聖闘士星矢 The Beginning : インタビュー
新田真剣佑、ハリウッドでの“はじまり”の物語 「聖闘士星矢 The Beginning」で挑んだ世界の舞台
あの「聖闘士星矢」が、ハリウッドで実写化。製作発表から6年を経て完成した「聖闘士星矢 The Beginning」は、Netflixオリジナルシリーズ「ウィッチャー」を手掛けたトメック・バギンスキー監督に、ショーン・ビーンやファムケ・ヤンセンら大スター、オスカーノミニーのスタッフ陣……と、ハリウッド大作そのもの。おまけに、「聖闘士星矢」の世界観を形成する原作コミックの前日譚という設定だけに、原作へのリスペクトを最大限に引き出すことに成功している。
星矢役を演じたのは、これまた適任の新田真剣佑。アクションも自分でこなすことができ、英語ネイティブの彼の躍進は、本作だけでなく待機中のNetflixオリジナルシリーズ新作「ONE PIECE」でも明らかだ。日本発のエンタテインメントを世界に届ける座長としての彼に話を聞いた。(取材・文/よしひろまさみち、写真/間庭裕基)
かつて神々が支配していた地上世界で、幼い頃に姉と生き別れた青年・星矢は、スラム街の地下格闘場で戦う日々を過ごしていた。ある日、戦いの最中に不思議なパワーを発したことで、謎の集団から狙われることに。星矢の前に現れたアルマン(ビーン)から、星矢自身のなかに秘められた力・小宇宙(コスモ)があり、それを鍛え、女神アテナの生まれ変わりである女性シエナ(マディソン・アイズマン)を守ることが運命だと告げられる。
まず「聖闘士星矢」といえば、アクションだ。ハリウッドのアクションを日本の役者が挑戦するとなると、つい比較してもらいたくなるものだが、「日本のアクション映画と違うかと聞かれるのが一番難しい」という。
「日本と海外の現場を比べるのは難しいんですよ。同じところもあれば違うところもあるので。日本で一番大変なのは、その作品以外にもかけもちをしている俳優やスタッフが多いことかな。みんな忙しい合間を縫って作品に取り組むことになりますからね。ひとつの作品に集中して時間を費やすことができるのは、ハリウッドの強みかもしれません。なにせ、スタッフ全員が命をかけて参加している、と思うことが何度もあって、こういう現場は他にはないな、と思いましたよ」
スクリーンに映る彼は、小宇宙に戸惑いつつも、自分の運命を悟ろうと苦悩する肉厚な青年・星矢。エピソード0だからこそ、パワーを持ちつつも、そのパワーに惑うヒーロー像を作り出すのは苦心したことだろう。その裏付けとなる肉体づくりは、かなり壮絶だったようで……。
「トレーニングは、撮影の1カ月前くらいにブダペストに集合して始めました。アンディが出したトレーニングプランと振り付けは、週7日ジム通い、週5日はアクショントレーニングで……。からだをベストな状態にもっていかないことには始まらない役ですからね。だって、対戦相手がみんなめちゃくちゃゴツい(笑)。星矢はスピードとテクニックで、ゴツい相手よりも上回っていないといけないんです。ダンスのように見える、と、劇中でもからかわれるんですが、ダンスをしているんじゃなくて、攻撃を避けながら確実に急所を狙って倒すという説得力が必要だったんですよね。そのために、僕自身が得意な動きを伝えたりして作り上げていきました。また、エピソード0なので、星矢はこの物語とともに成長していくという設定。見ている側が、一緒に応援したくなるようなキャラクターです。この役と、この作品作りの環境を通して、僕自身も大きく変わったと実感しています」
アイデアを出し合いながら作り上げたそのアクションは、ハリウッドでも最強のチームとのコラボレーションによるものだ。
「今回に関しては、とにかく星矢のアクションってなんだろう、ということを、アクションチーム全員でつきつめて考えたのが一番の思い出です。今回のアクションチームはマーベル・スタジオの『シャン・チー テン・リングスの伝説』を手掛けたスタッフだったので、とにかくいろんなアクションの選択肢を持っていました。そのなかで、一番星矢に適したアクションにしていく作業は、本当に勉強になりました」
「じつは、僕が考えていたこととアクション監督のアンディ・チャンが思い描いていたことが食い違うこともしばしばあったんですが、非常にいいコミュニケーションをとりながら調整することができたんです。なにせアンディが作る動きが、これまで見たことがないようなかっこいい動きばかりで、『これが映像になったらすごいんだろうな』と思うことは毎日のようにありました。それをひたすら練習して、よりかっこよく見せようと意識しながら演じていました」
ハリウッドでの経験はこれからというタイミングできた、主演作。ディスカッションしながら、リスペクトしながら作り出した本作を振り返ってもらうと、意外にも「じつは毎日吐きそうなほど不安でした」という。
「オーディションには受かったものの、現場に入ってからは、座長? 本当に大丈夫なのかな、と思うことばかりで。監督にも毎日『このシーンが不安です』って言っていたんですが、監督はいつも『気にするな。大丈夫だよ』しか言わないんですよ。本当に冗談抜きに毎日が不安で吐きそう(笑)。でも、そう言われたら体当たりでいくよりほかないですからね。完成版を見てようやく安心した、というのが実感です」
臨機応変に現場に対応できたのは、日本でキャリアを積みつつも英語ネイティブの彼ならでは。世界進出を目指す俳優やアーティストが増える今だからこそ、言いたいことがあるのだとか。
「子どもの頃から自然と身についた語学と、後から学んだ語学では全く違う。ハリウッドではとにかく英語が流暢、では通用しませんし、母語として扱えて当然。厳しいかもしれませんが、これができることによって、世界一のプロフェッショナルしかいない現場を体験する可能性が生まれるんですよ。逆に、この作品を経験したことによって、日本で求められていること、ハリウッドで求められていることがそれぞれ違うことがわかりましたし、僕はそのどちらも挑んで楽しめる。そこにプラス、武術を学んでいたからこそ、僕にはアドバンテージがあったんだ、と改めて感じています」
「聖闘士星矢 The Beginning」は、4月28日に全国公開。