母の聖戦のレビュー・感想・評価
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目には目を・・・
メキシコにて、誘拐された娘を取り戻す為に身代金を払うも娘は帰ってこず、警察も誰も助けてくれないことから、自ら犯罪組織を追うことを決意した母親の物語。
終始、陰鬱な雰囲気の狂おしい作品。
罪のない娘が攫われ、こちらもまた罪もない母親が苦しむ・・・う~ん、こんなことがあって良いハズは・・・。
そんなことを思っても、所謂誘拐ビジネスというやつは、メキシコにおいて年間何万件、実態はそれ以上にあるというのだから恐ろしいですね。
序盤から、誘拐ビジネスをする男達には途方もない怒りを覚える。そして頼れるものがいないと悟った母親が単身捜査に乗り出す姿は非常に見応えがある。針の穴程の小さな情報・希望から娘を探そうと動く姿は、まさに強き母の意志を感じる。。
悪者のアジトで見つかる数々のものには戦慄を覚える。こんな所に大切な人が・・・と思うと、それだけで苦しいですね。
また、メキシコの葬儀社の実態も酷いですね…。彼女も彼女で恐ろしい何かと闘っている。
味方の軍隊中尉も、相手が女性でも容赦がないですね。
まぁ、こんな恐ろしいことをするやつらに、生ぬるい正義なんかが役立つわけもなく…。まさに目には目を、といった手が必要になりますね。
そんな感じで、中盤まではゾクゾクとするような展開が続くものの、いよいよ物語が動くかと思った所からは、ブレーキを踏んだままアクセルも踏むような、どうにもテンポの良くない展開が続き・・・。
尺自体も130分越えのやや長めなのに、その先に辿り着くのがこういう終わらせ方とは、、、ワタクシとしてはもうちょっとストンと落ちるモノが欲しいと思ってしまいましたね。
メキシコって治安が悪いイメージはガッツリあるけど、それにしてもこんな誘拐ビジネスや麻薬カルテルや悪魔崇拝みたいな作品が殆どですよね。本当に怖すぎる。
映画としては、中盤まではかなりの傑作になる予感がしたものの、後半が少しダレてしまったのが残念。まぁでも、楽しむって感じの作品ではないし、リアリティを描いているわけなので、こうもなるのかな。
本当に、こんな思いをする家族が増えてほしくないと心から思わされた作品だった。
最愛の娘を取り戻すため、涙を拭い怒りを燃やせ... 誘拐ビジネスの蔓延する社会の狂った常識に与せず娘を追い続けた母が冷厳な現実に対峙する!
だらしない夫と別居中で年頃の娘と慎ましく暮らす平凡な中年女性が、人知れず娘を誘拐されたことで全てを失い娘を取り戻すべく修羅と化していくショッキングなドラマ。
誘拐がビジネスとして確立してしまって日常の延長線上に存在するメキシコ北部の狂った市民生活を淡々と白日の下に曝していく、実話ベースの物語です。
派手派手しい一大非合法カルテルや公権力の腐敗といった映画的な誇張は極力抑えられており、それだけに家族を奪われた親族の慟哭と無念、諦めに至るまでリアルな日常の一部として映し出されている有り様には純然たる恐怖を禁じ得ません。
最初から最後までただひたすらに重く張り詰めた悪夢のような現実を映し出す作品でしたが、誇張も抑制も無いがゆえに有無を言わさず此方に叩き付けるような迫力が有りました。
娘を誘拐によって奪われた過酷な現実と闘い続けた母親と、頑なに諦めない彼女をまるで聞き分けの無い幼児のように扱う周囲の人々、はたして狂っているのはどちらなのか...?
