やがて海へと届くのレビュー・感想・評価
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美化しすぎ
邦画に、というか日本にありがちな死者を必要以上に美化する風潮全開で苦手でした。
主人公の真奈が大学のうぇーい系の先輩に飲まされてトイレの洗面所で吐いてるのが引いた・・普通個室いくでしょ。
まあ、後述する気持ち悪いシーンのためだとは思いますが迷惑行為すぎる。
それを後に親友になるすみれが介抱して真奈の喉に指つっこんで吐かせるのもとても気持ち悪いし、なによりすごい上品に吐いてるんですよ、けほっけほっとか(笑)
現実は個室に入ってオロロロロロロロロロオエッ! ゲボッ!と死ぬ思いで吐いて便座にぐったりしながら「ああ、便座のあったかさがしみる・・」ですよ、美化しすぎ。
真奈の勤務する店の店長が途中謎の自殺をするのは??でしたが、まあそれは良いとして、故店長が店で流していたCDを邪魔だから処分して効率よくいこうと新店長が真奈に言うシーンがあるんですが、あーやばいここで慕っていた店長の私物を邪魔とかいうなああああきいいいいとか真奈が邦画あるあるの癇癪起こしそうな雰囲気が出たので、そうなったらここで映画鑑賞ストップだわと思っていましたが、幸い?にも普通に処分していたので唯一そこだけが良かったポイントでした。
エモーショナルな構成が見事
すみれが遠野と同棲を始める引っ越しの日、岸井ゆきの演じる真奈が目に涙を浮かべるシーンがいいと思った。このときはそれしか考えなかった。
真奈の想いが一気に形になったシーンで実にエモーショナルなのである。
この作品は、過去を回想する形で物語が進み、穴だらけのピースが埋まっていく。そして最後にすみれのパートが入り全てが明らかになる構成は見事。
最後のすみれのパートがくる前までは、すみれとはよくわからない、謎の女性に見えるのだ。
だからこそすみれの視点というのが観ていても抜け落ちる。真奈が主人公というのもあるが、謎の女性すみれのことなど考えないのだ。
最初に書いた真奈が涙を浮かべるシーン、カメラの手前にはすみれがいる。画面には映っていなくともすみれはいる。
観ている私たちが、真奈の涙に真奈の感情を読み取ったならば、同じように見ていたはずのすみれが何も思わないはずはないんだ。
自分の感情の最後の一歩を踏み出せないままちょっとした勘違いからすれ違っていく真奈とすみれ。
真奈の気持ちに気付いたとき、少しだけ手遅れで、それを再びやり直すにはまた時間がいる。その時間を作ろうとした旅先での不幸。
真奈とすみれの溝は、永遠に埋めることができなくなってしまった。時が止まってしまった。
すれ違ったままどうにもできず、残った真奈が真実を知れたのかどうか定かではないところも切ない。
ただ事実を受け入れ前に進むしかない。
きっと忘れないだろう
前情報を入れずに観てしまったので
3.11が話に絡んでくることを知らなかったので浜辺美波演じるすみれが何故いなくなってしまったのか考えながら見ていて
理由がわかってくると3人の関係から消えたのでは無く本当にある日突然もう会えなくなってしまったということが
とてつもなくやりきれない気持ちになってしまって
これは岸井ゆきの演じる真奈のように気持ちの落としどころがわからず
答えが出ないなと思ってしまった
原作では震災で帰ってこなくなった…とあらすじが始まるが
映画ではアニメーションから始まり
あのアニメーションも最初は何も知らなかったので美しいけど何処かこわいアニメーションだなと思ってたけど
後半流れたアニメーションは理解していたので恐さの理由はそういうことかと思いながらも自然に帰っていくそれをみて
少し安心を覚えた。
ある程度知った上で見るべきだったのか
知らずに見るべきだったのかはわからないし
見た側で全然感想は違うであろう落としどころだったであろう映画だったけど
たまたま映画ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌を見ていて、それを引きずっている事もあり泣いてしまったし、真奈は過ごした大切な時間を忘れないだろうと感じました
ボクはこの映画好きです
すみれを探す《心の旅》
すみれってどんな子だったんだろう?
