ナイトメア・アリーのレビュー・感想・評価
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これは、入れ子ですか?
劇中の見世物小屋で見るような三文芝居が本編だった。転落していく様が駆け足で、取って付けた感が否めない。ケチな男に終始したブラッドリー・クーパーが気の毒なくらい。 何のひねりもないエンディングも含めて残念な作品。 ケイト・ブランシェットの美しさに星1つ追加。
自分はこんなもんじゃない!
——第二次大戦の少し前の不穏な時代—— 当てもなくたどり着いた”カーニバル”一座で働くことになったスタン。自分の才覚に気付くと、恋仲になったモリ―と共に一座を抜け、もっと上客を相手に商売しようと試みるが・・・ 妖しさ(怪しさ)満点の見世物興行。獣人(という触れ込みの人間)は「自分はこんなんじゃない」と訴える。「私にはここがお似合い」と言うモリ―。「君も僕もここには似合わない」と返すスタン。獣人の嘆きはスタンがずっと抱えてきた心の内の声でしょう。 本作を観て思ったのは、”因果応報”、”おのれをわきまえろ”、”人の忠告を聞け”です。 人は一度境界線を越えると歯止めが利かなくなって、戻れなくなるのでしょうか? いえ、引き返すチャンスは何度もありました。 でも、つまらない欲や意地やプライドが、立ち止まって考える事をさせませんでした。 本作は説教臭いわけではなく、ダークなサスペンスです。面白いと言えます。監督の好みであろう不気味な映像美は細部まで作り込まれています。 ただ、私にはちょっと気持ちが悪い映画でした。 私は、例えば金魚や犬を、生存にはあまり向かない形態の新種を作ってまで愛でる、という感覚が理解できません。本作にそういうものを感じました。(それ自体は公に認められていて、悪い事ではないですが) あと、一座には白人しか居なかったようなのは違和感でした。「グレイテストショーマン」では黒人も一緒に働いていましたが。
脇を締めれば巧い人。
パンズラビリンスをピークにロボものやアカ賞作含め不振続きのギレトロ復調を祝す。 凝った意匠やヲタ偏愛に寄せず、 人の内面をこそ撮ろうとお話を小さく纏めて 久々に成功。 脇を締めれば巧い人なのだと思う。 小品の手応えゆえ長尺も心地好し。 私的年テン入り暫定。
人生なんてこんなものだ
「衣食足りて礼節を知る」という。しかし宿無しの着たきり雀には縁遠い話だ。 ブラッドリー・クーパー演じる主人公スタントン・カーライルの物語は、父親との凄絶な別れからはじまる。怪しい大道芸人集団に入り込んでからは、欲望と野望に引っ張られるがままに物語が転がる。 本作品の舞台は1930年代である。世界恐慌で人々が一気に貧しくなったが、人は何にでも慣れる。貧しさに慣れて、乏しさに耐える。運のいい者は仕事にありつき、当面の衣食住を得るが、いつまで続くかは分からない。 何かの才があれば、それを活かして生きていけるかもしれない。場合によっては金持ちになれるかもしれない。ここにいたら暫くは凌げるかもしれないが、ジリ貧だ。いずれ誰もが食えなくなる日が来るだろう。行くも地獄、残るも地獄。ならば行く方に賭けてみよう。男なら多分そう思う筈だ。 恋は唐突に訪れる。若い女の艶やかに光る黒い髪と赤い唇は男を魅了し、男が放つギラギラした欲望に、女は自尊心を満たされる。しかし問題はその先だ。男が本当の意味で自分を満たしてくれるのかどうか。裏切らない誠実さがあるかどうか。堕落してしまわない意志の強さがあるかどうか。女は不安に震えながら旅立つ。 男は塀の上に登る。塀の内側は恐ろしい闇だ。決して広くない塀の上を、男は歩いていく。自分は猫だ。軽やかに歩き、決して内側に落ちることはない。 女は塀の外から男を見ている。いつ落ちてしまうかもしれない不安にかられ、早く塀から降りてほしいと願う。しかし男は下りてこない。それどころか、塀の上を自分よりもずっと軽やかに歩く牝猫と出逢い、互いに匂いを嗅ぎ合う。牝猫は察知する。男は野良犬だ。決して猫ではない。不器用な足で塀の上を歩く。そして牝猫よりもずっと上手に歩いていると勘違いしている。馬鹿な野良犬だ。間違いなく内側に落ちるだろう。その日はそれほど遠くない。 本作品には人間の欲望があり、自信と不信と希望と絶望がある。恐怖があり、酒への逃避がある。肉親との確執があり、憎悪と怒りがある。そして物語となる。本作品には人生が詰まっているのだ。150分という長時間の映画だが、波乱万丈のストーリーと無駄のない演出のおかげで飽きることがなかった。獣人の伏線で誰もが結末を予想できたと思う。いいラストシーンである。人生なんてこんなものだ。
