「奇特さと静謐では覆い切れない平々凡々さ」LAMB ラム 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
奇特さと静謐では覆い切れない平々凡々さ
自然への軽率な冒涜が人間の理知の埒外にある自然(=超自然)によって断罪される、というのは文芸全般にお決まりのパターンだが、本作がそこから何か有効な差異を生み出せていたとは思えない。予想通りのことが予想通りに起きていき予想通りの結末を迎える。ビジュアルの奇特さと無駄に持続する静謐だけでは覆い切ることができないくらい平々凡々さ。
映像に関しても特筆すべき点はなく、アイスランドの原風景はのっぺりしたCGによって本来のざらついたテクスチャを奪われている。文芸チックな落ち着いた長回しが多い一方、アダのビジュアルを不自然なくらい出し渋ったりジャンプスケアのようにアダの父親を大写しで唐突に登場させたりと撮影・演出のトーンに統一性がない。しかもその統一性のなさが画面に不吉な違和や緊張をもたらすといったこともなく、単なる技術的瑕疵として露呈していただけという始末。ここまでつまらない、なおかつ心にも残らない映画も珍しい。
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