「仏作って魂入れず」機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 ますぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
仏作って魂入れず
ククルス・ドアンの島
原作TV版「機動戦士ガンダム」の
第15話で放映されたストーリー
ドッキング訓練中に救難信号を
受け取ったホワイトベースが
アムロを差し向けた先で
出会ったククルス・ドアンという
脱走兵とそれを慕う子供たち
との間には隠された秘密が・・
予備的に作られたシナリオから
挟み込まれた前後のない単話で
劇場版ではカットされてしまい
奇妙な作画と展開でカルトな
人気を誇った回
ドアンが面倒を見ている
子供達の親を殺したのは自分で
これ以上誰も殺させやしない
と独白しながら侵入者に立ち向かう
シーンが良かったのです
ガンダムとアムロは脇役に
回ってしまうという
変わった回でした
で今回の新作はどうだったか
かねてより展開している
キャラクターデザインを担当
していた安彦良和氏が
雑誌ガンダムAで漫画連載
していた「ORIGIN」の
世界観をベースに構成しており
そのためTV版とは世界観が多少
異なっています
自分はそのORIGIN
からして
「人間には凡才しかいない
すごいって言ってる奴は自惚れ」
みたいなニュータイプ論を
小馬鹿にしたスタンスが嫌いでした
そんな奴らにMSなんか
扱えるかっての
でどうだったかというと
正直安彦良和氏がデザイン以外
にも関わった作品が個人的に
苦手なのもあり過度な期待はして
いなかったのですが
やはりそうでした
ここまで元作の良いところを
無くしてしまえるのかと
驚いたほど
安彦良和氏はキャラクターを
扱うときに非常に人間臭く
ありがちないくつもの考えを
葛藤するような演出を好みますが
これが根本的な問題点で
それによって話のキーになる
キャラクターが薄くなって
なんのために出てきたのか
よくわかんないキャラで
あふれかえってしまうのです
苦笑い・言葉に詰まる・
汗をかく・叫ぶ・泣く
でそこのシーンがやたら長い
それでいて重要度が低い
やがて話の焦点がよく
わかんなくなるのです
昔っからそんな感じで
クラッシャージョウも
ビジュアルは素晴らしいが
話はさっぱり覚えてません
簡単に言うと
「面白くない」
今作は導入部からえらく改変
され救難信号でなく
上官命令で島を調べてこい
と言われアムロらを差し向けて
ドアンと遭遇しアムロとガンダムが
行方不明にといった形に変えられて
いますがWBクルーが特に役に立つ
部分は全くありません
オリジン設定からか原作と違い
スレッガーらが出てきたり
しますがほんと呆れるくらい
活躍しません
専用モビルスーツのデザインとか
あってどうせプラモも出す
んでしょうがホントにこんなんで
いいのかと思うほど
買う客をバカにしているのかと
思ってしまうほど
またドアンの子供達は3倍くらいに
増えてギャーギャー叫びますが
特にそこに意味はなく
ドアンの島もただの荒れ地の
割に子供たちは灯台の小屋で
その大所帯にもかかわらず
えらく豪勢な食事を食べ
これから耕す畑とヤギ一匹と
リアリティ皆無
今作でドアンが島にいる理由が
明確に与えられるのですが
それも大した説明もなく
わかるな?みたいに展開
するんですがよくわかりません
それらによってドアンが
子供たちを守る理由を独白
するシーンとか一切ありません
あのね
別にわかりやすく全部
セリフで説明しろとは思いません
なんとなくはわかるのです
そんなに複雑じゃないから
そんなのを明確なセリフなしで
キャラの「ふふっ」「まあ」
「んんっ」といった感嘆
だけで実写の演技的に
やろうという姿勢が
気取っててほんと嫌いなのです
加えてこの映画は
もうあらかじめ原作知っている事
すら要求しているのかってくらい
説明がありません
この映画観てからTV版を
見返しましたが20分でしっかり
言いたいこと収まってるあたり
さすがだなーと思って
しまいました
ちゃんとメカニック的な部分は
凝っているのです
宇宙用の高機動型ザクから転用された
大気圏内型ザクカスタムなんて
プラモ改造でやりそうなネタ…
いやなんでもない
頑張ってやってますし
アホみたいに広かった
ホワイトベースのブリッジも
わかるサイズに収まってたり
でもそういうとこは
そっちのデザイナーさんの頑張り
ですからね
サザンクロス隊のあっけなさは
ポカーンですよ
あれなら声だけでいい
キャラデザいらない
最後に頭にきたとこは
ガンダムがドアンと戦ってる敵を
倒しちゃうとこ
そうじゃねえだろと
お前今回は脇役だろうがと
もう全然わかってないんですよね
そもそも
ドアンのザクがステゴロで
戦ってないのも意味不明
リメイクするならそこにもっと
意味を持たせるべきだろう思いますが
ただのヒートホークマニア
みたいになってます
氏は本当に
1stの現場にいたのかなって
首をかしげてしまう作品でした
あれ出せこれ出せとバンダイ様の
要請があれこれ入ったか知りませんが
作家性はまるで感じられない
凡作でした