ゴヤの名画と優しい泥棒のレビュー・感想・評価
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ハットトリック‼
テレビが国の老人たちの孤独に寄り添えるものだと考える主人公が、国営放送を無料にするために声をあげるが相手にされず・・・。そこで、この主張を届かせるために思いもよらない作戦を決行し・・・といった物語。
変わり者のケンプトンはその性格故仕事が続かず、戯曲を書いてばかり。妻のドロシーは、そんな夫に愛想を尽かしながらも清掃業で家計を助けている。息子のジャッキーは意外にも(⁉)父親派。
そんななか、ゴヤの名画が14万ポンドでギャラリーに入れられたと聞き・・・。
随所にコメディ要素を取り入れながら、大きな社会的メッセージが込められた作品。
ケンプトンは確かに偏屈だが、根底にある想いは社会的弱者を助けたいと思う気持ち。彼に振り回されっぱなしのドロシーも、何だかんだ夫を想う気持ちはあり、仲良く踊って歌うシーンは微笑ましい。あんな夫婦に憧れますね・・・。
名画が盗まれ、世間はやれプロの犯行だ計算しつくされた組織的な云々だと言っている様はおかしくて笑いそうになった。割とあっさり盗られてますよ~(笑)
と思いつつ、いち市民のケンプトンの主張が届かないのと一緒で、名画が盗まれてもまさか市民の犯行とは思われず…こんな側面からも、政府は市民の存在が見えていないのだなぁと思わされたり、深みのある内容だった。
裁判のシーンも良いですね。変わり者だが、持ち前の性格で観衆を味方につけ、いよいよ最後には・・・。そして明かされる真実。シンプルなコメディ作品かと思ったが思いもよらない展開に驚き。
思いの外話の内容が難しい場面もあったが、ケンプトンの優しさ、人を想う気持ち、そしてそれをしっかり受け継ぐジャッキーやドロシーの支えに心がホカホカした作品だった。
国営放送ねぇ・・・。
うちと比べてどんなですかねぇ(笑)
本当?って程のノンフィクションな
ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン、名優2人の燻銀の魅力が光る
ジム・ブロードベントとヘレン・ミレン主演の実話を元にしたコメディ、って時点で観たくなった
1960年代のイギリス。ダメダメだけど憎めない初老の主人公パントンと、生真面目でしっかり者の妻。
バントンは当時話題の名画を美術館から盗み、身代金を孤独な老人たちに役立てようと企むが、そこにはいくつもの壁と、優しい嘘があった…
ノッティングヒルの恋人の監督作だからか、貧しい老夫婦の暮らしがなんとなくおしゃれで、お湯を沸かす間に踊るダンスすら様になる
REDでも男前だったヘレンが、ごく庶民的な生真面目な主婦をいじらしく演じれば、アイリスで包容力に満ちた夫を好演したジムが、憎めないけどダメな男を好感度100%で演じる
その絶妙のバランスが素晴らしい
全体的には、前半が少しもたついた印象だけど、後半の引きがすごい
優しい嘘を含んだ裁判所のシーンは必見
個人的に☆5中3
史実として面白い
泥棒のどこに優しさを見いだすのかはきっと人それぞれ
日本でも展示されたことがあるゴヤの作品『ウェリントン公爵(The Duke of Wellington)』(1812-14)の盗難事件を基にしたストーリー
この絵画に描かれているのは1815年のワーテルローの戦いで、かのナポレオンを打ち負かしたイギリスの英雄アーサー・ウェルズリー。
そんな英雄の絵画が盗まれたとなれば、イギリス中で話題になるのもうなずける。
年金暮らしのケンプトンは、ゴヤの絵画泥棒となり、多くの高齢者のために絵画の身代金を要求し、公共放送の受信料に充てようと企てる。
映画の原題は『The Duke(公爵)』だけど、今回は邦題の方が好きかな。
泥棒の優しさはいくつかあって、その1つ1つがケンプトンさんの魅力になっている。