めざめのカーニバル
せっかく春めく季節となってきたのに、雪の降るシーンが多くて寒くなってしまいました。150分もあると、結構トイレが近くなって困っちゃいます。そんな時欲しくなるのが膝掛け!もちろん毛糸のブランケット。毛布にくるまってる場面もありましたね。 見世物小屋というと、江戸川乱歩の作品や『エレファントマン』などを思い出してしまいますが、ホルマリン漬けの胎児とかの標本はエグすぎ。それを管理しているウィレム・デフォーも不気味さ満開だし、ロン・パールマンだって怖すぎ。どうせなら頭に大根の輪切りを乗っけておけばいいのに・・・などと『ヘルボーイ』をついつい思い出してしまいます。 いや、カーニバルってのは楽しいもんだよ!そんなに暗くしてどうする。と、頭の中では榊原郁恵の歌がぐるぐる回ってきてしまいました。踊りたいの夜明けまで、星空のもとでふたり♪まわれまわれ、メリーゴーランド。好きな曲「スターダスト」も吹っ飛んでしまうくらい頭の中は郁恵ちゃんとなりました。 そんなこんなで後半は電気人間モリーと共に独立したスタン。ショーの客だったリリス・リッター博士がイチャモンつけてきます。バッグの中身当ててみなさいよ・・・これはなぜだか読めてしまった。特別なモノですもんね。まぁ、オチも終盤になって読めましたけど。 気に入ったのは読心術とか占い師とか霊媒師とかってありきたりで誰でも当てはまることを言う手口だったこと。俺の知り合いにもいる!ちょっと違うけど、必ず相手の親のことを切り出す奴。今の時代ならメンタリストって感じ? 「酒は絶対に飲まない」と言ったのなら、やっぱり飲んじゃだめ。想像するに、スタンは大酒飲みの父親から虐待を受けていたのだろう。そして介護疲れ・・・なんだか現代においても通用しそうなテーマも隠されていたような。さすがに見世物小屋はないけどね・・・
前半と後半のテイストが違うので注意
今年85本目(合計358本目/今月(2022年3月度)27本目)。 コロナ問題は日本では一応全面解除されましたが、それでも長い映画です。 序盤はある移動(?)サーカス団(というか、倫理的にどうか…と思える、後述)、後半はうってかわって全然違う話になります。 これも結構びっくりしたのですが、元小説があるようで、それがある以上、あることないこと書けないので仕方がないのかな…という状況です。 やはり他の方が書かれている通り、前半後半でテイストが大きく違うので、そこをどう取るか、だと思います。一貫性がないと思う人もいるでしょうし、映画代1枚で2つのテイストを観ることができたと思う方もいらっしゃるからです。 なお趣旨的に誰が犯人だの、どういうトリックがどうこうだのということを書き始めると一気にネタバレであり、そこはカットします。 --------------------------------------- (減点0.2) 元小説があるのは確かだし、過剰な「言葉狩り」は私も賛同はできませんが、「見世物小屋」といった表現、さらに「小児麻痺」「低身長症」といった語まで出るのは、うーんどうなのか…とは思えます(日本では人権意識の高まりもあって、およそ観ることはありません)。 かつ、これについて説明も注意書きもないので…。 (減点0.1) 途中でタロット占いが話題になりますが、いわゆる「ハングマン」(吊られ人)に書いてあるタロットには le perdu と書いてあります。しかも字幕なしの状況。 ここはフランス語で perdre (~を失う/敗れる)という動詞の過去分詞で、定冠詞(le/la)とあわせて「敗者」を意味する語です。 ここも字幕がないのでわかりにくいかな…とは思います(仏検3級くらいあればわかりますが、英語では推測はできません。語源が違うから)。 ---------------------------------------
シェイプオヴウォーターはいい映画だったけど、この映画は好きではない...
