「【”母性とは徐々に育まれるモノ。そして、漸く母性本能を得る・・。”重くて、辛くて、不穏な雰囲気が横溢する心ざわつく様々な”母性”を描いた作品。但し、ラストには仄かな希望が伺えた作品でもある。】」母性 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”母性とは徐々に育まれるモノ。そして、漸く母性本能を得る・・。”重くて、辛くて、不穏な雰囲気が横溢する心ざわつく様々な”母性”を描いた作品。但し、ラストには仄かな希望が伺えた作品でもある。】
ー 私は、男であるので母性について語る資格はない事は重々承知しているが、女性には産まれつき、母性本能があると信じたいと思っている。
故に、時折報道される、母性無き女性の所業を聞くと、暗鬱な気持ちになる。-
◆感想
1.今作では様々な母性が描かれる。
1)ヒロイン(永野芽郁)の母、戸田恵梨香を演じる、娘より母(大地真央)を大切にする女性。
- 彼女からは、前半は母性は感じられない。
娘をキツイ”祖母(高畑淳子:今作の演技は、引いてしまう程、凄い。)に褒めて貰いたいために”表面的に良い子になる様に育てる姿。
そして、母が孫を可愛がる姿に、嫉妬する姿・・。-
2)ヒロイン(永野芽郁)
- 母から愛されていない事を、幼き時から察し、”母から愛される”良い子になるように努力する。結果として、高校生になってから正論を振り翳す女性に育つ。-
3)ヒロインの祖母(大地真央)
- 母性に溢れる女性。それは、孫であるヒロインへも及ぶ、太陽のような存在である。が、故に戸田恵梨香を演じる娘は、娘より、母を尊ぶ女性に育っている。
4)ヒロイン(永野芽郁)の祖母。強烈口の悪いなキャラクターであるが、娘にはとことん甘い。
- で、娘が家を恋人と出た後に、戸田恵梨香演じる義理の娘につらく当たる。-
■前半、印象的なシーンが描かれる。それは、嵐の晩、雷により樹木が倒れ、箪笥の下敷きになったヒロインと、祖母。そして、ヒロインは助け出され、祖母は亡くなる。
このシーンが、ヒロイン(永野芽郁)の母、戸田恵梨香の視点と、ヒロインの視点で描かれる。
そして、後半、”真実”が描かれる。
観る側は、その”真実”を知る事で、ヒロインと、ヒロインの母のギクシャクした関係性が分かるのである。
2.時代は、全共闘が収まった頃であろう。
ヒロインの父は、ヒロインの母の”友だち”と恋仲になっている。
それを見かけたヒロインは、父を激しく罵倒するが、ヒロインの母の”友だち”は”貴女は世間を知らないだけよ・・。”と、受け流す。
父は、何も語ら(れ)ない。
- この映画では、父性の欠如がヒロインに与えた影響も、描いている。父親がヒロインを愛する姿は描かれない。
■鑑賞中、私は常に辛い気持ちでこの作品を観ていた。
だが、ヒロインが、祖母が自分を助けるために自死した事を知った時に、”ごめんなさい”と泣き崩れ、母は隠していた真実を娘が知った事にショックを受け、倒れ込む。
そして、ヒロインは首を吊るが、祖母の発見により一命を取り留める。
<時は流れ、ヒロインは成人し、母と共に認知症になった祖母の面倒を見、恋人の子を宿している事を知った時に、母親に電話で”私、妊娠したみたい・・。”と報告する。
そして、微笑みを浮かべながらお腹をさするのである。
今作は、”母性とは徐々に育まれるものではないか・・”という前提で、描いた作品。
前半は、観ていて辛いシーンが多いが、最期は救われた気持ちになった作品でもある。>
NOBUさん、共感&コメントありがとうございます。
母性が本能として備わっているかどうかは正直よくわかりませんが、しばしば報道される虐待等の事案を見ると、少なくとも個人差は相当大きいのではと感じます。また、子供の誕生を境に急に父親となる男性と違って、女性は長い妊娠期間を経て母親となるので、この間に母性が育まれるのかななんて思います。いずれにせよ、その人の生い立ちに深く由来するような気がしますが、愛情いっぱいに育てられても、愛情豊かな母親になれなかった、本作のルミ子を見ると、複雑な気持ちになります。子育ては本当に難しいですね。
いつもコメント楽しく拝見させていただいています。
1点だけ補足です。
永野芽衣にとって高畑淳子は義母ではなくて祖母(その2)かと。
読んだ方がわかりにくくなるかと思ったので老婆心ながら。