は流石なもの。でも、抜きん出ているのは高畑淳子。もう、この映画は完全に「高畑劇場」だった。そのくらい、彼女の演技が破壊的で衝撃的。「舞い上がれ!」ではあんなにいいおばあちゃんを演じているのに、本作では超クズババア。この人に母親役を演じさせれば、間違いなし。私が期待していた、湊かなえ作品特有の恐ろしさが、高畑淳子にのみありました。
決して作品の質が低い訳ではなく、なんなら上質で雰囲気も宜しい。パンチがないといいながらも、ちゃんと面白い。ドロドロ具合で言えば、そりゃ「告白」の方が凄いし、同じテーマを扱っているのであれば、「MOTHER マザー」の方が気味悪くて好き。だけど、母目線、娘目線で物語を展開していくのには、引き込まれていったし、ストーリー性としては母親を扱った物語の中でも結構上位に来る。
期待しすぎてしまったが故に残念な結果になったけれど、それなりに面白い映画ではあります。湊かなえの作品だという先入観を無くしてご覧下さい。でも、ラストの不甲斐なさは頂けませんけどね!?