「じわじわと面白い時間がたくさんある映画」LAMB ラム 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
じわじわと面白い時間がたくさんある映画
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A24というブランド名で語られがちだが、A24は完成品の配給権を買ったのであって、むしろ作り手の独創的な野心で評価されるべきだと思う。とにかく、これは何の話なのかを観客に悟らせず、気がつけば当たり前のように可愛がられている羊人間アダと、ちょっといびつな家族が織りなす日常がいちいち面白い。
特に夫の弟絡みの、不穏なんだかほのぼのなんだかわからないエピソードが良い。サッカーで盛り上がる両親と叔父にピンとこないアダ、なんか80年代ノリのMVで踊りだした両親と叔父を見てうっすら疎外感を覚えるアダ。ああ、見ていてわりといい家族なんだけどなあと思いつつも終わりを予感していたら、いきなり飛んでくる銃弾。いったい何の時間だったのかと、褒め言葉として言いたい。
ただ、最後に登場するアレのデザインはちょっと陳腐というか、得体の知れないさが魅力だったのに、理屈でまとめに入られたような残念さはあった。逆に言えば、馬も羊も犬も猫も含めて、全体の8割くらいはずっと、じわりじわりと面白かった。
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