「CGでは真のアクション映画は撮れないとのメッセージだ」恐怖の報酬(1977) あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
CGでは真のアクション映画は撮れないとのメッセージだ
なるほどフリードキン監督の作品であった
1952年のクルーゾ監督のオリジナル版とは全く違う
アクション映画として再構成し直されている
フレンチコネクション、エクソシストと来て本作
当たらない訳がない
本人もその出来映えに自信が有ったのは間違いない
40年も経ってリベンジを図るのは、正当な評価を得ていないと余程に納得がいかなかったのだろう
映像の迫力は凄い
崩れかけの吊り橋を豪雨の中、大型トラックで腐った橋板を割りながら渡るシーンはオリジナルに無いシーンで強烈な印象を残す
その映像の迫力と説得力はどうだろう!
最近のCGだらけのペラペラの嘘っぽい映像とは全く違う本物の映像の力が画面から迫ってくるのだ
とはいえ、その他の手に汗握るシーンはあらかたオリジナル由来であり、顛末を知っていると、画は確かに綺麗で迫力もあるのだが・・・となってしまう
もったいない限りだ
ドラマ性は違った形で作ろうとしているが、何故その最果ての地に流れ着いたか、どの様なバックボーンを持つ人間なのかに冒頭に重点を置いているが、何故そこからそんなにも抜け出したいのかの動機付けが安易過ぎて強く感情移入出来ない
さらに2台の大型トラックに分乗する4人のキャラの立ち方、互いの関係性が薄いのだ
そもそもイブ・モンタンに対応するのがロイ・シャダーなのだから配役時点でそこを監督がどの様に考えていたのかは明らかだ
これはアクション映画だからそんなことはどうでも良いのだといのが監督の答えな訳だ
それ故に脱落していく登場人物への感情移入できないから、達成した時のカタルシスがどうにも弱いのだ
オリジナルと全く違うエンディングも同じ虚無感でも似て非なるものになった
何か不純物の混じった虚無感だ
映画としてはやはりオリジナルには決定的に敵わなかったと言わざるを得ない
だが、フリードキン監督が執念を燃やして、40年を経て本作を復活させた情熱が何かは充分に伝わった
な、CGの無い時代に凄い映像を撮っていたんだぜ!CGに頼ってばかりじゃ駄目なんだよ!
これが彼のメッセージだ
CGでは絶対に作ることの出来ない真のアクションシーンの映像がここにある
本作は現代のアクション映画に失われたものは何かを明示して問題提起してくれているのだ
そこに再編集された本作の意義があるのだ
最後に映像とは逆にシンセサイザーによる音楽が妙に良い
何故かとクレジットを見るとタンジェリンドリームとあった
知る人ぞ知るプログレッシブロックの名バンドだ
1980年代のバンゲリスに匹敵しようか
CG無しの映像と電子音楽の取り合わせ
少し皮肉な感じだ