シェイプオヴウォーターはいい映画だったけど、この映画は好きではない。世界があまりに貧しい。見ていて全く幸福もカタルシスもやってこない。妻だけが救いか。俳優だけ見たくて見た。主演の人も力はあるけど、もともと好きな人ではない。この世界にピッタリの俳優だ。 とはいえ、シェイプオヴウォーターから類推するに、ラストの人獣については、監督はそこにむしろ同一化しているというか、単なる敗北と描いてないふしもある。読心術とは、ペテンのように見えて、真実に近づくテクニックだし、それは、カウンセリングもそうである。最も不幸なのはカウンセラーで、それに比べれば、逃げ続けていても彼の方がピュアなくらい。 赤ん坊の造形に監督のエネルギーが注ぎ込まれているのがわかる。父親に対する底しれぬ憎しみも本来的には回収されていない。まだ次の映画がいるのだろう。
観客の9割はオチに早い段階で気付いているのだから、もう少し短めで…
内容の割に、長いでしょう。 オチが透け透けだから、「もぉ、みんな気付いているから、早く〜〜〜!」と思ってしまった。 ディレクターズ・カット版でみたい方だけに見せるバージョンとして、これはこれで置いといて。 一般向けには90分くらいの短いバージョンでちょうど良いのでは。 退屈もせずに見れたけど、もう一度見たいとは思わないかな。
道を誤った男の最期は悲しい
多くを望み過ぎた男の転落人生のお話 最初は獣人の秘密! みたいな話を期待していたのですが全然違った(笑) 話の筋からカーニバル一座に拾われた男の立身出世話ではないと思ってはいたが… いろんな罪を犯しながらも素敵な女性と出会えたんだからそれで良しとするべきであった ・誠実であれ ・他人の忠告は聞け ・身の程をわきまえろ これを強く感じました 大人のイソップ童話みたいな感じかなぁ 人物としては ウィレムデフォー(座長?)はやっぱり怪しい魅力あるなと思いました。ちょっとしか出てこないけど存在感が凄い😃 2時間半はちょっと長いな…カーニバルの話長過ぎねぇ?と思ったが振り返ると全部必要なエピソードだった 長く感じたけどうまく纏まっていた方じゃないでしょうか 関係ない一言 小学生の頃お祭りに『ネッシーがくる』みたいなのがあったので見にいったんだけど『昨日までなんだ。ごめんね』と残念な思い出がある。 たぶん泳ぐトカゲとかだったんだろうけど見世物的なのって非日常感があっていいなぁって思います
危ないサーカス一座と緊張の張り詰めっぱなしの150分
第一次世界大戦~第二次世界大戦の頃のアメリカのドさ回りのサーカス一座の中で繰り広げられる主人公のブラッドリー・クーパーと怪しい男たち。ヤクザな稼業の一味の中に入り込んでしまった彼は仕事をもらい徐々に注目を浴びる存在となっていく。 しかしそこを抜け出して、ギリギリのところで読心術を使った危ない仕事で成功を収めることになるが、予想もつかない展開に発展していく。 ギジェルモ・デル・トロ独特のドロドロとした空気感と不気味な音楽。ずっと緊張して見ていた。時代設定や画面の色合いが、一層先の見えない恐ろしさを醸し出している。 後半、相反する二人の女性とのやり取りがとてもスリリング。そして、主人公とその恋人、そしてカウンセラーと患者たちはどうなっていくのか。対面で交わす言葉と振舞とその心理描写にハラハラしてしまう。 結末は見てのお楽しみであるが、とても驚いた。 家族で一緒に楽しむ映画とは言えないが、映画好きの人には是非見てほしいギジェルモ・デル・トロワールドの世界である。
明日は我が身の典型
全体的に暗い情景が続き内容も重いため気が滅入ってきます。マン・オア・ビースト→獣人に移行していきますが前半の見せ物小屋🛖の導入がラストのエピソードに深く深く関わってきます。キーワードはビーストといったところでしょうか? アカデミー作品賞としては疑問? 33
ギレルモワールドではあるけれど…
映像世界はいつものように魅力満載。ただお話がこの内容にしては長過ぎではないかと…。詐欺男の成り上がりと破滅の一代記。役者が癖アリな方ばかりでグイグイ魅せられるけど前半後半二部作的な展開でちょっと長かったな。面白かったけどね。
人間の本質を突いている
映像が綺麗。役者も抑えた演技で良かった。 人間の本質、罪・後悔・欲望・不安・喜・堕を感じさせられた。 占いや宗教を信じる心理が分かる。 ある意味、有意義なことかもしれないと思った。一線は超えてはいけないが。
起業して伸ばしていく時、
時には一線を越えなければ、伸びていけない時もある その一線が何かという事なのだが。 人としてやってはいけないことはダメなんだと、思いながら見てた。 ハッピーエンドではないが、観て良かった。 あの時代感、好き。画面良かった。 主人公男優大好き。一緒にやる、赤いドレスの女性も好き。ケイトは昔から好き ギレルモ・デル・トロ監督、グロあるけど、これからも観たい。 映画は監督次第ですね
好みが分かれるかも
ケイトブランシェットが好きだし、映像が面白そうだと思ったのですが、雰囲気が一本調子で残念ながらあまり惹き込まれませんでした。その割に長いし。 ケイト様の妖しい美しさと迫力は健在でしたよ!