ケンプトンと長年を共にする妻役にはヘレン・ミレン。この2人の心の在り方の描かれ方もこの映画を観て良かったなぁと思うところ。
本当に大切なことを語らない美学
夫婦の間にあるすれ違いや葛藤が、画面の絵からにじみ出てくる演出が心地よかった。主人公ののキャラクターやセリフ劇で楽しませる工夫を忘れずに、でも大切なことはセリフでは語らせない。上品な映画でした。
個人的には、主人公家族のアパートメントのある交差点から、遠くの工場の煙突が見える画面がとても印象的でした。工業化が進む町と、取り残されていく老人が対比的に描かれているように感じました。劇中にある、「この絵にそれだけの金額を払うくらいなら、福祉に回せ」というメッセージが一目で表された構図ではないでしょうか。
「あなたは私であり、私はあなたである。」現代社会に語られるべき言葉だと思います。
次男のキャラクターがあまり深く描かれず、長男の掘り下げももう少し欲しかったなと思ったので、-1.0させていただきました。
『ハットトリック!』
タンスの中の公爵
実際にあった名画盗難事件をコミカルに描いたドラマで、60年代のイギリスの時代感がよく出ていて楽しかったです。前半は主人公の暴走老人振りを中心にまったりと進むけど、名画を盗んでおいて、隠し場所がタンスにゴンならぬタンスにゴヤと言うのが笑えます。また、後半の裁判所シーンになってから、彼の愛嬌のあるキャラが生きてきて、ぐっと面白くなります。建前はともかく、彼が求めていたのは弱者救済と言うよりも、若くして亡くなった娘への贖罪感、喪失感によるもののように思え、しんみりとする面もあり、いいドラマです。それにしても、邦題のセンスは何とかならないのかな?役者ではジム・ブロードベントの飄々とした芸達者振りもさることながら、いつもは華やかな印象のヘレン・ミレンの地味な老女ぶりには驚きました。でも、旦那とキッチンで踊るシーンは、なんかかわいかったです。
思いのほか軽快で淡々。
地味な作品です。義勇的な動機の犯罪を犯した男性と家族のお話ですが、感動を前面に出すような作品かなぁ?と推測していましたが全く違っていました。ベタつきなく、カラっと描く軽快な味付けの作品でした。が故に、スルッと見終わっちゃいました。
裁判のシーンは楽しめたのですが、盛り上がりに欠けていてそれ以外は正直「むーん」って感じだったかなぁ。頑固な高齢者の思い出話止まりだったかなぁ。本当に単案としているんですよね。主人公の男性に気持ちが入らなかったからかなぁ。なんか、奥さんに苦労ばかりさせている、偏屈爺さんにしか見えなかったんです。好き勝手なことをやって、家族を(特に奥様)を振り回しすぎじゃない?って。もうちょっとはっきりした味付けが欲しかったかな。・・・良いお話なんですけどね。そんなに心があったかくもならなかったしね。
007と意外な接点のある一作。
ロジャー・ミッシェル監督の遺作となった本作。本作も安定した演出力でその手腕をいかんなく発揮していたため、とても驚きました。
主人公ケンプトンは公共放送の受信料不払い運動をするなど、穏やかな風貌ながら社会問題に対して強い意識と行動力を持った男性。そんな彼がゴヤの名画を盗難するという重大な事件を引き起こします。その動機は彼の口からも語られ、それなりに納得できるものの、でも物語をこれ以上話を膨らませるのは難しいのでは…、という勘ぐりを鮮やかに上回った展開となります。まさに「優しい泥棒」です。
映像の繋ぎと音楽の添え方がなかなかシャープで、それが一見地味目め作風であるにもかかわらず、意外な疾走感を生み出しています。
実際の事件に基づいているため、イギリスでは既に結末まで知っている人もいたはず。でもジム・ブロードベントとヘレン・ミレンの演技で、全く飽きさせません。特にドロシー・バントンを演じたミレンの振る舞いは、観客の感情そのままを反映していて、とても笑え、そしてはらはらさせられます。
