劇場公開日 2022年8月26日 PROMOTION

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スワンソング : 特集

2022年8月22日更新

【観たい、良作】親友の“死化粧”のために旅に出る
泣いて笑って、笑って泣いて、心の底から喜び溢れる…
観れば人生の指針となる、静かな熱を帯びた【感動作】

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魂に染み入るような映画がやってきた。

8月26日から公開される「スワンソング」は、静かだがヒリつくような熱を帯びた、一筋縄ではいかない感動作だ。

引退した伝説的ヘアメイクドレッサーの主人公が、亡き親友に“最後のメイク(死化粧)”を施すため旅に出る。道中、主人公は人生を思い返す――。

あなたは本作から何を感じるだろうか? この記事では「スワンソング」の見どころと、鑑賞の手引きをご紹介する。


【予告編】それでも、人生は素晴らしい。

【見どころ①】ストーリーが“沁みる” 死化粧の
旅に出た“伝説のカリスマ”が辿り着く人生の答えとは

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スワンソングとは、アーティストの生前最後の作品・曲・演奏のことを指す。白鳥は死の間際、最も美しい声で歌うという伝説があるからだ。


[ストーリー]

パトリック・ピッツェンバーガー(ウド・キア)は、かつてヘアメイクドレッサーとして活躍し、「ミスター・パット」の異名を轟かせていた。ゲイとして生きてきた彼は、最愛のパートナーであるデビッドを早くにエイズで亡くし、現在は老人ホームでひっそりと暮らしている。

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そんなパットのもとに、思わぬ依頼が届く。それは元顧客で親友でもあったリタ(リンダ・エバンス)の遺言――彼女に死化粧を施してほしいというものだった。

リタのもとへ向かう旅のなかで、パットはさまざまなことを思い出す。すっかり忘れていた仕事への情熱や、わだかまりを残したまま他界したリタへの複雑な感情、そして自身の過去と現在について――。

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[持ち帰れる感情]人生はかくあるべき…心に柔らかに伝わる“熱気”

親友の死化粧のために旅に出る。抑えたトーンで描かれる物語は、観れば笑って泣けて、泣けて笑って、最後には人生の指針になるような“大切な感情”を与えてくれる。

そしてそのテーマは、眼差しの角度によって色づきを変える。老いと過去の栄光の話にも見えるし、高潔な魂を賛美するものにも思える。長い間、自分が培ってきたスキルが現代では化石になってしまったらどうするか、という物語にも感じられる。

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“想い”は受け継がれていくものだし、同時に捨て去られるもの。すぐに思い出せなくても、頭のどこかに確かに存在する記憶をパットがたどるさまは、深遠かつ壮大な“冒険”として描出されている。

人生は、パットのようにあるべきなのではないか――。くすっと笑わされた直後に突入するエンドロールを眺め、あなたはきっと、胸に宿る熱い感情を抱きしめるはずだ。


【見どころ②】キャスト・スタッフに“唸る”
実在した強烈キャラを活写…世界で最高級評価を獲得!

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映画の主人公“ミスター・パット”こと、パトリック・ピッツェンバーガーは、実在したスタイリストで、当時のクラブシーンで輝くドラァグクイーンたちのみならず、多くの金持ちの顧客を持ち、どんな客もその技術で美しく変身させることで知られる“伝説の美容師”。プロフェッショナルな手腕だけでなく、カリスマ的な人間的魅力も備えた人物だったようだ。

伝説の強烈キャラを世界の巨匠からひっぱりだこの超個性派ウド・キアが演じる……このキャスティングだけで、既に成功している作品であることに間違いない。


[主演“怪優”]ウド・キア、実在した人物を強烈に、ゴージャスに…集大成的名演!

ウド・キアは「処女の生血」のドラキュラ役はじめ、「サスペリア」「アイアンスカイ」といった異色作、そしてライナー・ベルナー・ファスビンダー、ラース・フォン・トリアーなど作家主義的な作品で、一度見たら忘れられない存在感を残す。

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久々の主演作となった今作では、長年のキャリアで異端の人物を演じ続けてきた怪優の本領発揮。その表情だけでなく、所作、セリフ回しと、“ミスター・パット”の強烈な個性を全身で表現し、誇り高く生きた老スタイリストの美学が、ワンシーンワンシーンから立ち上る。

その一方で、血の通った人間らしい普遍的な感情も伝わる名演技に、我々の心は揺さぶられるのだ。

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[監督]トッド・スティーブンス…自身の“人生の衝撃”を映画化→最高級の評価に

本国ではゲイカルチャーを描いた作品で定評があるスティーブンス監督。今回、記念すべき日本での初の劇場公開作となる本作は「急速に消えていくアメリカの“ゲイ文化”へのラブレター」だと公言している。

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スティーブンス監督が17歳の頃に、初めて足を踏み入れたゲイバーで、実際の“ミスター・パット”に出会う。その衝撃を「そこに彼がいた。ダンスフロアでキラキラ輝いている」「17歳の私にとって、パットは神のごとく輝いていた」と回想する。少年時代の監督の目に焼き付いた、優雅できらびやかな“美”をウド・キアに見事に体現させ、観る者は当時の空気まで追体験できる。

米映画批評サイト「ロッテン・トマト」で93%フレッシュ(22年8月2日時点)という満足度を獲得するのも納得の仕上がりだ。


【鑑賞の手引き】
あの作品が好きなら「スワンソング」も絶対気に入る!

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最後に、読者の皆様へ。本作から得られる感情をもっと想像してもらえるように、いくつかの類似作をピックアップしてみた。

「人生と死と生」を描いた衝撃作や、セクシャルマイノリティが題材の感動作など4作品だ。


●「PLAN 75」(2021)

直近の作品ではもっとも「スワンソング」と近い。“75歳以上が自ら生死を選択できる制度”が施行された近未来の日本を舞台に、その制度に翻弄される人々の行く末を描いた衝撃作。

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●「キンキーブーツ(2005)」

イギリス発の笑って泣ける感動コメディ。伝統はあるが倒産寸前の靴工場を継いだ優柔不断男が、街で偶然出会ったドラッグクイーンのローラとともに、セクシー・ブーツ(=キンキーブーツ)で一発逆転をかけて奮起する姿を描く。


●「ステージ・マザー」(2020)

明日の自分に勇気をくれる人間ドラマ。テキサスに住むごく普通の主婦メイベリンが、長い間疎遠だった息子の訃報を受け取る。息子はゲイバーを経営しており、遺言もなく死去したため、メイベリンがゲイバーを再建することになる……。

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●「プリシラ」(1995)

3人のドラァグクイーンの旅を描いたロードムービー。シドニーで暮らすミッチ、バーナデット、フェリシアは、オーストラリア中部のリゾート地でショーを行うため、おんぼろバスの“プリシラ号”に乗って3千キロの旅に出る。道中で様々な出会いやトラブルに遭遇しながら目的地を目指すが……。


以上、「スワンソング」特集記事をお届けした。泣いて笑って、笑って泣いて、心の底から喜び溢れ出る……人生の指針となる、静かな熱を帯びた感動作を、ぜひご覧いただきたいと思う。

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