「それぞれのフランス革命」デリシュ! 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれのフランス革命
革命前夜のフランスの田舎を舞台に、シャンフォール公爵に仕える料理番のマンスロンと、マンスロンに弟子入りした謎の女性ルイーズが繰り広げる料理と仇討と革命のお話でした。日本に例えるなら、明治維新直前の藩主と料理番、そしてその恋人を描いた時代劇というところでしょうか。
マンスロンは、公爵が催した貴族仲間との晩餐に、当時下等な食べ物とされていたらしいジャガイモを使った料理を出したことから不興を買って首になるところから物語は始まりましたが、故郷に戻って塞ぎ込んでいるマンスロンには、まさに艱難辛苦が襲い掛かります。そうした茨の道を、弟子であるルイーズや息子とともに乗り切っていく展開は非常にドラマチックで面白かったです。
また、王政に対する不満が渦巻き、バスチーユ監獄襲撃に始まるフランス革命へと流れて行く時代背景が、登場人物たちの会話から分かるような創りになっていたのは秀逸でした。実際にルイ16世や三部会の様子が出て来なくても、明らかに時代が変わっていることを感じることが出来、また物語自体も言わば小さな革命を果たすべく進んでおり、心地良さを感じました。特に、物語の序盤で「私が(革命側に)加わったら大変なことになる」と言っていた公爵の執事が、最終盤で公爵を見限るところは、実に爽快でした。
こうした物語の主筋もさることながら、素材から調理までを映し出した調理シーンは、極上の料理番組を観るようだったし、紅葉から雪景色、そして初夏の新緑の風景へと変遷していく自然の景色は、マンスロン達の艱難辛苦を鏡のように映しだしているようでもあり、こういった演出が非常に印象的でした。
そういう訳で、意外なほどに面白い作品だったので、評価も★4としました。