劇場公開日 2023年2月17日

「三者三様の情熱を抱いた若者たちの時限青春活劇...  JAZZと一体化し、紙一重の危うい結束の中で蒼い消失点へと突き抜けたクレイジー少年映画!!」BLUE GIANT O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5三者三様の情熱を抱いた若者たちの時限青春活劇...  JAZZと一体化し、紙一重の危うい結束の中で蒼い消失点へと突き抜けたクレイジー少年映画!!

2023年3月28日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『ビッグコミック』にて現在も連載中のジャズ漫画。なんとなくで人伝に原作の評判は聞いておりまして、てっきりTVアニメシリーズを経ての劇場版なのかと思いきや今回が初の映像化ということのようなのでそれなら入門編として入り易いかと鑑賞した次第です。
 結果、"その道に魅せられた主人公のサクセスストーリー"という外殻の部分は如何にもで使い古された感は有るものの、青年三人のジャズに対する熱意の捧げ方がまさに三者三様となっており、それが危ういところでギリギリ噛み合っているバランスが作中で語られているジャズセッションの期間限定の刹那性を物語るとともに、各人の青春の謳歌の有り方ともオーバーラップしており、非常に構成として見事であるとともに胸が熱くなるものがありました。
 それは例えば、学生時代の部活動に対するモチベーションで周囲の友人との開きや相違を感じた思春期の懐かしさ……"自分はどういうアプローチが一番物事に熱中出来るのか""より高みに挑み続けられる人はどういうモチベーションを持っているのか"等々、その後の人生で仕事に取り組む姿勢なり生き方なり、指針となるべきものを模索していたあの頃の感覚を呼び起こされるようでした。
 いずれ訪れる別れを予感しながらも有限の連帯の時間を噛み締める姿は実にベタながらも、それだけになんとも普遍的に観ている側の胸を締め付けるもので。
 中年の砌、こうした時間を仕事以外できちんと持ち続けることが最終的な人間的豊かさに繋がるのだろうととみに思った次第でございます。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)