「一時期でも"この世のすべて"が手に入るなんて絶対に思わないほうがいい危険なゲーム = (雰囲気/トーン込みで)大人の"見世物"」ナイトメア・アリー とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)
一時期でも"この世のすべて"が手に入るなんて絶対に思わないほうがいい危険なゲーム = (雰囲気/トーン込みで)大人の"見世物"
ギアがかかるのに時間がかかる。そして、お酒飲みたくなくなってチョコ食べたくなる。本格的に面白く盛り上がってきたときには少し"遅いよ"って言いたくもなったけど、それはそれで、いざ見終わってみると実尺より短く感じたかも。
と、デル・トロ監督の素晴らしいフィルモグラフィーにおいてベストな作品ではないかもしれないけど、胡散臭いインチキ商売で人を踏み台・食い物にしてきたツケがやがて巡り巡って回ってくる教訓に満ちたダークな内容で、例えば『クリムゾン・ピーク』よろしくゴシックホラー・ミーツ・ノワール的な魅惑的雰囲気を堪能できる。本編始まってからなかなか一言目を発さない(!)謎めいた男が経験する立身出世からの盛者必衰、人間の欲深さの成れの果て。オリジナル未見ながら、まるで"当時の作品をカラーでしたらこんな感じ"といった趣がどこかあった。それを助けているのは、メイクや衣装の力もあって普段より白黒モノクロ映えしそうな往年のスター顔 & ファム・ファタールな役回りケイト・ブランシェットなど役者陣あってこそ。
あと、いちいち力の入った人体破壊描写(技術の進歩!)、暴力描写の生生しさなど随所のグロ味にもデル・トロっぽさがあって、オリジナルより本編尺が長く伸びているのは偏に"そういう部分に力を入れるためか?"などと勘繰ってしまいそうでもある。そういう面からも何処かB級映画的内容をA級オールスターキャストで描く醍醐味。しかも使い方がなかなか豪華で、製作も兼ねる主演ブラッドリー・クーパー等ごく一部の人以外はさながらロードムービー的に各々のパートだけで個性(と主人公への影響)を残していく。悪夢の小路に迷い込む…。とは言ってもやはり『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パンズ・ラビリンス』のほうがやはり好きな気持ちもある。
勝手に関連作『時計じかけのオレンジ』