劇場公開日 2022年4月1日

  • 予告編を見る

「ニライカナイ」やがて海へと届く 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ニライカナイ

2022年4月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

一人旅が好きで、5年前に旅に出たまま帰らなかったすみれ。
真奈は大学時代からの親友である彼女の不在を未だに受け入れられずにいた。
彼女を亡き者として扱う周りに違和感を覚えた真奈は、彼女のコミュニケーション手段の一つだったビデオカメラを通して知らなかったすみれの新たな一面を知って行く。

海は
 青くて
 深くて
 恐くて
 美しい
喪失と折り合いの映画としてはドライブ・マイ・カーよりも好きかもしれない。
前評判から正直期待値を下げていたが、想像以上に良かった。
自分は千葉の内陸住みなので、幸い周りでそういった被害はなかったけれど、11年経った今でもあの日のことは鮮明に思い出される。
自分は前情報で知っていたが、できる限りこの情報は知りたくなかった。
配慮の問題があるから難しいとは思うけれど…

何も残らなければ、そこにいたこともいなかったことも証明されない。
ただし、そこにいたという周りの人の中に残る記憶を、記録するものが遺物なんだなと。
それは、この作品におけるビデオカメラだったり音楽プレーヤーだったり。
処分することは簡単だが、それはその人の存在そのものを抹消することにも繋がりかねない。
1秒後生きているとも限らないこの人生、自分の人生は勿論だが、今この瞬間から一つひとつのモノやヒトを大切に生きていこうと思った。

ただ少し残念な点も。
ビデオカメラだからと言って震災の記録ビデオみたいなのは要らなかったように思う。
悪いけどこの映画にそれは求めてない。
楢原さんが最期に「好きな曲をかけなさい」と言ってたんだから、メタリカでもPUFFYでもかけて欲しかった。
助長に感じる部分も多かった。

死人に口なし。
ましてや行方不明の人の本当の想いなど他人には分からない。
ただ、すみれは真奈のすぐ近くにいた気がする。
中川監督の美しい映像と音楽が身に染みて、じんわりと優しさに包まれる良作だった。

✳︎そういえば岸井ゆきのと浜辺美波、名前までこの作品にぴったりで好演が光っていました。

唐揚げ