「考えさせられる映画。面白くはないが、すごい作品かも」ハウス・オブ・グッチ スキピオさんの映画レビュー(感想・評価)
考えさせられる映画。面白くはないが、すごい作品かも
ストーリーはグッチ家のお家騒動です。Wikiでも読めば分かる話。事実をもとにしているものの、忠実には描いていません。映画では狂人めいたパオロ・グッチはそこまで気狂いではないし、アラブのインベストコープを引き入れたのは、映画の主人公であるマウリツィオではなく、映画では嫌々株を手放す描写があるアルド・グッチの方だったようです。
別に映画は、史実に忠実である必要はなく、観ている人の心を掴めるか、です。そんなエピソードは無かっただろうけど、グッとくるのが2つ。
マウリツィオ・グッチが娘のアレクサンドラとクリスマスに遊ぶ色当てゲームが「緑、赤、緑」と初代グッチオが考案したグッチのブランド・ラインと同じで、こうしてファミリービジネスを継承しようとしている。でも、このあたりからグッチ家が崩壊に向かって転がる場面なんですよね。
ラスト付近で、共同投資家のアラブ人と食事を取るシーンで、マウリツィオの経営手腕を問題視するアラブ側が、ウエイターに「この肉旨いな、どこ産だ?」と聞くと、グッチ家の発祥の地である「トスカーナだ」と答えるシーン。グッチ家が食い散らかされる暗示ですね。
史実ではマウリツィオの嫁が極悪人ですが、映画では必ずしもそうは描いていない。皆んなが良かれと思ってやる事が、結果的にグッチ家というファミリーがビジネスもろとも瓦解していく滅びの様を描いている訳です。また叔父のアルドをアル・パチーノが演じるもんだから、やっぱゴットファーザーを連想せざるを得ない。
じゃあ、そんな「滅びの様」を見せることに、どんな意味があるのか?それは観ている側が考えなさい、ってことなんだろうね。