“普通とは違っていた?“
水をすくっても指の隙間からこぼれ落ちる。
すみれは水のようにすくえない。
不思議な映画でした。
分かったようでも、次の瞬間もう分からなくなる。
「喪失にから再生」
多分テーマは、そう。
でも一方で、
すみれを探す映画でもあると思う。
自分(私)は、非常に現実的な人間(リアリスト)なので、
ミステリーを読むように、
ミステリー映画のように、観るしか方法がみつからないです。
真奈ははっきりと口に出しています。
「親友が津波で、帰って来ないのです、
「一人旅が好きで、あの辺りに出かけたことは、分かっています」
冒頭のアニメーション
カーキ色のブルゾンにジーンズ。
赤いスニーカーの少年。
海に足をつけて、どんどん深みに進んで行きます。
そして、実写に変わって、
すみれの喪失に苦しむ真奈の描写があり、
真奈とすみれの出会い、
大学の同好会の飲み会。
真奈が無理して飲んだビールに悪酔い。
すみれはそんな真奈を介抱してくれる。
機転も効いて頼もしくてミステリアスなすみれ。
ある夜、母親と喧嘩して家を出て、
ずぶ濡れの子猫みたいに真奈の部屋に住み着いてしまう。
真奈が「かけがえのない彼の存在」を匂わせた後、
すみれは遠野(杉野遥亮)に、
『私たち一緒に住まない?』と言って、
真奈の部屋を去っていく。
そしてある日、一人旅に出かけて、
それきり、
5年も消息が分からない。
遠野とすみれの母親は、葬式を終えて、
すみれが死んだものとして、
アパートを引き払ったり、形見分けをはじめる。
それが残された人の当たり前の生き方、
真奈はどうしてすみれが、ふっと帰って来る気がする。
死んだことにする事が、許せない。
大学を卒業してレストランで働く真奈は、
すみれを失った悲しみから
抜け出せないでいる。
何度も訪れたと言う「福島」に国木田(中崎敏)と
ドライブで出かける。
そして3.11で家族の戻らない人々の話を聞く。
(今でも遺骨を探す人々がいます)
終盤で、
すみれの側から、振り返るパート。
すみれが遠野の元へ去った理由、それは
真奈が仄めかした彼氏の存在にあるのではないでしょうか?
2人が話した最後の日。
バス停ですみれは真奈に、
「真奈は自分で思っているよりずうっと強い人だよ」
と、言い残す。
そして一人旅に出かけます。
ラストのアニメーションに続きます。
岸井ゆきのさんの哀しみを背負う佇まい。
浜辺美波さんの、女神のようで神秘的とも言える美しさ。
海はあまりに大きく、
強くて、
人を呑み込む
海の底知れなさ、
人は抗うことが、
出来ない
《翌朝 2度目の鑑賞》
冒頭のアニメーションをみてドキッとした。
もしかして、すみれは男の子になりたい人、
だったのかも?
髪が最初のロングから、ボブになり、
ショートカットに、
「昔からその髪でなかったのが、不思議な位、」
服装もフェミニンなワンピースから、
ラストの駅のベンチに座ってるすみれは、
カーキ色のブルゾンに、赤のスニーカー、
すみれは男の子になりたかったの?
そうして真奈の恋人になりたかった?