【歪んだ社会構造の一端を目撃】
娘をマフィアに誘拐されて、狼狽えてる間に身代金を奪われるも娘は戻らず。警察に訴えるが邪険にされまともに取り扱ってもらえず、別居中の腰抜け腑抜けの夫も全く以て頼りにならない追い詰められた状況下、軍に直談判を決行、自身の行動力で解決への接点を見出し娘の居処に迫る。
主演のアルセリア・ラミレスがごく普通の市井のおばちゃん顔から、修羅の如き鬼気迫る表情へと変貌してく様がとにかく秀逸。音楽を極力排したドキュメントタッチの演出も臨場感が高まって素晴らしい。
貧困が故に日常茶飯事に起こる、誘拐や殺人を始めとした凶悪事件を切り口に、歪んだ社会構造への強烈なメッセージをぶつけてくる作品。昨年鑑賞の『息子の面影』『ニューオーダー』同様、加害者が加害者に至る背景にも割り切れなさと歯痒さを感じざる得ない。
ラストシーンは観客に委ねられる。母親がふと顔を上げ表情を強張らせた先には、一旦は身元不明死体とDNA鑑定で一致したと思われた娘が戻ってきてくれたのか?それともマフィアの報復が迫ったのか⁇それとも⁉︎
人間不信に。
確かにメキシコ治安悪し。大体の多くの国が治安悪く薬物、誘拐、殺人等々横行しているのだろう。初めから途中まではメキシコの日常に困惑していたが。後半、中弛みになったのかいつの間にかうとうと。結局どぅなったのかわからぬままエンドロールに。あ~あ。
善悪ってどこにあるの?
アンビリバボーかなんか別の番組だったか…実話として取り上げられてましたね。報復を恐れて警察に通報せず、かと言って身代金を支払っても戻ってこない。少し前までは警察も報復を恐れて何も出来ない。今は一応動いてくれるのか?軍だから動いたのか?
この手の誘拐ものや事件ものが多いですね、メキシコは。そして、ほぼ母親が諦めず探し出す。そこは万国共通で母は強し。
決着はすれど、結末は見えず
BGMはなく、戦闘の混乱ではカメラがブレ、ドローンなどの大掛かりな撮影もなさそう。
徹底して派手な演出を避け、現実感を与えるつくりに、制作者の想いを感じる。
流れとしては、主人公が手がかりを見つけ、軍の協力を得て追い詰め、それでも娘が見つからない、の繰り返し。
飽きがくるという意見も分かるが、これが果のない闘いに疲弊しつつ、それでも折れない母親像を引き立てているように思う。
結局はたった一本の骨で納得するしかない無力さを以て物語は終わる。
捕まった男の言葉の真偽も、黒幕の正体も、この『誘拐ビジネス』の闇はまったく明かされない。
“死”という真実でシエロの物語は区切りを迎えるが、何も終わらないし、何も解決しない。
実際の事件もそうなのだろう。
“物語”を描く作品なら失格だが、恐らくこれは“真実”を描く作品だ。
エンターテインメントではないが、意義のある作品だと感じる。
メキシコの闇の深さをあらたて実感する
娘さんの救出どころか真犯人の逮捕すらできずに、庶民はただただ耐えるしかないのか。折角味方になって主人公の力になっていた将校さんまで異動させられてしまうとは。無力一杯の映画だった。
だからメキシコ嫌い
2023年劇場鑑賞15本目。
金持ちでもなんでもない一般女性が娘を誘拐されて、頼りにならない警察や軍に見切りをつけて自分で探し出そうとする実話を元にした作品。
メキシコの治安が悪いのは知っていましたが、市民が犠牲になるのは流れ弾に当たる時くらいと思っていたら、ガッツリ犠牲になっているんですね。警察は完全に機能していなくて、軍ががんばっています。
いやそいつまだ情報持ってるよ!なんですぐ殺すん!
主人公の母親はモデルということで細部はかなり違うのでしょうが、こういう事は起きているのだろうと思うとやり切れないですね。
レイトショー 中尉がいないと 眠気勝つ
21:30からのレイトショーでみてきました!
