劇場公開日 2021年12月10日

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GUNDA グンダ : 特集

2022年4月1日更新

登場するのは動物だけ!
人間、セリフなしでも引き込まれてしまう驚愕ドキュメント

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俳優ホアキン・フェニックスが製作総指揮に名を連ね、農場に暮らす動物たちの世界を、斬新な手法で叙情豊かに映したネイチャードキュメンタリー「GUNDA グンダ」が4月1日からシネマ映画.comで先行独占配信される。

画面に映るのは、農場の動物のみ。研ぎ澄まされたモノクローム撮影と驚異的なカメラワーク、人工的な音楽及びナレーションを排した迫力の立体音響で、観る者を否応なくその映像世界に引き込む異色作だ。このほど、映画.com編集部が見どころを語った。

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GUNDA グンダ(ビクトル・コサコフスキー監督/2020年製作/93分/アメリカ・ノルウェー合作)

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<あらすじ>

とある農場で暮らす母ブタ「GUNDA」。生まれたばかりの子ブタたちが、必死に立ち上がり乳を求める。一本脚で力強く地面を踏みしめるニワトリや、大地を駆け抜けるウシの群れ……動物たちの本質に宿る美しさや躍動感あふれる生命の鼓動を映し出す。


座談会参加メンバー

駒井尚文(映画.com編集長)、和田隆、荒木理絵、今田カミーユ

■「映画の原初の力」を再発見

和田 久々に映画の原初の力を思い起させるようなドキュメンタリーだと思いました。皆さんは、どのように感じられましたか?

駒井編集長 まさに、「映画の原初の力」を再発見しましたね。動物だけで1時間半。人間なし、音楽もなし、セリフもなし。なのにすごい迫力。

荒木 モノクロ映画の意義を思い知りました。情報が少ないからこそ表現できるものだ!すごい!って感動。

今田 皆さんと同じく、私も映像で動物たちの生態に没入できました。言葉はなくとも、彼らが言いたそうなこともわかるというか。

駒井編集長 「GUNDA」ってどういう意味なんでしょうか?

荒木 映画のポスターにもなっている母豚ちゃんが「GUNDA」って名前なんですよね。言語的な意味あるのでしょうか?

駒井編集長 何か名詞としての意味があるかもですね。後で調べましょう。

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■動物がまったく意識しない、とにかくカメラがすごい

駒井編集長 とにかくカメラがすごいですね。据え置き、手持ち、移動撮影もある。で、動物がカメラをまったく意識していない。どうやって撮ったか聞いてみたい。これは、撮影監督案件ですよ。

今田 動物たちが全然逃げないのがすごいですよね。ラストシーンにも驚きました。

駒井編集長 特にすごいのは、鶏のシークエンス。豚に比べて敏感なはず。鳥は。どんな機材で撮ったのか、すごい興味ある。

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和田 ビクトル・コサコフスキー監督自身が撮影も共同で手がけていますね。

荒木 本当に、無理やり作ったような画じゃないんですよね、ものすごく滑らかでメッセージ性もある。顔のアップの画面とかありますもんね。

駒井編集長 もう、ずーっとカメラ置きっぱなしで、動物側が、生活風景の一部として認識するようになってたのかなあ。今回さすがに、豚目線カメラは登場しませんでしたが、ちょっと期待してしまった。

今田 この映画ではありませんが、あるカメラマンに、最近は6Kで撮影して4Kにトリミングするやり方があるというような話を聞いたことあります。

駒井編集長 リドリー・スコットみたいですね。広角で引いて撮って、編集の時に細部を切り取るやり方。

和田 どこのメーカーのどの種類のカメラで撮影したか知りたいですね! 監督は編集も手掛けています。

■絶妙の音響効果 目だけでなく、耳でも楽しめる

駒井編集長 あと、音効さん案件でもある。豚の鳴き声、ハエの群がる音、小鳥のさえずりとか、絶妙の音響効果。

和田 動物の鳴き声や風などの自然の音だけですが、目で見るだけでなく、耳でも楽しめるASMR的な効果があると思いました。

今田 私は劇場では見られなかったので、自宅の壁などに映して大音量で見てみたいです。

駒井編集長 音楽がないって気づいたの、だいぶ経ってからでしたもん。

荒木 すごいですよね! 監督インタビューで「牛が300種類のモーを使い分けていることが分かった」って言ってて驚きました。しかも、文脈と違う意味の「モー」を使いたくなかったから気を付けたって言ってて、すごいこだわり方だなと。

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和田 それすごいですねw

駒井編集長 監督インタビュー、読みふけってしまった。資金調達はどうやって?って思いました。動物だけが登場、人間ナシ、音楽ナシって、誰がお金出すのって? 映画化までに30年ってすごい執念ですよね。だけどすごい映画に仕上がって本当に良かった。

「GUNDA」監督が明かす撮影の裏側「母ブタ=私たちの“メリル・ストリープ”」「牛の鳴き声は300種類」

■ホアキン・フェニックスがエグゼクティブ・プロデューサー

和田 ホアキン・フェニックスがエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねています。アレクサンドル・ソクーロフ、ポール・トーマス・アンダーソンら世界の映画作家たちからも絶賛されていますね。

今田 ホアキン・フェニックスはビーガンで動物愛護活動もやってますよね。私は都会で暮らしていて、トレーに入った豚肉しか見たことがなかったので、食用の家畜として生きる彼らの生態をしっかり見られて勉強になりました。子豚たちの成長の様子や母豚の乳房がああいった形状だとも知りませんでしたし。

駒井編集長 「ビッグ・リトル・ファーム」の豚にも驚いたけど、さらに多産な豚が描かれてましたね。

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和田 本当ですね。エンディングは見ていて切なくもなりましたが、いったいブタの鳴き声は何種類あったんでしょうかね……。

今田 自分はベジタリアンではありませんが、こういったドキュメンタリーのおかげで動物の命をいただくことの重さやありがたさを考えるようになりました。

駒井編集長 まったく同感です。動物ドキュメンタリーたくさん見ているうちに、ビーガンになる人の気持ちも分かるようになってきた。

荒木 そうですね、あんなに豊かな動物たちのドラマを見せられると、気持ちわかりますね。

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■ドラマのようなものすごいエンディングが待ち受ける

駒井編集長 シークエンスごとの映像は力強くて素晴らしいんだけど、果たしてどうやって終わらせんだ?って思ったら、すごいエンディングが待ってましたね。ドラマでしたね。

荒木 本当にドラマチックなエンディングです。感動的な音楽もセリフもないのに! 見ているときは完全に動物の世界に浸ってましたから、あれにはだいぶびっくりしました……。動物愛護の観点からも素晴らしい作品ですね。

駒井編集長 見る人すべての「母性」に訴えるエンディングだと思いました。

今田 ラストはやはり動物にも心があるのだな…と考えましたし、鳴き声の違いや、子豚の皮膚の模様がひとつひとつ違ったり、鶏の精巧な脚など、動物にも様々な個性があるんですよね。こういった点が非常に興味深かったです。

和田 そうですね。そこまで見えるのは、フィルムでは難しくて、デジタル撮影であれば、その効果、利点でしょうね。編集時でデジタルズームもできますし。

駒井編集長 映像は濃密ですが、追うべきセリフや字幕が一切ないので、食生活のこととか、環境保護のこととか、他の映画のこととか、色んなことを考えさせられますよね。とても珍しい鑑賞体験でした。

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