そのビデオカメラには、知らなかっな彼女の
秘密が残されていた・・
(そう映画解説には書いてある)
真奈はすみれを親友として好きだった。
しかし
すみれは真奈が考えてる以上に真奈が好き。
恋人として好きだった。
私が感じたすみれの秘密って、
そんな気がする。
すみれは男の子に生まれて、真奈の恋人になれたら、
良かったね。
福島から帰った真奈は吹っ切れたように言う。
「今日の天気は晴れ」
すずめの戸締りと同様の隠匿があります
青春の1ページとして悪くない作品だったと思います。
見た時の心の状況で評価が変わりそうな感じです。
雰囲気だけで結末まで繋ぎ切ったことには感心します。
これもまた震災が生んだ作品。
皮肉なことですが、人生観が変わるほどの衝撃を受けた人は多く、それは多くの創作の原動力にもなりました。
これも震災を扱った作品であることを隠匿していましたが、騒ぎにならなかったのは原作付きであることと、残念な興行収入だったからでしょうか。
「人の死」とは
この作品では、大切な親友のすみれが震災で帰らぬ人となった現実を受け入れられず行き場のない喪失感に襲われながらも、周りの人々がすみれの死を受け入れていることに深い憤りと悲しみを覚える真奈の視点。後半では真奈の知らないすみれの最期までの視点が描かれています。
大切な人の死を受け入れることは誰にとっても簡単なことではありません。確証のない死は余計に、まだどこかで生きていると信じたくなります。
私も実際に東日本大震災を経験した身として「帰ってこない=死」だと受け入れることは表現しようのない悲しみだと思いました。
けれどどんなに悲しくとも、その大切な誰かは残された人たちの思い出の中で生き続けています。
何を思い、どう考えるかは人それぞれ
どんなに考えても決してわからない人間の内面を描いた物語であると同時に、地震(津波)が大きく関わる作品となっている。また、真実が直接描かれていないため、鑑賞者の解釈に委ねる部分が多い。テーマが難しく様々なことを考えさせられる作品だと感じた。
真奈(岸井ゆきの)とすみれ(浜辺美波)の意味深長な表情がとても良く、物語に大きな効果をもたらしていると感じた。
すみれは他人に明るく振る舞うことができるため、他人からすると社交的な性格のように感じる。しかし、他人に合わせる(チューニングする)ことで自分の想いをあまり伝えられずに気疲れしてしまうこともあるのかなと考えた。また、「やりたいことがあっていいな」や「どっかに行きたいとも思わない」というすみれのセリフ等から、すみれは心に闇のようなものを抱えて生きているようにも感じた。
「1人の人間が行方不明であること」や、「1人の人間が自殺したこと」に対して、関係性(親友、家族、恋仲)やその人間の印象(頼りになる上司、過度な八方美人な上司)によって事の重大さ、感心の度合いは全然異なるのだなと感じた。
(よそから来た人間が新しく店長に就任するシーンにおいて)組織から1人の人間がいなくなったところで、組織には影響があまり無いことは分かるが、「1人いなくてもなんとかなっちゃう」というまなの言葉はとても哀しかった。
個人的に、「怖いけど生きてる」「みんな知らないうちにいろんなこと押し付けてる」「みんな傲慢」「自分のことを守るのに必死」「ムダなことを減らしていく」「自分が思っているよりずっと強い人だよ」という言葉が印象に残った。
想像してものと違った…
何を言いたいのか、何を伝えたいのかがわからない。
真奈とすみれの友情あったの?
真奈がすみれとの強い思いれがある表現があるわけでも、心に残る思い出があるわけでもなく、2人の関係性が浅くしか表現されてない。
すみれがいなくなった理由も後のほうで分かるけど、そこまで引っ張る必要は無かったのではないかと。
震災だからなのか。
被災者のインタビューって必要だったのか?
前後のアニメーションも必要だったのか?
すみれのワンピースやネコのポーチなどの小物はなんだったのだろうか?
モヤモヤ、スッキリしない、消化不良、不完全燃焼というような感じになりました。
一部と二部のつもりで観るべきだったか?
