「名を残すは三流・財を残すは二流・人を残すは…」ハウス・オブ・グッチ Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
名を残すは三流・財を残すは二流・人を残すは…
GUCCI
1921年にイタリアでグッチオ・グッチが
創業した皮革製品の企業
戦時中に皮革が使えなければ竹を使う
などアイデアとデザイン性を両立させ
昨今の「ブランド」という存在の元祖と
言ってもよい存在だったが
90年代のお家騒動で
一族が誰も残らなくなった
事でも知られている
今作はそこをクローズアップし
「王朝」がいかに崩壊したかと
言うストーリー
こんな内容にもかかわらず
グッチが衣装協力した
ビジュアルは素晴らしかった
んだけど…
演出に一貫性が無くBGMもちぐはぐな
感じがどうにも辛かった
やっぱり音楽の統一性は大事ですね
1970年代後半
パトリツィア・レッジャーニは
父親の運送業の事務所を手伝いながら
アルファ・スパイダーに乗って
おしゃれを頑張る日々
ある日のパーティーでウブそうな
青年に声をかけるとその男は
「マウリツィオ・グッチ」と名乗り
弁護士志望だとは言うものの
直感でグッチ家の跡取りだと確信した
パトリツィアは猛アタックを仕掛け
マウリツィオと恋人になり
ついには結婚を決心させます
しかし父のロドルフォ
(創業者グッチオの五男)は金目当て
の女だとバッサリで結婚も反対
しますがマウリツィオは引かず
勘当されてしまいます
マウリツィオは仕方なく
パトリツィアの会社で働きますが
二人の仲は変わることなく
結婚式には新郎の親戚が全く
来ないアンバランスな結婚式
でしたが全く気にせず
純粋な愛の炎で燃え上がっていた
ようです
そんなある日
三男アルドがロドルフォの元を訪ね
マウリツィオとの仲の修復を求めます
アルドは父の反対を押し切って
NY進出を実現したり商売方な気質
上客の日本人相手に御殿場への
進出も考えていたようです
一方のロドルフォは芸術家肌で
拡大路線は反対の手堅い性格
グッチ家の一族はバラバラなのです
アルドの息子パオロは自称芸術家で
デザインセンスも認められず
アルドにはあまり期待されておらず
むしろ弁護士志望のマウリツィオに
期待していたようです
病気で余命いくばくかの
ロドルフォに関係を修復するのも
わからない話ではありません
結局アルドはマウリツィオに
グッチ家へ戻るきっかけにと
自分の誕生日に呼びます
そこでパトリツィアも気に入り
ロドルフォの死後に二人へ
NYへ来るようオファーします
当のマウリツィオはグッチ家の
重圧にうんざりしていたようで
経営等に関心はなくこの話も
乗り気ではありませんでしたが
この辺からパトリツィアは
メラメラと富と名声を手にする
欲が生まれたようです
ふとテレビでやってたピーナ
と言う占い師の悩み相談に
リモート会話のような感じで
選んだ道を進めと
アドバイスされ決心を固めていきます
(この映画急にコントみたいに
なるんですよね)
NYで最高のオフィスと住居を
用意され新生活に燃える
パトリツィアですがある日
ブランドにはつきものの
「偽物」の存在を発見します
生産工場から型落ち品が流れたのか
まるまる偽物かわかりませんが
パトリツィアが追及するべきだと
アルドらを集めて意見すると
「偽物を買う客と我々の顧客は
全く違うから相手にしなくて良い」
という拍子抜けの答え
(今でも偽ブランドによる被害額
は全世界で4000億ドルにも
上るそうですが)
この無関心さに加え余計な事を
するなとクギまで刺してくる始末
パトリツィアは薄々
アルドも邪魔かと察知し始めます
マウリツィオが実権を握るべきだと
意識し始めたパトリツィアは
現状50%持っている株式を増やす
(=アルドとパオロの株を買収する)
事を考えるようになります
マウリツィオは一族同士で対立する
のを拒絶しますが実権を握ることで
自由が得られると思ったのか
少しずつパトリツィアの言うように
動きます
まずパオロにアルドが実権を失えば
パオロのデザインによるラインを
展開してあげると誘いアルドの弱みを
