安魂のレビュー・感想・評価
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残念な男達と自分を持つ女達
簡単に言えば中国の毒親の話であり、今は解除された一人っ子政策の末路の話であり、ふがいない男たちと、現実的で地に足がついており人と関わることができる女たちの話だ。この映画の中で唯一他人と関わって生きてきた男子は、怪し気なイタコ商売に加担している、亡くなった息子と瓜二つの男だけ。この俳優さんは真面目で良い人だがふがいない(まさに父親に育てられた通りに、、、)亡くなった息子から、イタコ詐欺師に変わったときの変化がとても素敵である。
まともな人格を持つ男はこのイタコ詐欺師だけであった。
母は強くたくましく本質を理解し目的意識高く息子を守る生を生きてきた。日本なら金持ちの専業主婦さんなんだろうが、共働きが当たり前の中国でベストセラー作家?らしき夫の創作と一人息子の育成のため、「あくせく働いて」その素振りも見せない美しさとすばらしい料理など、出来る人だ。亡くなった息子と同じ顔の人を追いかけまわしさぎだと思っても諦められないインテリな父、うわっつらのインテリだ、宗教の理解もモーツァルトも全て表面的。この方の役作りわざとそうしたのかなと思うがどう見てもインテリではない労働者階級の人に見えてしまうのだ。息子の顔と同じ男、これも表層、ガワのこと。ガワだけの、つまり父の実力も才能も然り子育ても表面的な成功だけを追い求め本質を教えなかった。また、中国では、ガワつまり顔によるデータ収集がされている訳なので、深読みすれば習近平率いる男社会の功罪をそのあたりでチクリとしているのかもしれない。女は現実を見て本質を見て自分の物差しで言葉を発し、人と付き合い、行動し、人と繋がり、表層だけではきりすてない愛を持っている。
開封市の発展した雄姿、チャイナ風ピカピカキラキラなネオン、詐欺師が使う裏通りの雰囲気は悪くないがネオンきらめくメインストリート、高級オフィス、病院にくらべればさびれて汚い。詐欺師くんの、生い立ちもしかり。中国の桁違いな格差、顔で認証される社会システム。面白い作品、風景の写し込み美しく、今の中国の地方都市の風情を知るにもよい。やや話が単純シンプルであるところが残念。そして、中国でも、男子が残念。
父さんが好きなのは心の中の僕なんだ。
物語の舞台は開封市。随分歴史がありそうなこの都市を詳しく知らず、帰ってから調べたのだが、中国の八大古都に数えられるほどの古い都市で、夏や魏の首都であった歴史もあり、かつて(11~12世紀)世界最大級の規模を誇っていたほどの都市だった。そうと知れば、父が作家として大成すればそりゃ威厳を持つほどの世間体なのだろうと理解できた。日本にイメージすれば、奈良に住む有名作家(志賀直哉とかも住んでいたし)といったところか。
ところが、その家族にとって、父の名誉は誇りではあったのに、知らず知らず息子の心の枷となってしまっていた。それが、息子の死によって明らかにされ、父の後悔の十字架となってしまう。厳格であっても幸せに見えた家族に訪れた不幸。父の憔悴いかばかりか。母がわりと立ち直りが早かったのは、あまりの父の狼狽えぶりを目にして冷静でいられたからだろう。たしかに父の"あること"へのこだわりは異常に見えた。だけどそれが、父にとってのケジメのつけ方だったのだろうな。
人間の魂の重さは、わずか21gだという。僕はその大きさを想像してしまった。金と同じくらいの比重なら砂利粒ほどもないだろうが、羽毛のような物体ならば、随分と大きいんだろうな、と。それならば、ふわふわっと空に飛んでいけるんだろうな、と。そういう想像自体も、"あること"に執着した父と同じで、他人から見れば滑稽なことなのかも知れない。でも、滑稽にみえることでさえも、当人にとって真剣なことっていくつもある。それは、惨めにもみえるが、健気にもみえる。その姿が"彼"の心を動かしたのだろう。
めちゃ良かった
こんなに深く感動した映画は久しぶりだ。
とても知性的で地位も名誉もある父親が「いいんだ、そんなことどうでもいいんだ」と詐欺師に息子の面影を求める姿に泣ける。
でも感動するのはそこだけにとどまらない。
観たあとは誰かときっと語り合いたくなると思う。
お父さん役の演技も見どころ。
吉祥雲
何でも自分一人で決めて妻や息子に価値観を押し付ける大作家様が息子を亡くし、降霊師にハマって行く話。
父さんが好きなのは心の中の息子と言われた主人公が自分を振り返り後悔し、というストーリーではあるけれど、何ですかね…結局似ている男に会いたいだけ、そして心のどこかで信じてる?恋人かよ!という様なメロドラマ感。
寧ろ女性陣の方が現実的でノッてこないというね。
そして何より、実は何一つ成長して無いですよね。
話としてはつまらなくはないけれど、そう言うところに夢をみるタイプじゃ無い自分にはハマらなかった。
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