「私たちには、世界の片面しか見えていない」で始まった作品は、浜辺美波さん演じるすみれと岸井ゆきのさん演じる真奈の絡み合いが、もどかしくて優しかった。「もう片面」は性を越えた「愛の形」だろうと感じていました。
けれども作品は、自分と自分が愛する人や、身近な人間との理解・亀裂を追いながらも、急に大いなる鎮魂の話へと向かう。その唐突さが後に安堵に繋がったかと言えば、そうではなかった。
私的にあくまで私的に掘り下げるのだなと言う気持ちでいたもので、突き放され感が強烈でした。
小説の文脈がルポの文脈に変わり、また小説に戻るかに見せたものの、すぐにルポの姿になって終幕に至った訳です。
オープニングのアニメーションが、ストーリーを少し変えてエンディングにも現れる。哀しみはいくら幻想的に描いても哀しみのままだと呟いて、アニメーションは終わる。ここは素直に心に沁みました。
プロットのギクシャクはあったと思うけれど、自らを静かに閉じて生きる真奈の心身を開いた浜辺さんの清冽な妖しさに、私も心地がほぐれました。判らないけれども、何か不安だけども着いて行きたい。行く先は全てを受け入れてくれる広い場所……と言うことだったのでしょうか。
予告編の印象とは違ってた
予告編から受けた印象と違ってた。
2人の出逢いから始まり、現在の主人公の心情と過去の親友との断片的なエピソードが繰り返し描かれる。
周波数があったのか親友になる2人だが、行方不明になる親友の理由が途中まで描かれず、そこには彼女が抱える特別な深い意図があるもんだと思ってたんだけど違ってた。
親友が帰らぬ人となった悲しみには共感を覚えるのだが物語の流れとして居なくなった理由を隠す必要があったのか分からなかった。
そして誰しも彼女を失った悲しみを背負いながら生きようとしてるなか主人公の周りへの言動や態度にはあまり共感を持てなかった。
素敵な時間だがいくつかの消化不良が……
岸井ゆきのさんを見たくて見てきました。
その点では大満足。素敵な時間を過ごさせていただきました。
浜辺さん含めて、主演二人の距離感がよく、時間の経過と二人の関係性の変化もうまく描かれていたと思います。
ただし、物語のキーとなるカメラについて、なぜすみれが一人旅にもっていっていないのか……。後半のアニメーションパート後の回想シーンがやや冗長すぎるところなど、消化不良な要素もあります。
真奈とすみれのすれ違いももう少し補足が欲しかった。
非常に満足はしましたが、ちょっと気になる点があったのが残念です。
似た題材の「永遠の一分」の方が全体としての満足感は上ですね。
W主演女優の存在感
10年経って、やっと震災の海を映画にできた、というところか。
ともすれば強烈なトラウマを喚起してしまう津波の描写に、『進撃の巨人』アニメの初期シリーズを作っていたWit studioのアニメーションを使って、柔らかく幻想的なものに仕上げていたことがよかった。
岸井さんのリアリティ溢れる存在感。
親友以上、恋人未満の、恋心を抱いた同性パートナー(すみれ)をなくした喪失感の演技は凄まじかった。
特に明確に亡くなったとわかるわけではなく、どうやらその時に気仙沼を一人旅中で、行方不明になったため「生死不明」状態での、心をどう扱っていいかわからないもどかしさ。というあたりが素晴らしかった。
浜辺さんは、『咲 Saki』はよかったのに、その後『約束のネバーランド』『屍人荘の殺人』と原作つき実写映画の「ヅラ感強いアレ系」への出演が多かった印象ながら……
こちらもよかった。
本当はずっと岸井さん演じる真奈を好きな気持ちを押し殺している、というあたりの繊細な演技には引き付けられました。
タイトルなし
浜辺美波をマイナー風の作品に出すことにどんな狙いがあるのか見たくて劇場へ。浜辺美波は作品内でもネタにされるほど美しく、岸井ゆきのも浜辺美波も演技に過不足はございません。でもストーリー至上主義のマタゾウは星2個しかあげられません。
猫のポーチを拾われたときなぜ私のですと言えなかったのか。真奈のどこに惹かれたのか。なぜビデオカメラを旅行に持って行かなかったのか。なんで引っ越しを決めたのか。あのとき何を言い淀んだのか。鈍感なマタゾウにはすみれにまつわる謎解き要素を謎のままにしておく理由が全然わからない。(全部LGBTで説明する気なのか?)
最初と最後のアニメはすみれが海に取り込まれ、海岸に立つ真奈をみて成仏したという意味?ドキュメンタリー風の場面も蛍の出方もよく理解できない。
日常的な描写力は良く、積み重ねで現れるものもあるが、筋が理解できずマタゾウ的には高評価がつけられなかった。
日本映画の悪いところが出てるかな
役者さんは頑張っていたと思いますが、
間間で入るBGMの微妙さや、何を伝えたいのか分からない話の構成(感動?震災で失ったことの辛さを乗り越える前向きな方向?)、更には終始薄暗い映像と雰囲気で陰鬱とした気分で途中からダレました。
原作未読ですが原作ファンだけが楽しめる映画なのかな?
それぞれの
受け止め方って勿論違いますからね。特に自分以外の人への感じ方は違います。主人公の二人でさえも、仲は良さそうですが、ビデオまで見返すとやはり考え方が違う様な気がしました。
一回では理解しがたいのか
浜辺美波さん、岸井ゆきのさん二人の関係性がどうなのか?