演技以外にもロンドンの街並み、風景の美しさは見事で、特に緑色の使い方が非常に印象的です。ドアや壁などを見ているだけでも全く見飽きない作品となっています。原題は盗まれた絵画『ウェリントン公爵』を意味する"The Duke"と少々素っ気ないため、日本語タイトルの工夫が際立ちます。
なお、絵画は1961年に盗まれ、1965年に見つかりますが、盗難翌年に公開された『007/ドクター・ノオ』に、ドクター・ノオが盗んだという設定でこの絵画が登場します。現在進行形の事件を作中に入れ込むという、なかなか際どいユーモアだったんですね。
何気に『THE BATMAN バットマン』とほぼ丸かぶり、1960年代の英国に巣食う悪き風潮に敢然と立ち向かう家族の物語
愛される泥棒
優しい気持ちに溢れた作品
ウェリントン侯爵を描いたゴヤの絵画(ナショナル・ギャラリー所蔵)の盗難事件に基づくロジャー・ミッシェル監督作品。
家族を愛する老人夫婦(ジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン)たちのホームドラマであり、著名絵画盗難という事件映画であり、楽しい法廷シーンなどを描いたコメディ映画である。
全体的に優しい気持ちに溢れた作品になっているので、観終わって幸せな気持ちになる映画(^_^)
また、『007/ドクター・ノオ』のワンシーンでこの絵が映されるのは、この絵画盗難事件(1961年)が「ドクター・ノオ公開当時」(1962年)に英国で話題となっていたことを物語る。
試写会の上映後のトークショーで「盗まれた絵画をゴヤが描いた頃の話、実際にこの絵が盗難された話など…」を初めて知って、「やはり絵画の背景など、様々なことを知っておくと面白いんだなぁ~」と思った。
私などは一般人であり、映画評論家などではないが、映画ライターなど映画に関連する人達は「色んな角度から映画を観ること」が求められる大変な仕事だと思う。
イギリス映画の良さ満喫
完璧。
優しい泥棒の意味
タイプライターの音と劇中曲が重なりあう軽快な始まり。なにか面白いことが起きそうな予感を起こさせる。
主人公はとってもユーモアに溢れていて、お決まりのように家族は振り回されるんだけど、息子の父親思いな部分がおだやかな気持ちにさせてくれる。
裁判での主人公のユーモアはこの映画の見所でもあります。事件の真相を知ったとき、優しい泥棒の本当の意味が解りました。どちらの側面から見ても優しいんです。
思わずほろりとさせられる場面もありました。
本当の優しさって連鎖する。
世の中捨てたもんじゃないなって気持ちになった。
大どんでん返しっていうわけでもないし、ダイナミックな演出はしてないのに心地よい爽快感。主人公、弁護士共に素敵なセリフがいっぱいあって裁判のシーンは何度でも観たい。
ヘレンミレンとの小気味良く踊り出すシーンも好き。日本映画にはない、映画のこういうワンシーン大好きです。
「ほんわかした」おじいちゃん泥棒の話、ではありません!
予告を見ての印象と違った、芯の通った社会派ドラマ。予想より見応えがあった。時代の空気と社会問題と、泣けてくる家族愛がぎゅっと詰まっていて、英国人の達者な皮肉のスパイスの効いた言葉の応酬も楽しめた。ソフトタイプのケン・ローチ作品みたいな、、、。
個人的にゴヤとの出会いといえば70年代に「裸のマハ」が来日した時だったので、さすがに生まれる前にこんな事件があったとは知らなかった。ネット社会だったら世界中から桁違いの懸賞金が集まりそうですね。
息子ジャッキー役のフィオん・ホワイトヘッドくん、とてもよかった。いい息子だ。ちょっとご両親との年の差ありすぎのように見受けられたけど。
実話ですので、エンドロール前の「その後のエピソード」まで必見です。
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