「いい邦題」君は行く先を知らない TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
いい邦題
英語題は『Hit the Road』。家族4人によるドライブでのロードムービーそのもののこと指しているかと思えば、語られる会話の内容と展開から、それは運転手をしている長男のこれから起こることについて言っているのだと解ります。とは言え、特に説明もないし、事情も詳しくない日本人には次男に対する『君は行く先を知らない』が「いい邦題」を付けていると感じました。
映画が始まって早々、無邪気なのに妙に大人びたことを言う次男が兎に角愛らしく面白く、悪さをしても憎めないいいキャラクターです。また、それに対する父親と母親がまたいいリアクションです。どこまで本気なのか真顔で平然と辛辣に返すも、ちゃんと愛と優しさを感じる対応が微笑ましく幸福感があります。
それなのに、時折見せるどこか不穏さや、多くを語らないまでもいかにも秘密めいたやり取りに、これが単にのどかなドライブでないことは判ります。
ふと気づく携帯電話の存在に(この時点では)過剰と思える反応からの処置や、「さっきから後をつけられている気がする」と急に後続車を気にしたり、また中盤では怪しさを隠し切れないバイクの登場人物など、邦題さながらに、家族の行く先が気になってしょうがなくなります。
さらに、家族たちそれぞれの表情にも気持ちが見え隠れします。運転しながら不意に涙する長男や、落ち着いていられず時折狼狽しつつも、息子には安心させるために愛情深く接する母親。また、終始平然と振る舞い続けるも、誰も見ていないところでば怒りの表情で一点を見つめる父親の顔は印象的です(公式サイトのCast紹介の写真でも使われています)。
正直、全ての事情が理解しきれていませんし、相変わらず考察はせずに映画評を書いている私。(私が思う)『Hit the Road』の本当の意味とその先のことについて、確かなことは親子が車で移動しながら過ごす1日に、家族ならではの遠慮のないやり取り込みで、とても深い愛情を感じることが出来ます。何より次男の存在感ですね。多分、長男にもこんな時代があったのでしょう。母親が運転をしながら涙するシーンは、自分も息子として母親にもっと愛を返さなきゃいけなかったな、と思わされました。なんて、自分の事はさておいても、最初から最後までてっぱんの愛らしさで癒してくれる次男(ヤラン・サルラク)、彼だけでこの作品を観る価値ありだと思います。それにしても、君はよくそんな歌知ってるねw(勿論、私もオリジナルは知りませんが、歌詞を見る限りでは子供が歌う歌じゃありませんw)