本格派女優の演技を楽しもうと観ました。二人の演技は流石に抜群でした。ストーリーも3.11の津波に絡め
考えさせられるものに仕上がってました。
最初のアニメや浜辺さんのポーチを岸井さんが拾ったとこなど伏線が散りばめられており回収しきれなかったので、一回では理解しがたいという評価に。
sea you
原作は未読です。キャストはかなり豪華ですが公開規模は小さめという不思議。内容を見てかなり納得しました。最近よく出会う「考えるな、感じろ」系の映画でした。どうも自分はこういう作品と相性が悪いみたいです。
真奈とすみれという親友同士の百合的な話かと思っていましたが、その様な要素は殆どなく、居場所を探していた2人が居心地の良い空間で過ごすスローな物語と思いきや、すみれがいなくなった後の話を軸に描かれていきます。まぁ遺品整理を親友たちがするのには違和感がありましたが。
3.11を絡めて物語を進めてくるとは思いませんでした。不快になる様な作りではないのですが、半分近い尺を使って新しい物語を展開していくのは胃に重たいものがきました。津波が関わるのは仕方ないとして、そこをアニメで表現したり、役者の顔をアップにして撮ったりとどこか大事な部分から逃げている様に思えてしまい乗れませんでした。
眠気と格闘する場面が多かったです。原作読み込んできます。
鑑賞日 4/4
鑑賞時間 11:50〜14:10
座席 G-4
テーマが不明
わたしの感受性や理解力に問題があるのかもしれないが、率直な感想は喪失感と消化不良。きっとこの監督のファン方には受けるのかな?という印象。場面の描写も重複していて進展が無く、ことごとく期待を裏切られた。後半の震災のインタビュー要ります?そもそも震災に絡めたところと話の展開に無理がある気がする。女優二人と関連した俳優さんの演技は良かった。
誰にも言わずにそっと抱きしめていたい良作
大学の新入生の時に出会った女子二人をメインにして、大事な人を亡くすことの喪失感を丁寧に描いた作品。
岸井ゆきの主演。
クラブ勧誘でごったがえすキャンパスで、湖谷真奈(岸井ゆきの)はネコ🐱のポーチを拾う。強引な歓遊に戸惑いながらも断れない真奈。そこへ割って入ってきたすみれ(浜辺美波)。
新入生歓迎コンパで真奈は先輩男子からえげつないセクハラとモラハラの洗礼を受ける。すみれが機転を利かせて助け、その日のうちに二人は仲良くなる。
かねてより母親と折り合いの悪いすみれ。雨の夜に突然真奈のところに来て、一年半居候したが、敦(杉野遥亮)と同棲することになって、出て行ったらしい。
卒後、ホテルのレストランのフロアマネージャーとして働いている真奈。京都の木工インテリア製作会社への入社を考えていたが、今の部屋(広いバルコニー付きの木造アパート)を離れたくないので、断念した真奈。優しさに溢れた真奈のインテリアと植栽のセンス。互いに過干渉はしないが、互いを尊重する暮らしにすみれも居心地がとても良かったであろう。
ある日、真奈は敦からすみれの遺品整理の連絡を受ける。
活動的なすみれは3.11の東日本大震災の時に海岸線の駅のホームにいて、被災したらしいのだ。
敦の部屋で猫のポーチを見つける真奈。すみれに介抱してもらったときの青いシュシュを入れて、大事にとっておいたものだった。
「いつの間にかなくなっていたものがあるんです」
敦と真奈の会話。すみれの死をどうしても受け入れたくない真奈の気持ちが痛い。
レストランの店長の楢原(光石研)は店のBGMにこだわりをもっていた。真奈は楢原から信頼されていたが、ある日、楢原から出勤が遅れると連絡を受ける。真奈にBGMの選択を託して、自宅の風呂で首吊り自殺してしまう。すみれに続き、楢原の死に落ち込んでいる真奈にコックの国木田(中崎敏)ば有給を使って気分転換することを勧める。真奈が選んだのは三陸への旅だった。心配し、同行する国木田。訪れた土地の建物のなかで、震災で亡くした家族の思い出を語りそれをビデオカメラで撮影する人々(中嶋朋子、新谷ゆづみら)。
「親友が帰ってこないんです」