最高
最高の作品。 「シェイプ・オブ・ウォーター」ほど面白い映画はそう出てこないと思っていたが、またもや痺れる映画を見ることができた。 時に目を覆いたくなるような場面もあるが終始画面から目を離すことが出来ないスピード感。それほど引き付け、緊張感を強いる場面の数々。 なんと言ってもブラッドリー・クーパーとケイト・ブランシェットのカッコ良さ!もう最高です!! もしも当方にアカデミー会員の資格があったなら、作品賞のオスカーには本作品に一票。
ギレルモ・デル・トロ監督の傑作!
TOHOシネマズ日比谷にて鑑賞。 「さすが、ギレルモ・デル・トロ監督!」と言わざるを得ない素晴らしい映画だった。 1930年代~40年代のアメリカの雰囲気を醸し出す美術・衣装、特に「見世物小屋の造形」は芸術作品に見えるオリジナリティ。 また、この映画の原作は、エドマンド・グールディング監督作『悪魔の往く町』(タイロン・パワー、コリーン・グレイ等出演)で一度映画化されているが、あの作品は当時のヘイズコードなどの制約によって、かなり限定された表現になっていた。 あの電気女シーンは有名で、ブロードウェイ版DVDのジャケ写にもなっている。 本作では、表現上の制約を取っ払って、ギレルモ・デル・トロ監督がノワールの雰囲気を漂わせながら、見世物小屋からショービズ世界へ進出する男スタン(ブラッドリー・クーパー)が連れていくモリー(ルーニー・マーラ)と順調にいきそうな姿を見せる。しかし、心理学者リリス(ケイト・ブランシェット)と出会ったことが運命を変えていく……といった物語をじっくりと見せてくれる。 夢・狂気・殺人・騙し合い・独特な造形などなど、あらゆる物をごった煮にしたように見える映画だが、筋の通った物語が素晴らしい。 しかし、デル・トロ監督は、大傑作『パンズ・ラビリンス』でもそうだったが、本作でも「目玉を使った美術」が好きだなぁ…と思う。 また、その物語を支える役者たち……ブラッドリー・クーパー、ルーニー・マーラ、ケイト・ブランシェット、ウィレム・デフォー、トニ・コレットなどの演技も良かった。 特に、ブラッドリー・クーパーはデル・トロ監督の目指した「ダーク感」を見事に体現していたと思う。 またもう1本、「何度でも観たい映画」が生まれてしまった。 滅多に買わないパンフレット(定価840円)も購入。(今年初) このパンフレットとキネマ旬報最新号(2022年4月上旬号)の特集記事を読んで、しばらく、この映画世界に浸りたい……そんな感覚になる傑作。 <映倫No.49037>
鬱映画
タイトルの悪夢小路(ナイトメアアリー)からして暗い映画だと予想できるので、ショックを和らげるために原作読んで鑑賞。それでもやはり暗い気持ちになりました。鬱映画です。 暗い人生を予想できるキャラクターが多く、私は自分事のように思えて始終しんどかったです。見世物がテーマのため、だんだん他人を見ているのか自分を見ているのかわからなくなり、余計に深みにはまります。デル・トロ監督は全力で観客を鬱にさせようとしにきているなと思いました。 豪華なキャストについては、みんなハマり役です。主人公のブラッドリー・クーパーは目が綺麗なせいかイノセントっぽさが出ていて、どんなシーンでも不思議と子供みたいでした。デル・トロ監督らしくお手製っぽいクリーチャー(?)も出てきて謎に安心しました。 エンドロールが終わっても鬱感が抜けない絶望的な映画です。他では味わえない2時間半でした。個人的には傑作だと思います。でももう当分観なくていいかな…。
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