劇場公開日 2022年5月6日

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「困難な人生でも前向きに生きようとする者への応援歌」マイスモールランド tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5困難な人生でも前向きに生きようとする者への応援歌

2022年5月13日
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何も悪いことをしていないのに、進学も、恋愛も、将来の夢も、何もかも諦めざるを得なくなる。そんな理不尽な状況に追い込まれる少女の姿に、胸が締めつけられる。
主人公を悩ますのは、日本の難民認定制度と民族のアイデンティティーの問題だが、現実には、映画で描かれるより辛辣な外国人差別もあるに違いない。もっとも、悪意のない「外人さん」扱いが、意識的な差別よりも厄介であることが、きちんと描かれているところは秀逸である。
主人公の苦難を見ると、どうしても、難民を取り巻く制度や社会の不寛容さに憤りを覚えるが、作者が意図したのは、それを声高に非難することではないだろう。これは、「うまくいかない」人生であっても、前を向いて生きていこうとする者たちに寄り添い、応援する映画なのだと受け止めたい。
それにしても、フィクションだからこそ、かすかに希望の持てるラストにすることができ、それはそれで良いのだが、現実は、そんなに甘くはないだろうとも思えるのである。

tomato