伊藤母娘の民宿に泊めてもらい世話になる真奈。
民宿の娘はずみに海岸で祖母から習ったという子守り歌を歌ってもらう。漁に出たきり帰ってこない夫への気持ちを歌った唄だった。
10メートルを越える防潮堤に佇む真奈。
冒頭の水彩画のアニメと対をなす赤いスニーカーを履いたすみれが無人駅にただずむ姿。駅のホームのおばあちゃんも浜辺美波に勝るとも劣らない上品で綺麗な人だった。はずみのおばあちゃんだったのかもしれない。
一晩寝たあとでも、映画の美しいシーンがどんどん沸いて来て止まりませんでした。
真奈を大切にしてくれた人々。
ある日突然いなくなった人々。
不器用ながらも繊細で素朴な真奈を演じた岸井ゆきのにやられました。
幼げで、虚ろで、悲しげで、それでいて強く訴えて来る眼。涙。
すみれのビデオカメラを何度も再生するシーン。
真奈はすみれの目線で確認し、知らなかったすみれの一面を感じたい。
敦は死んだあとでもすみれの秘密を見てはいけないと思うと言う。
大切な人の撮った写真やビデオ映像は捨てられない。
ノマドランドでも父親の撮ったスライドを車の中で時々見る彼女のシーンが辛かったのを思い出しました。
追記
すみれが吐けない真奈に
「噛まないでね」と言って、口に手を入れて吐かせるシーン。
新入りの下戸の後輩がさんざん飲まされた挙げ句、キモち悪い上司に駅のトイレで無理やり口に手を突っ込まれて、吐け吐けと大きな声で攻められて、翌日、もう死にたいと言っていたのを思い出してしまいました。
浜辺美波さんの手だったら、彼もどんなにか幸せだったでしょう。
恋愛以上、友情以上
岸井ゆきのさん、人間のお芝居と思えないほど美しいタイミングで美しい涙をこぼす。アニメで描いたらそうなるのも分かるけど、生身の人間があんなふうに泣けるものなのか。北島マヤなのかな。
こういう名前のつかない感情をやりとりする女と女の映画ができたことがうれしい。異性に恋愛するまでの成長過程の幻覚などではなく、むしろ異性の恋人との明確で誰はばかることない関係よりも二人自身が二人だけで尊んでいる関係になっていて素敵だった。
私は、すみれから真奈への感情って、たぶん恋愛とはまたちょっと違うんだろうなと思う。同性の親友に恋して辛いじゃなくて、同性の親友のことが大好きすぎてずっと一緒にいたすぎるんだけど恋とも違うから困っているような、そういうふうに見えた。
恋人同士の関係性に落とし込めない感情だからこそ、結婚やら出産やらこの先のライフステージで容赦なく分かたれていくことを予感してしまって辛くなるっていう。キスは、キスするような関係になってでも一緒にいたい強い衝動があるだけで、キスがしたい衝動っていうわけじゃないんだろうなと思った。違うかなあ。
真奈からすみれへの感情は、すみれ以上に友情寄りに見える。もしも恋愛感情に近いものがもっと多く含まれていたら、敦に敦のことが嫌いだったと打ち明けられないと思う。誰かにすみれのことを話すときも、誰が相手でも何度でも「親友」と言い切って迷いが全然なかった。真奈のこの迷いなさ屈託のなさが、すみれを出て行かせたと思う。すれ違い切ないとも取れるけど、構成の異なる感情を抱き合っていても、お互いの心を温め合えていたところに私は希望を感じる。二人は素敵だったよ。
被災者が体験や思い出を語っていくシーンは、当事者じゃなくてよかったのだろうかと少し疑問。新谷ゆづみさん、主演映画でのお芝居も見ごたえがあったし、成功してほしい俳優さんだけど、この役は宮城や福島でオーディションして、当地の若い人にチャンスを配るほうがよかったんじゃないかという気もする。もうこの“当事者”問題、どこまでそうすべきなのか本当に難しいなと思うけど。
関係性また違うんだけど、これを気に入った人には『春原さんのうた』とか『君が世界のはじまり』とか薦めてみたい。あと漫画でジョージ朝倉の「ハッピーエンド」、志村貴子の「ラヴ・バズ」。
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