「刺さる人と、刺さらない人の差が激しそうな映画」雨を告げる漂流団地 callさんの映画レビュー(感想・評価)
刺さる人と、刺さらない人の差が激しそうな映画
ナツメが面倒くさい。
そりゃもう面倒くさい。性格も面倒くさければ背景もスタンスも面倒くさい。
昔からよく笑っていた。それはコースケのご家庭が本当に良い家庭で、コースケもいい子だったんだろう。
おそらく、安ジイの存在はナツメにとってとっても大切な存在で、だからこそ安ジィが死んだ後に殻に閉じこもるかのように
かつての機能不全家庭の「面倒くさい」ナツメが現れて、あろうことかナツメがその状態でストーリーが展開し続ける。
コースケが素直になれば大体解決するのになぁと思っていたが、過去シーンが描写されるにつけ、
1.もともとは面倒くさい性格(←母親すら知らない)
2.安じいのおかげで明るくなった(←ノッポやコースケ、クラスメートの知ってるナツメ)
3.安ジィが死んで、1に輪をかけた性格になっていた。
ずっと一緒に幼馴染みやってるコースケ。という立ち位置で惑わされそうだが、
「ずっと一緒に幼馴染みやっていた元気な家族」が、いきなり面倒くさくなったのだ。
しかもあっちからコースケを遠ざけるムーブをしている。そりゃ小学生になんかもうどうしていいかわからん。
さらに輪をかけるフロリダ女の口の悪さ。
と、いう時点でギブアップする人が多そうな予感がしました。
後半。一気に巻き返しにかかります。
ノッポ君の正体(?)、仲直りしたコースケとナツメ。
……と、いうことで、ここでストーリー的には前半の重さを巻き返してはいるのですが、
ストーリーと一緒に気持ちもリセットできたでしょうか。
リセットできない人はおそらくつまらないという感想を持ったままでしょう。
「リセットできない人は~」みたいなことを言う気はありません。ここらへんは好みの問題だと思うからです。
フロリダ女も色々あるんだねぇ、と納得できれば彼女への印象もけっこう変わるでしょう。
個人的には「遊園地には私の全部がつまっている」というセリフと、観覧車女の「パパっこだったあなたが…」で一気に許せた気がしました。
そうすると2の明るいモードのナツメを「作り笑い」と看破できる「見る目」があるのもなんとなくわかります。
//
ガチ漂流はいわゆるテンプレですが、ジュブナイルでしっかり漂流シーンを描くのはアリです。
なぜか漂流団地の各家の水道からは水が出て、電気がついて、冷蔵庫には食料がいっぱいで……みたいなファンタジーより全然まし。
誰にでもおすすめできる映画というわけではないですが、
子供のころに団地はもちろんアパートやマンションなんかの集合住宅で過ごした人にはとてもおすすめだと思います。
////
さて、ちょっと品のないことを言いますが、どうもキャラ設定や絵柄にエロ漫画の気配がするんです。
いや、作品を否定しているわけではないですし、エロ漫画を否定するわけでもありません。
おそらく漫画的にテンプレ的な個性のキャラ・テンプレ的なやり取りを複数用意してしまったばかりに
そういうにおいがしてしまったんじゃないかなーと思いました。あなたならどの漫画家だと思いますか?
//
最後に。
作中でジュリのメガネをとったことそのものと、
必要性があって取ったのならメガネのないジュリが特に不自由そうな描写がなかったことはすごく残念でした。