ボーダーラインが好きだったので「やっぱメキシコやべえなぁ」とか思いながら前半楽しんでまして、
で軍隊を味方にして中尉がボコして処刑してくんでカタルシスを感じてたわけなんですが、
なんかここらへんからラストスパートかけないでテンポ悪くなりウトウトしてしまい、
「中尉は異動になりました。」
とか言うから最後の方はいかに寝ないかの己との戦いでした。
誰にも頼れない中、眠らないようストレッチをしたり、目薬を差したり、すでに氷が溶けた水しかない飲み物を飲んだり。
孤独な戦いは辛いなと主人公に共感しました。
この世は地獄か
メキシコでは実際に、このような誘拐ビジネスが横行しているのだと聞く。
その意味で本作は、一種の「実話」と言えるかもしれない。
モデルとなった「母親」もいるようで、
エンドロールの直前に、彼女への謝辞がクレジットされる。
誘拐された娘を取り戻すため、孤軍奮闘する母親の物語り。
身代金を支払ったにもかかわらず、子供は戻されず、
父親である夫は及び腰、加えて、地元警察は全くの非協力との
四面楚歌の状況のなか。
一市民にしか過ぎない母親が打てる手は限られ、
彼女には裏ルートへ繋がる筋も無く。
ましてや相手は銃で武装した集団。
衆寡敵せずの表現通り、個だけではあまりに無力。
娘のボーイフレンド、街の顔役、警察官、商店の主人、
死体安置所の責任者、軍隊の新任の中尉と、多くの人物が周囲に現れる。
しかし、別居している夫や彼の今の情婦も含め
誰が味方で誰が敵なのか、或いは
犯罪組織と繋がっているのかいないのかも判然とせず。
近隣の住人でさえ、主人公を簡単に売ってしまう可能性さえ否定はできぬ。
疑心暗鬼になりながらも勇気を奮い
『シエロ(アルセリア・ラミレス)』が
果敢に立ち向かうことで、
真相は一歩ずつ彼女の側に近づいて来る。
強固な意志に裏付けられたその顔がアップになるシーンが多く用いられ、
時として絶望を、そして疲れを、また微かな希望を感じさせる表情が変わる度毎に、
我々もその強靭さに感じ入る。
そうした「義」の有る側に敵対する
犯罪をする側の態度はあまりにストレート。
悪びれることもなく、さも当然との風に対峙する。
あまつさえ、罪の意識は微塵もなく、
自分が害を及ぼした相手にすら
呪いの言葉を吐く始末。
何が彼等をこのようにさせてしまうのか。
一方で自身の一族に対する愛情は人並みに持っていることが、
あまりにアンビバレンツ。
他者の側に立ち憐憫を感じることのできぬ精神構造が
如何にして形作られるのかと暗澹とした思いにも囚われる。
『テオドラ・アナ・ミハイ』は女性監督で
本作が初の長編作品と聞く。
準備に時間をかけ、
且つ、彼女の才気も十分なのだろう、
重いテーマの中で、主人公が際立つ造りは鮮やか。
観る人により、
どうにでも受け取ることのできるラストシーンも含めて。
“聖戦”という言葉はこの映画が描く孤立無援の中で一人抗い闘う母の姿には相応しくない(日本語としても適切でないし)。 まだ『ある母の闘い』とかにした方が良かったように思う。
①邦題では所謂“母物”というジャンルを先ず想像してしまう。誘拐された娘を何とか取り戻そうとする母の愛と勇気の物語…
しかし、原題の『La Civil(一般市民くらいの意味?)』からは、警察も軍も当てにならない社会で生きていかなければならない民衆という意味合いが伺い取れる。
②母親が子供の為に命をかけて行動する姿を描いた映画はこれ迄にも沢山あったし、私には子供がいないので(母)親の気持ちは想像できるだけで実感は難しい。
③私がこの映画を観て先ず感じたのは、
いろいろと惜しいが、日本ではありえない、ある国の日常の現実を描く良作。
今年28本目(合計681本目/今月(2023年1月度)28本目)。
内容的に結構地味なところもあり、大阪市で扱っている映画館は1つだけ。その理由があるのか、あるいは他のメディアで取り上げられたのか、100人ほどのミニシアターで4割埋まりほどといった「そこそこ」の入り方です。
公式HPなどで触れられている通り、メキシコにおける「誘拐ビジネス」を扱った内容です。一見ドキュメンタリーのように見えますが当然作話の範囲…と思いきや、実際にあった事件をもとに(後述通り、このような事件はメキシコでは当然のように起きている)つくられています。一方、ストーリーを淡々と描くだけで、公式サイトその他にある「誘拐ビジネス」を描くことはわかっても、それを批判的に描くのかどうなのかという点が映画内ではっきりとせず(おそらく、製作国であるところのメキシコ政府から何か言われた?)、そこは類推するところがあります。
