「すみれを探す《心の旅》」やがて海へと届く 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
すみれを探す《心の旅》
すみれってどんな子だったんだろう?
“普通とは違っていた?“
水をすくっても指の隙間からこぼれ落ちる。
すみれは水のようにすくえない。
不思議な映画でした。
分かったようでも、次の瞬間もう分からなくなる。
「喪失にから再生」
多分テーマは、そう。
でも一方で、
すみれを探す映画でもあると思う。
自分(私)は、非常に現実的な人間(リアリスト)なので、
ミステリーを読むように、
ミステリー映画のように、観るしか方法がみつからないです。
真奈ははっきりと口に出しています。
「親友が津波で、帰って来ないのです、
「一人旅が好きで、あの辺りに出かけたことは、分かっています」
冒頭のアニメーション
カーキ色のブルゾンにジーンズ。
赤いスニーカーの少年。
海に足をつけて、どんどん深みに進んで行きます。
そして、実写に変わって、
すみれの喪失に苦しむ真奈の描写があり、
真奈とすみれの出会い、
大学の同好会の飲み会。
真奈が無理して飲んだビールに悪酔い。
すみれはそんな真奈を介抱してくれる。
機転も効いて頼もしくてミステリアスなすみれ。
ある夜、母親と喧嘩して家を出て、
ずぶ濡れの子猫みたいに真奈の部屋に住み着いてしまう。
真奈が「かけがえのない彼の存在」を匂わせた後、
すみれは遠野(杉野遥亮)に、
『私たち一緒に住まない?』と言って、
真奈の部屋を去っていく。
そしてある日、一人旅に出かけて、
それきり、
5年も消息が分からない。
遠野とすみれの母親は、葬式を終えて、
すみれが死んだものとして、
アパートを引き払ったり、形見分けをはじめる。
それが残された人の当たり前の生き方、
真奈はどうしてすみれが、ふっと帰って来る気がする。
死んだことにする事が、許せない。
大学を卒業してレストランで働く真奈は、
すみれを失った悲しみから
抜け出せないでいる。
何度も訪れたと言う「福島」に国木田(中崎敏)と
ドライブで出かける。
そして3.11で家族の戻らない人々の話を聞く。
(今でも遺骨を探す人々がいます)
終盤で、
すみれの側から、振り返るパート。
すみれが遠野の元へ去った理由、それは
真奈が仄めかした彼氏の存在にあるのではないでしょうか?
2人が話した最後の日。
バス停ですみれは真奈に、
「真奈は自分で思っているよりずうっと強い人だよ」
と、言い残す。
そして一人旅に出かけます。
ラストのアニメーションに続きます。
岸井ゆきのさんの哀しみを背負う佇まい。
浜辺美波さんの、女神のようで神秘的とも言える美しさ。
海はあまりに大きく、
強くて、
人を呑み込む
海の底知れなさ、
人は抗うことが、
出来ない
《翌朝 2度目の鑑賞》
冒頭のアニメーションをみてドキッとした。
もしかして、すみれは男の子になりたい人、
だったのかも?
髪が最初のロングから、ボブになり、
ショートカットに、
「昔からその髪でなかったのが、不思議な位、」
服装もフェミニンなワンピースから、
ラストの駅のベンチに座ってるすみれは、
カーキ色のブルゾンに、赤のスニーカー、
すみれは男の子になりたかったの?
そうして真奈の恋人になりたかった?
そのビデオカメラには、知らなかっな彼女の
秘密が残されていた・・
(そう映画解説には書いてある)
真奈はすみれを親友として好きだった。
しかし
すみれは真奈が考えてる以上に真奈が好き。
恋人として好きだった。
私が感じたすみれの秘密って、
そんな気がする。
すみれは男の子に生まれて、真奈の恋人になれたら、
良かったね。
福島から帰った真奈は吹っ切れたように言う。
「今日の天気は晴れ」
喪失と再生なので、琥珀糖さんの感想は的を得ていると思います。
この作品のレビューを書くまで時間がかかりました。難しいのです。
冒頭の少年のような人。これを少年と明確に捉えることができるなんてすばらしい感性ですね。私はそこまで考えられませんでした。
あのアニメは、スミレの想いなのかもしれません。
スミレはとても意識的積極的に描かれていますが、本心、核心に関しては非常に繊細なのかもしれません。自分自身をわかっていながら嘘をつくというのか、確信が持てないのか…
おっしゃる通り、「生まれ変わり」を望んでいたのかもしれません。
白装束の老婆は、スミレの願いを聞いてくれた「何か」なのでしょう。
「振り返ってはいけない」という指示を無視したことで、老婆は白骨化し、菊の花は異常に成長します。
これは、マナに苦しみとなって降り注ぐのです。マナはその心の喪失を埋めるために考え続けます。
やがてフクシマの地にたどり着いたマナは、人々の話を聞きながら再生へ向けスタートします。
含みや象徴がいくつも散りばめられていて、かなり難解な作品ですが、妙に心に突き刺さりました。
なるほど~ですね~。
スミレと今でいうジェンダーを儚く描いているのは間違いないと思いました。
個人的にはどうしてもジェンダー的感覚がないので、ミステリアスな人間像として捉えてしまします。
しかし難解な作品でした。
レビュー大いに参考になります。
コメント、有り難うございました。
判断を見る側に任せるような、難しい映画でしたね。
まぁ私の場合、浜辺美波さん見たさに行ってるようなモノでしたが、3.11を題材にした作品としては良かったと思ってます。
共感とコメントを有り難うございます。琥珀糖さんの「すみれは男の子になりたい人、だったのかも?」に共感です。すみれの髪形は、次第に短くなっていたのですね。それは、彼女の気持ちの高まりを表していたのかもしれないです。
なお、私はドント・ルック・アップは観ていないはず 笑。でも無性に観たくなりました。いつの日にか。