「本作最大の衝撃は、ジャレット・レトな一作」ハウス・オブ・グッチ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
本作最大の衝撃は、ジャレット・レトな一作
もちろん、グッチ一族大激怒の本作。世界的なブランド企業「Gucci」の創業者一族の内紛とその内幕を描いた本が映画の下敷きとなっています。語りの巧さはさすがだし、見事な演技、きらびやかなパーティー、素晴らしい高級製品などなど…、画面もリッチそのもので、時間の長さを全く感じさせません。全く肩に力を入れずに観ることができるという点で、スコット監督の前作『最後の決闘裁判』とは対極の作りになっています。『最後の決闘裁判』をデートムービーとして観たら後々結構気まずくなるかも知れないけど、こちらはせいぜいちょっと苦笑する程度で、全体的に楽しめるでしょう。もし『クレイジー・リッチ』の二人がどうしようもなかったら、という「もしも映画」としても楽しめるでしょう。
アダム・ドライバーは『最後の決闘裁判』に続きリドリー・スコット作品に主演。『決闘裁判』の撮影中に、本作出演の要請があったそう。前回は美青年だが何を考えているのかよく分からない騎士を演じていたけど、今回は名家の御曹司。世間知らずのお坊ちゃんが徐々に権力の魔力に引き込まれていく様子は、共演していたアル・パチーノがかつて演じたマイケル・コルレオーネを彷彿とさせるものがあります。
ガガは『マクベス』でいうところのマクベス夫人と魔女の両方の要素を兼ね備えたパトリツィアをみごとに演じていたけど、何と言っても本作最大の驚きは、ジャレッド・レト!エンドクレジットを見るまで全く気がつかなかった…。
アル・パチーノは相変わらず皮肉なユーモアを交えたセリ目回しが見事だけど、どちらかというといつもより演技は控えめ…。と思ったら、ある場面で感情を爆発させる場面では爆笑してしまいました。なるほど、大人しい演技に徹していたのはこのためだったのか…。
主要な登場人物は全て実名。ところが映画化に際して、本人にも一族にも、特になんの許諾も連絡もなかったとのこと。実話と実在の人物に基づいた映画を作るのに、当事者に何の連絡もしないって、なかなかすごい製作体制のように思えるけど、ハリウッドなどでの映画製作においてはそれほど珍しいことではないそう。広く知られた事件なので、公共性の面で特に問題ないってことでしょうか。