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鬼が笑う : 特集

2022年6月13日更新

【問題作】「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ミスト」
に連なる“トラウマ映画”!? 極端に重たい感情に
襲われる邦画を、映画.com編集部が発見&レビュー!

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映画好きなら一度は経験したことがあるはずだ。観終わった後、ぐるぐると頭のなかで残響し、しばらく考え続けてしまうような作品に出合うこと……。

そんな体験が味わえる作品を、映画.com編集部が発掘してきた。タイトルは「鬼が笑う」(6月17日に公開)、脳裏に焼き付いて離れない強烈な一作。例えるなら「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ミスト」などと同様の、“トラウマ映画”といっても過言ではないほどだった。

主人公は、母と妹を守るために父を殺した青年。舞台は、外国人技能実習生を搾取し、いじめ抜いているスクラップ工場――。

あなたはどんな物語を想像するだろうか? 「鬼が笑う」の衝撃を、あらすじ、キャスト、レビュー、解説を交えてここに刻もう。


【予告編】

まったく救われない展開…しかし希望が残るラスト…
あなたはこの“トラウマ映画”をどう受け止める――?

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実際に鑑賞してきた映画.com編集者が、本作の見どころをレビューする。まずは物語からご紹介していこう。


[物語]父を殺した。母と妹を守るため… 社会復帰した男を待っていたのは“現実”だった

主人公・石川一馬(半田周平)は父の暴力から母と妹を守るため、父を殺してしまった過去を持つ。現在、更生保護施設で暮らしながら社会復帰を目指すが、社会からは「人殺し」と非難され、生きる希望を失っている。

ある日、一馬は職場のスクラップ工場で、外国人労働者へのイジメに巻き込まれてしまう。周囲が目を背けるなか、中国人労働者の劉(梅田誠弘)だけがイジメを止めに入る。そんな劉の姿に目を覚まされた一馬は、劉との交流を通し、自分の望む幸せを掴むべく立ち上がるが……。

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[観とけ、この邦画]映画.com編集部が“発見”、結末に声を失った“問題作”

監督・脚本は、処女作「老人ファーム」の独自の世界観が高く評価された兄弟映画製作チーム「Mino Bros.」(兄・三野龍一が監督、弟・三野和比古が脚本)。テーマとなるのは、社会問題である外国人技能実習生への搾取や、立場を利用した卑劣なイジメ、そして差別と偏見が引き起こす陰惨な出来事だ。

鑑賞後感を一言でいえば、「救われない……」だった。間違っても「スカッと爽やか」なんてことにはならず、腹の中がドス黒くなるような感覚に苛まれる。端的にいえば、強烈に嫌な気持ちになるのだ。

種類は違うが“トラウマ映画”と名高い「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ミスト」「ヘレディタリー 継承」、漫画「タコピーの原罪」などを体感した時と同様の感情に支配される。そしてラストシーンは、声を失うほどの“劇薬的”ショックから逃げられない。観とけ、この邦画――衝撃的な124分を過ごす準備はできているか?

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なお主演は、前作「老人ファーム」に続き半田周平が担い、罪を許されずのたうち回る男の“魂の苦しみ”を、鬼気迫る熱量で体現。ほか梅田誠弘、赤間麻里子、坂田聡、大谷麻衣、岡田義徳ら、魅力的な俳優陣が脇を固め、布陣に隙はない。


[展開がエグい]“善いこと”をするたび、絶望が降りかかる…“生半可な希望”を待つと危ない――

ギリシャ悲劇の登場人物の多くは、自身の欠点ではなく、皮肉なことにむしろ美徳によって大きな悲劇に飲み込まれていく。本作「鬼が笑う」の主人公・一馬も、優しさゆえに他人を救おうと行動したことで、運命の歯車が大きく狂っていく……ここに、本作の凄まじさが詰まっているのだ。

一馬は母と妹を守るため殺人を犯した。にもかかわらず、母と妹からは絶縁状態となり、「二度と顔を見せないで」と毛嫌いされている。

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職場のスクラップ工場では、自分よりも年下のロン毛男に「殺人鬼くん」などとあだ名され、周囲の軽蔑の眼差しが突き刺さる。

工場の社長(岡田義徳)も、フェアな善人のフリをしたクズそのもの。外国人技能実習生に満足な待遇も与えずに“金づる”と利用し、さらに一馬や実習生同士の対立を煽り心理的に支配している。

そして更生保護施設の職員たち。一馬らに「更生のためサポートする」とにこやかに接してくれるが、笑顔とは裏腹な本心が透けて見える。

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戻るべき家族も失い、職場や施設にも居場所はない。泥の底で息をひそめるような毎日で、一馬は唯一、劉さんと話している時だけ魂の平穏を感じる。しかし……一馬が善きことを行えば行うほど、逆に心折れるような悲劇が降り掛かってくる……。