ただ、多くの方は公式サイトを見ていなくても、語として明確に出てこなくても、いわゆる「誘拐ビジネス」が論点にあるのだろう、ということはわかると思います。
ただ、一歩踏み込んで考えたとき、なぜメキシコ(など)で誘拐ビジネスが当たり前のように起きるか、です。
一般的に犯罪には刑罰がつきます。したがって、犯罪をおかすものにとっては、その「リスク」と「リターン」を考えることになります。また、国家(司法)は刑法を策定したり刑務所を作るといったことだけでなく、「そのような犯罪を起こさせない国・社会づくり」ということが求められ、その「せめぎあい」となるわけです。
そこで、なぜメキシコなど(南米に集中しているのが特徴で、ほか、アルゼンチン、コロンビア等)でこれらが見られるのかと考えると、
・ 自動車が(お金と免許があれば)購入できるだけの経済力があり、また公道等も普通に存在するか
・ 「ローリスク・ハイリターン」かどうか(逆にハイリスク、ローリターンな行為はどこでも誰でも普通はしません)
・ 司法や警察行政など、取り締まる側が事実上存在しないか、癒着していたり、あるいは捜査技術等が低く事実上機能していないといえるかどうか
・ 一方で、職業につきたいと思えば(ある程度は制約はされても)選べるほどに経済力が豊かな国か(失業率が30%とか40%とかと言われたら、やる気があっても何もできません)
…という4つの論点があることがわかります(参考:大阪市立図書館など)。
車すら購入できないような最貧国(主にアフリカなど)では、そもそも「車を使った誘拐ビジネス」自体が成立できません。また、日本やお隣韓国、アメリカのように、(賛否両論あるとはいえ)監視カメラが多くあるいわゆる「監視社会」が成立しているか、また(これも賛否両論あろうかと思いますが)いわゆる「スピード違反取締カメラ(ビデオ)が高速道路などに多く設置されているか」といったことがこの「誘拐ビジネスが行えうるかどうか」という「実は最も大きいポイント」になります(まさか自転車で、とはなりませんし、日本はご存じのようにあちらこちらにあるので、やるだけ無駄という以外の何物でもない)。
そこで、「車は買えるし道もあるが、そうした監視カメラや高速道路の追跡システム等はまだ整備されていないか、その途中」といった国において成り立つのだ、ということがわかります(証拠が残らないので検挙がきわめて難しい、など)。こうした国は限られていて(アフリカの多くの最貧国クラスだと、「車すらそもそも購入が困難」だし、インドレベルの発展途上国だと普通に監視カメラが多くあるので、やはりできない)、そうした国において特有で、それがたまたまメキシコであったり、アルゼンチン等数か国に限られるのです。
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(参考/短時間誘拐(express kidnap)について)
外務省の当該国(当然、メキシコ含む)の注意喚起として、この犯罪の特徴の「ローリスク、ハイリターン」をさらに推し進めて「超ローリスク、ミドルリターン」化したものに、「短時間誘拐」があげられます。1日限りの誘拐で、日本と同じようにATMで1日にカードでおろせるお金には(設定を変えないかぎり)通常限界があるので、その限界額(メキシコでは6000~7000ペソが多い模様。7000ペソでおよそ16500円程度)まで要求するという、まさに「超ハイスピードで、すぐにはじまってすぐに終わる誘拐」もあります(参考:外務省)。
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これらのことは映画はおろか公式サイトには何も書いていませんが、こうした発展的知識も持っていないと、映画自体の主張が少ないので(上記通り、おそらく政府からケチがつくんでしょうね…)、そこは調べる必要があります。
採点に関しては以下の通りです。
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(減点0.3/趣旨は理解しても、やや説明不足な点は否定できない)
何度も書くように、この映画の背景や問題提起が何も明示的にないのは、おそらく当該国(この映画はメキシコを含む数か国の合作映画)の政府からの干渉その他だとは思うのですが、それでもあるかないかではかなり違います。
