「BLUE GIANT」BLUE GIANT tyshiさんの映画レビュー(感想・評価)
BLUE GIANT
面白かった。涙するとはこういうことなのかと思ったほど、泣いた。泣けた。
しかしこの涙は、果たしてお話で泣いたのだろうか?それとも音楽に泣いたのだろうか?
僕が涙したのは、TAKE TWOのバーの店主の女性が最後と途中で流す涙。
それから、最後の3人の涙の演奏に、ついもらい泣き。
店主の女性のは、一瞬だけ過去の写真が映ることによって涙が出た。あそこで音楽が鳴っていたのか、なっていなかったのかは覚えていないが、少なからず店主の女性の気持ちに同情してしまった。共感してしまった。それは、彼女が我々観客と同じ立場にいるからではないだろうか。特に何もするわけではないが、陰で3人を見守り、ずっとその軌跡を客観的に見てきた彼女だからこそ共感できるのではないだろうか。あの涙の正体は、喜びの嬉し涙だ。彼らの成功に、彼らの挫折の経験に、喜びを感じずにはいられない。それは我々なのだ。
人の弱い部分が見えたか、どうか。グッとくるのは、玉田が「こんなバラバラでジャズできんのかよ!」って家を出て行くところ。バラバラになってしまうかもしれないという恐怖感と虚しさ、危うさ。それを引き起こしたのは、紛れもなく、玉田の心の奥の感情だ。「売れるための踏み台で、バンドは解散するものだ」という2人に対し、「俺は2人と一緒にやりたいんだ」という剥き出しの感情。生もの。危険な匂い。迂闊に触れてはいけないもの。
面白いのは、この弱い部分という面で言うとあまり主人公の大には見えないと言うことだ。雪祈と玉田にはそれぞれ悩み、苦労する場面が見える。ただ、大はまっすぐ、強く生きている。ただそれのみ。だが、この物語はそれでいいのかもしれない。大に対して、観客は絶対的な憧れを持つ。これは、雪祈や玉田もそうなのだ。彼のカリスマと才能に引っ張られて行く。観客も同じ。大のまっすぐな気持ちにやられる。憧れる。尊敬する。それも、面白さなのかもしれない。ファイトクラブのブラピなどもそうだ。しかし、僕の定義の中で必須ではないのだろう。
第2の条件といったところか。
謎があったかどうか。謎は特になかったように思う。原作を知っていたからかもしれないが、興味をそそるような謎はなかった。だからこそ、序盤が退屈に感じた。全部説明して、とんとん拍子で進んでいくから。例えば、雪祈の前情報をどこかで先に置いておく(誰かが雪祈の噂をしている。が、雪祈は一才劇中に出てこない)など。謎がなかった分、そこに面白さは半減したように思ったが、それでも楽しめるものだった。
この映画を一言でまとめると「泣ける」。音楽につられている部分がでかいだろうが、それでも泣ける。しかし、僕が今まで好きだと言ってきた映画が全て「泣ける」のかと言われたら微妙だ。だから「泣ける」の条件は第二候補行きになるだろう。
今の所
条件1、人の生の感情が見えるかどうか
条件2、その物語に謎はあるのか
第2候補
1、観客が憧れ、尊敬する人物の存在。
2、「泣ける」かどうか。
が、今の僕の「最高の映画」の条件だ。
これからもっといろんな映画に出会うだろうが、もっと研究していこうと思う。