探らせると脱税の証拠がわんさか
ちなみにロドルフォも逝去時
幹部のドメニコから知らされた
株券の署名をしていなかったなど
この一族経営感覚はスッカラカン
パトリツィアはここを逃さず突き
アルドはあえなく脱税容疑で逮捕
軽くすむかと思ったらじゃんじゃん
容疑が出てきて実刑を
食らってしまいます
そんな大事になると思ってなかった
パオロはアルド逮捕にショック
を受けつつ約束通り
ブランドを作ってもらえましたが
案の定売れずグッチ家の名称を
私的に用いた点を著作権違反で
告発され結局グループから外されれて
しまいます
マウリツィオとパトリツィアの
実権は大きくなっていきますが
この流れでロドルフォの株券の
署名をズルした容疑で捜査され
マウリツィオはスイスへ逃亡
パトリツィアは署名偽造を
知るのはドメニコだけなので
もう誰も信用できないと
疑心暗鬼になります
一族の人間を陥れて実権を得た
マウリツィオは苦悩
そこへドメニコも切れと迫る
パトリツィアにもうんざり
しかし幼少期に過ごした
サンモリッツで再会した
幼馴染のパオラに徐々に
魅かれていきます
やがてパトリツィアは娘と
合流しますがパオラといちゃつく
マウリツィオに当然憤慨しますが
もうそこには自分の為に
マウリツィオを利用しようと
している姿しかありませんでした
またそんな時に初めて
恐らく作中で初めて「愛してる」
とマウリツィオに告げるのです
ここはこの映画で一番
いい(?)シーンでした
そういえば愛してるって
言ってなかったんです
結局マウリツィオと
パトリツィアと娘は離別
妻子の面倒をマウリツィオが
最後まで見る確約でパオラと
新しい人生を歩もうとします
グッチの株式も中東の
投資グループを介して
アルド親子の株式を取得し
完全に実権を握りました
トラディショナルだが
若手のデザイナーからは
「ダサい」と言われていた
グッチのデザインを刷新すべく
若手のデザイナーの
トム・フォードを抜擢するなど
伝統にとらわれない
イメージの刷新を図ります
…しかし!
経営センスの無さはもはや遺伝
金遣いの荒い放漫経営でグッチの
業績はみるみる悪化
マウリツィオも結局経営センスは
ありませんでした
トム・フォードの成功の陰で
投資家たちはマウリツィオからの
株式を買い上げ経営から
手を引くことを提案されます
マウリツィオは激高しますが
不向きな経営から離れ
株の売却で数百億を手にし
自由になれる話を吞んでしまいます
結局最後までこうです
ただ自由になりたかっただけ
この買収話を持ち掛けていたのが
ロドルフォに使え「グッチに仕える」
と自負したドメニコ・デ・ソーレ
だったのです
マウリツィオは映画冒頭にあった
カフェでニヤニヤしながら
自由の身になった自分を満喫し
自転車で職場に戻るシーンに
戻りますがここで玄関前で
パトリツィアが雇ったマフィアに
銃撃されて絶命してしまいます
彼の人生は結局この世で
自由になる事は…
何より救いがないのは
少なくともグッチ家の人間の誰が
実権を握ったとしても結果は同じ
だったんだろうなと思わされる部分
結局ドメニコの買収後今では
100億ユーロ売り上げる企業に
なっているわけです
グッチ家の一族は一切かかわって
いませんし一族の人間は
グッチの名を使う事も認められて
いないそうです
パトリツィアもこの映画では
任せたら多少うまくやったのでは
なんて思ってしまいますが
現実にパトリツィアも自分の
デザインしたバックを出して
全然売れなかったり
やっぱり才覚は無かったようです
会社の規模に対して
家族経営の限界とも言えます
日本も家族経営の会社のお家騒動が
よくニュースになりますが
良し悪しなんですよね
クルマ業界なんかで今頑張ってる
トヨタはスズキはトップが一族
苦しんでる日産やホンダは社員
お国柄やグループの規模
色んな要因で違うと思いますが
ブランドに対するイメージを
より受け継げる体制というのが
あるのでしょう
そんなこと考える
機会を持てる映画でした
その演出のマズささえ無ければ
プラス★1個あげられました
長い映画ですがそこはあまり
感じなかったとこはさすが
リドスコ監督でしょうか