劇場公開日 2022年1月14日

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「言葉と物の価値は違う」ハウス・オブ・グッチ マルホランドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0言葉と物の価値は違う

2022年1月22日
iPhoneアプリから投稿

俺は生まれてこの方ブランドものには縁がなかった。もちろんグッチの名前は聞いたことがあるが、買ったことはないし手に取ったこともない。しかしそんな俺でもこの二時間半超えの作品を楽しく見れたのはGUCCI一族の争いが華やかな栄光ある名前とは真逆に血みどろの抗争劇が含まれていることをこの作品で知れたことにある。レディガガ演じるパトリツィアはどうにかしてGUCCI一族に潜り込もうとありとあらゆる手を使いマウリツィオに取り入る。入り込めるだけでもすごいのだが、その殻の女帝劇がすごい。身内同士で争わせ、蹴落とすがそこに情けなく豪快にやり通すのがヒロイックを感じ強い女性像を確固たるものにしたと思う。ただひたすら厄介な人間だなあと見ていて思ったがそんな彼女に注目したところが「紛い物」に敵意を剥き出したシーンが好きだ。もちろん偽物なんか簡単に作れるようになったらGUCCIの価値は下がるし、本物と偽物の価値の境目がわからなくなってしまうだろう。そんな彼女は叩き潰そうとマウリツィオに問いただすがそんな彼はむしろその出来をほめ、問題ないように振る舞う。彼女は外から来た人間で部外者に当たるが、そんな彼女だけがGUCCIという名前を大事にしようとし、偽物を許さないスタンスに一定の好意を覚えた。この映画だけ観てももちろん本当のことはわからないのだが、この映画だけを見るにGUCCIという名前に人一倍固執していたのがマウリツィオ1人だけだったように見えた。彼女がいたからこそグッチ一族は崩壊の一途を辿り、結果的に殺人まで起きてしまった。誰1人得することがなくいなくなってしまったが、この映画の最後に表示される、GUCCIの総資産の数と現在のGUCCIの経営の中に一族の人間誰1人いないというメッセージを見るにもしかしたらこの一族がいない方が経営が上手くいったのかな、となんとも皮肉な終わり方で面白かった。

また随所の音楽の使い方がとにかくカッコよくてなんだかMVを観てる気分になれた。また70年台の話だが現代チックに見えて古臭く感じず、これて現代の話なのかな?とワクワクして見れたのもとても良かったし、切れ味が効いててとても刺激的な構成になっている。

マルホランド