「古さを感じさせない凄い映画」恐怖の報酬(1977) 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
古さを感じさせない凄い映画
40年前の作品である。CGも何もない時代によくこれだけの映像が撮れたものだというのが最初の感想だ。崖の上のカーブをスレスレで曲がったり、荒れる川に架かる、手作り感満載で心もとなさMAXの木造の橋を、橋とほぼ同じ幅のトラックで渡ったりと、信じられないような実写の映像が目の前に流れるのは、まさに奇跡と言っていい。
言わば無法国家と言ってもいい独裁国に、世界各地の法治国家から流れ着いたろくでなしの男たちが、タコ部屋から抜け出して自由を得るために無謀な仕事を引き受けるストーリーだが、生き延びようとする彼らの本能が人間の本質をよく表している。そして役者陣は演技と感じさせない演技で、追い詰められた男たちをそれぞれに表現する。破天荒な脚本と演出も秀逸だが、それに応える俳優たちの演技も見事だ。
人間の本性は極限状況に追いつめられたときに現れる。男たちは勇気と知恵と体力を駆使して、次々に訪れる難局を乗り切っていく。並大抵の男たちではない。そこではたと気づいたのが、これほどの困難な状況を乗り切るのは、いわゆる普通の男たちでは無理だ。特別の訓練を受けるか、もしくは修羅場を経験した人間でなければならない。男たちが映画の前半でそれぞれに修羅場を経験しているのは、この状況に向かう伏線であったのだ。
インターネットやGPSなどの通信技術が発達した現代でも十分に通用する作品で、まったく古さを感じさせない。最初から最後まで息を抜けず、終わったときには一緒になって疲れている感じである。普通の人が決して経験できない極限状況を擬似体験させてくれるのも映画のひとつのメリットだとすれば、この作品はまさにその典型と言ってもいいと思う。凄い映画である。