ただ、ここまでの知識を前提とするかはどうかとしても、一般的にいう、いわゆる「誘拐ビジネス」の論点がある、ということは多くの方にはわかりうると思いますし、ミニシアター中心である以上、行かれる方はある程度調べていかれるのであろう(私もそうしました)という点では減点は(作者側に裁量権が少ないのであろうと思える現状は)限定的です。
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メキシコ映画、誘拐事件に巻き込まれた母の変容が見どころ、メキシコの警察を批判しているとも取れるので本国での反響が気になります
メキシコに7年住んでいた記憶が蘇る映画体験でした。こんな街並みあったな、トルティア屋さん、警察に罰金(止まれをしっかりしていないといちゃもんつけられた)多めに取られたな、など思い出しました。
映画館は金曜日の午後、女性三人でした。今朝の新聞でこの映画について読んできたという女性もいらっしゃいました。直接には描かれませんが拷問器具など出てくるので苦手な方は注意が必要です。
主人公は車を燃やされ、家に銃撃を受けても勇敢に立ち向かい、対比的に夫は逃げ腰、女性監督の視点もあるのでしょうか?監督はルーマニアにルーツを持つベルギー在住の監督、テオドラ・アナ・ミハイ、次回作があれば見に行きたいです。
ユーチューブで初めて映画感想やってみましたので、よろしければご覧ください。
(検索ワード KSクッキー、母の聖戦)
不可知の敵と戦い、不可知であることを受け入れる。
2021年。テオドラ・アナ・ミハイ監督。メキシコで暮らす母と娘。ある日、デートに行くと言って出かけた娘が帰らず、母親には誘拐犯から接触が。警察に連絡して娘の身に万一のことが起きることを恐れた母親は別居中の夫とともに身代金を支払うが娘は帰ってこない。母親はあきらめずに軍に頼って娘の行方を探るが、、、という話。
背景となっているのは犯罪組織「カルテル」だと思うが、犯罪組織の巨大さ、組織の縄張り争い、軍や警察との抗争、その内部の腐敗構造に触れていないので、人々の警察や軍への不信感の意味がわかりにくい。とにかく無条件で母親は一人で娘を救い出そうとしているように見える。しかし、それは意図的なものだろう。一人の母親の目に客観的な社会のありようなど見えるわけがない。娘の誘拐はとんでもない災難であり、それを引き起こしたのは恐るべき謎の組織であり、軍隊もまた正義遂行のためとはいえ暴力を振るう恐ろしい存在である。巨大な力のせめぎあいのなかに放り込まれた非力な私。個人は力の限りを尽くして奮闘するのだが、結果は神の思し召しにすぎない。こうした中南米の「マジックリアリズム」的風土の感じはよく表れている。
不可知の敵を相手に戦うことが生きることである。肋骨一本が発見されてもそれは娘の死を意味するわけではない。だから、最後に母親に近づいてくる人物の正体もわからないまま。もちろん、これが、肋骨が発見されて死亡と判断された娘であることを疑う観客はいない。
修羅と化した母の表情に、とても引き込まれた
メキシコで主人公の母のシエロが、誘拐された娘のラウラを捜索する物語です。
ドラマチックな演出はないのですが、かなり引き込まれました。
ラストのシーンがとても印象に残っており、あの人物(ラストにアップされる人物)の気持ちを感じとることができました。
シエロの修羅と化した母の姿に終始引き込まれ、東京国際映画祭で審査員特別賞を受賞したのも納得できました。
追記 私のレビューのすぐ上のレビュー(文字読みさん)は、一部ネタバレしているので、その方のレビューは、観る前に読まないでください。
1月21日追記 未だにじわじわ来る物を感じるので、星5に評価を上げます。凄い映画です。
痩身術かもね
10代後半と思しき娘を誘拐された母親が奔走する話。
彼氏とデートという娘を送り出し、車で出かけて用事を済ませていると、見知らぬ男達に止められて、娘を誘拐したと告げられて巻き起こって行くストーリー。
別居して若い女と暮らす旦那をなんとか巻き込み身代金を用意したが、娘は帰ってこずに値切ったからと更なる要求。
それに応えても…。
街中でどうどうと顔を晒して誘拐を告げる犯人って、警察が宛てにならない国は恐ろしい…。
そして自分で何とか手掛かりを追って、希望の芽が出て来て、映画としてかなり面白くなってきたけれど、ドンの件あたりから少しダレ気味に。
まあ、そういう境遇に置かれた母親の心境をみる作品といえばそうなんだろうけれど、その後も結局もやもやっと。
最後も恐らくそういうことなんだろうな…というちょっとだけ期待させる様な締めで、余韻が中途半端に感じた。
途中まではかなり良かったんだけどね…。
全42件中、21~40件目を表示