「家族なんてクソくらえ。」ハウス・オブ・グッチ せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
家族なんてクソくらえ。
1995年に起きたGUCCI3代目当主暗殺事件に至るまでの30年間を描いた話。
最後にも示される今のGUCCIにいわゆる"グッチさん"はいないように、血縁関係にある家族関係のくだらなさ家族経営のアホらしさの映画。私も血縁関係は鎖だと思ってる人間なのでめっちゃ良かった。
今までのこじれた家族関係のせいで正しい忠告を素直に聞けなかったり、家族だからという理由で特に優秀でもない人が傍に置かれ、縁を切ったつもりでも関係はズルズル続いていくもんだからお互いの確執、問題は解決されないまま。家族(親戚含め)が会社にいるって考えただけで寒気がするわ。
劇中で「父親だから」「息子だから」と何度か言っているけれど、この言葉って全然理にかなってないのにどんな時も使えてしまう魔法の言葉なのが危険だなと。それがビジネスにおいでだったらもっと。
占い師が赤と緑両方取り入れてと言われるもレディー・ガガ演じるパトリツィアが赤の服しか着ないことを始め、劇中緑はほぼ出てこない。赤は血の色で、血縁関係の家族経営の象徴。最終的にその家族経営は追いやられることになる。GUCCIの緑と赤が入ったデザインのように、両方のバランスが大事よね。
さらに、女性が男性の家に入るという伝統的価値観に疑問を呈している作品でもあって、普通は肩身が狭いはずの玉の輿でもパトリッツィアのようなタイプの女性だったら全然でしゃばれてかき乱せる(姑がいなかったのもでかい)。これ、結婚後の女性の苦悩を描くのではなく、GUCCIの男たちにとって不利益極まりないように描くことで男性を当事者にできてるの本当に上手い。最後の最後までグッチ夫人とでしゃばる彼女を見て、それでもまだ夫婦別姓に反対出来ますか?
そして、「ショーケースを外側から眺めている」人が最終的に実権を握るのも痛快。パトリツィアに関しては悪女ではあるけど、産んだ子供が娘だったから2人とも追い出されたんだろうなと思うと可哀想。
あとは広告出身のリドリーじいちゃん、本作で本領発揮してて途中途中めちゃくちゃGUCCIのコマーシャルみたいでかっこよかったな。