「現代日本における最高の『お伽話』」BLUE GIANT 南野コミチさんの映画レビュー(感想・評価)
現代日本における最高の『お伽話』
映像作品(劇場で観る映画)とは必然的に時間に沿って前に進むものです。後戻りも一時停止もできない。
私は原作を読んでから劇場に足を運びました。
ですのでクライマックスを知ってから映画版を鑑賞いたしました。
劇中何度も前に進まないでくれ、止まってくれと、このままの時間が永遠に続いてくれと、そう願ってしまうほどに主人公たち三人の人間ドラマに熱いものがありました。
何度も目頭が熱くなるのを感じました。
この漫画、宮本大が主人公のようで実のところそうではありません。
宮本大は物語における主人公の条件である『葛藤』をほとんどしません。ただ真っ直ぐに進んでいくだけです。才能に溢れた『お伽噺≒女性神話』における姫の役割が与えられている
つまりこの映画においては宮本大よりもその周りにいるピアノとドラムの二人こそが真の主人公です。
二人の成長物語。
特にドラムの玉田の物語こそこの映画におけるメインのプロットといっても差し支えないのではないかと思うほどでした。
映画において『実際に耳に聞こえてしまう音楽』を扱うのはシナリオとは別の評価軸が生まれてしまうので、私はそもそも音楽映画自体あまり好きではないのですが、
しかし、この映画では人間ドラマの部分で音楽の評価に正当性を与えています。
感動。
暫定、今年ベストの映画です。
無条件にオススメできます。
可能ならば、原作を読まないで行った方が、もしかしたらいいかも、とは思いました。
コメントする