「ギリギリを生きる男たちの最後のギリギリ」恐怖の報酬(1977) つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ギリギリを生きる男たちの最後のギリギリ
あらすじにあるニトロを運び始めるのは真ん中辺りからで、それまではまあ中々退屈。
運び手になる四人の男がなぜこの小さな村にたどり着いたのか的なエピソードがあって、そのあと村での生活が描かれて、やっとニトロ。
誰が主要人物か分かりにくいし、序盤の一幕は必要なのか疑問に感じるほどだけど、後半に行けば行くほど前半のエピソードに意味が出てくるから頑張ろう。
せめてどんなことが起こったのかだけでも覚えておくといいと思う。
後半になって、車にニトログリセリンを積んで走ると聞いたときに妻が「ワイルドスピードだ」と言った。
おお、確かにな。ニトロを積んで激走するわけだからフリードキン版ワイルドスピードに違いないかもな。速度はかなり遅めだが。
ヤバそうな崖をニトロ使って飛び越えたり、ウインチ使って空中ブランコしたりするんだよ。
って、そんなわけあるかっ!ちょっと納得しかけたわ。
もっとそろそろそろそろビビりながら運ぶよ。きっとね。
多くのレビュアーさんが書いているように、ジャングルの中を進むトラックは本当にスリリング。
いやスリリングなんて生易しいものじゃない。もうほとんどホラー。
ぬかるんだ斜面を滑るトラック。ボロボロの丸太橋を渡るトラック。冠水したつり橋を渡るトラック。
ニトロを積んでいないとしても相当にヤバい。冷や汗ダラダラになるほどの恐怖。
だけど、本作が本当に面白いのは後半のハラハラパートのアクション部分ではなくて、前半から連なるドラマにあると思うんだよね。
彼らは突然訪れる人の死を目撃し、自分は死から逃れて村にやって来た訳だけど、死神の誘いによってかニトロを運ぶという、いつどの瞬間に命を刈り取られてもおかしくない、首筋に死神の鎌がかかった恐怖と対峙することになった。
彼らが見てきた死は彼らが与えた死だ。命には命で償えと言わんばかりに死が迫ってくる。
一瞬で命を散らし償うのか、それとも振り払えるのか、精神をもすり減らして向かった先に生き残る道はあるのか?
人を死に追いやった者は自らも追われることになる。彼らと死神の対決のドラマ。