繰り返しになるが、物語展開のエグみが半端ではない。主人公・一馬にだけではなく、我々観客にも濃い絶望を味わわせようと、虎視眈々とシーンを積み重ねているようだ。クライマックスは壮絶そのもの。“現実”という名の抜群に切れ味の鋭い刀が、こちらの「こうなってほしい」という希望や願望を豪快に切り裂きながら、エンドロールまで真っ直ぐに駆け抜けていく……。

とはいえ、ラストシーンは希望か絶望か、観る人によって解釈が分かれる素晴らしい場面に仕上がっている。悲劇を経た人物は、人間的な深みを獲得し、良きにつけ悪しきにつけ成長を果たす。この記事を読むあなたは、果たして何を感じるだろうか? それもまた、トラウマ映画の醍醐味である。

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【特別映像】岡田義徳演じる社長が超絶ブラックでクズすぎる…

[海外の評価も高い]各国映画祭がこぞって上映 あなたはいつ、結末を見届けるか?

品質も“生半可ではない”どころか、自信をもって“一級品”と言える完成度。技術や計算はもちろん抜かりないが、それよりも「魂」や「全身全霊」という言葉がよく似合う渾身作なだけに、その思いは日本のみならず世界中の映画人に衝撃を与えたようだ。

その証拠に、海外映画祭で数多くの実績を残している。アメリカの第12回リッチモンド国際映画祭ではオフィシャル・セレクション(メインコンペティション)にノミネートされ、第26回ソフィア国際映画祭(ブルガリア)ではインターナショナル・コンペティション部門に選出。さらに第25回タリン ブラックナイト映画祭(エストニア)でも、オフィシャル・セレクションに選出され、高く評価された。

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監督・脚本の「Mino Bros.」は、私たち観客に向けてこんなコメントを寄せている。「あなたの胸の中に芽生えたものに、僕たちは興味が尽きません」。

さて、あなたはいつ、この結末を見届けるだろうか。


【あの人もこの人も“唸った”】各界の著名人絶賛…!
「長い間、水のなかに潜るよう」「惹かれてしまう」

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映画.com編集者だけでなく、各界の著名人も興奮のコメントを寄せている。ここに一部を抜粋するので、その熱量を感じてもらえればと思う。


●松崎健夫(映画評論家)

処女作『老人ファーム』では、自主映画で取り上げられることの少ないテーマを手加減なく描き、ステレオタイプの向こう側にある社会の問題を見事に炙り出していた。
そんなMinoBros.の精神が、今作にも漲っている。多角的な視点から描き出された、現代社会の複雑な問題。それはいっけんすると、“個々の問題”でしかないと思わせるのだが、
実は各々の事象が密接に繋がっているのだと描く構成や設定、人物配置も見事だ。


●國實瑞惠(鈍牛倶楽部代表プロデューサー)

「寄る辺なき者たち
それは今、隣で起きていることかもしれないもう見て見ぬ振りは出来ない」

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●戸田彬弘(映画監督)

以前から本当に尊敬している俳優・半田周平さんが主演。滅多にお目にかかれない人間性と才能をお持ちの方です。社会性ある作品で命を削って制作されたのが分かる。
こういう意欲的な映画を是非映画館で観て欲しい。半田さんと梅田さん、素晴らしい。


●小路紘史(映画監督)

凄い映画でした。半田周平さん、梅田誠弘さんが画面に映る度に胸がドキドキして心が躍り、
目が釘付けになりました。それを作り上げたのはサポートするキャスト全員の熱量と監督、スタッフの気合だと思います。久しぶりに独特の匂い立つ映画を見ました。


●藤元明緒(映画監督)

徹底的に理不尽な世界で渇望される正義が血飛沫と共に脈打つ映画。途中、直視できずに目をつむってしまいました。

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●森岡龍(俳優/映画監督)

長い時間、水の中に潜っているような、とても息苦しい「受難」の映画だ。この、救いようのない息苦しさこそが、この映画の最大の特徴である。


●立石晴香(俳優)

主人公だけでなく加害者に見える方にも癒されない過去やきっかけがある。主人公がそうならざるを得なかったように
それぞれのキャラクターの人生の背景を思念せずにはいられませんでした。
格差や社会問題という表面的な言葉ではなく深く人の心について考えさせられました。


●山岸謙太郎(映画監督

この映画に惹かれてしまうのは、世の中の理不尽さを知りながら見て見ぬ振りをし、
ふわふわと生きている自分への戒めなのだろうか。
キャスト・スタッフのクオリティが高くとても丁寧に作られた作品だからこそ密度の高い重く暗い作品です。
だからこそ、そこに指す一筋の光がとても眩しく日常生活では
見逃してしまいそうなほのかな光すら愛おしく感じます。
自分たちの幸せを優先するあまり、
私達はこういった世の中の理不尽さに蓋をしているのではないかと考えさせられる作品です。

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なお、このたびキャスト・スタッフが登壇する舞台挨拶の開催が決定。6月17~22日にかけて、東京、愛知、大阪、兵庫で実施される。

>>詳細は公式サイトでチェック!

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