劇場公開日 2022年1月14日

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「盛者必衰の理を表す一族の話」ハウス・オブ・グッチ ねりまっくまさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0盛者必衰の理を表す一族の話

2022年7月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ハイブランドで有名なグッチ家の話です。創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオ・グッチの暗殺に至るまでの一族の内紛や夫婦間の愛憎などを描いています。時代的には1980年代から暗殺される1995年あたりです。当時そのような事件があったことも全く知りませんが、そんな前知識が無くても十分に楽しめる作品でした。

見どころのひとつは、レディー・ガガ演じるパトリツィア・レッジャーニの変貌していく様子でしょう。とても克明に描かれています。序盤でマウリツィオと出会った頃は、純粋に愛していたと思います。グッチ家の莫大な資産が狙いではなく、マウリツィオの素朴で謙虚な人柄に魅かれたのでしょう。親の反対を押し切って結婚したマウリツィオでしたが、貧しいながらも幸せな毎日でした。バスを洗いながら同僚とふざけあっている時の笑顔からは、その十数年後に暗殺される、それも愛してる人からの依頼で殺されるなんて夢にも思わないでしょう。子供が生まれ、夫が別の人に愛情を向け、一族はいつまでもよそ者扱いする。最終的にやり直すことができないことを思い知らせれたとき、純粋だった愛情は憎悪へと変貌を遂げました。個人的にはよく描けていたと思いますが、もっとドロドロした部分を描けていれば、オスカー受賞もあったかもしれませんね。

バブル全盛期の日本や日本人が小噺的に挿入されていて、笑えました。特に、アル・パチーノ演じるアルド・グッチの登場シーンは最高です。ネタバレになるので表現差し控えますが、きっとそんな会話があっただろうなと頷いてしまいます。そろそろ先進国からも外れそうな今の日本からは隔世の感じです。盛者必衰は一族だけでなく、国にもあてはまりますからね。

ところで、ちょっと調べたらグッチ創業者の面白い発言をみつけました。
「原価は何も意味を持たない。むしろ商品の値段が高ければ高いほどそれを所有することの価値も高くなる」
こうした、人や物事の本質を突く洞察力が、GUCCIを生み出したのでしょう。

ねりまっくま